- 作成日 : 2024年5月24日
株式投資で確定申告は必要?損をした場合は節税できる?
この記事では、株式投資における確定申告の必要性、手続きの方法、必要な書類などについて詳しく解説します。確定申告が必要となるケースと不要なケースを明確にし、株で損失を出した際の税金の扱い、確定申告を怠った場合のリスクについても触れています。
目次
株式投資で確定申告は必要?
株式投資を行い、収益を得た場合、その収益には税金が課されます。しかし、全ての投資家が確定申告を必要とするわけではありません。ここでは、株式投資における「確定申告が必要なケース」「確定申告が不要なケース」について解説していきます。
確定申告が必要なケース
- 特定口座(源泉徴収あり)を利用しておらず、年間の配当収入と売却益の合計が20万円を超える場合(他の要件で確定申告が必要とはならない会社員を想定)
日本における株式投資の利益(配当と売却益)が年間20万円を超えた場合、確定申告が必要となります。 - 損益通算や繰越控除を利用する場合
株式投資で発生した損失は、他の証券口座の利益と相殺することが可能です(損益通算)。また、その年に譲渡損失が出た場合、最大3年間その損失を繰越、後年の利益から差し引くことができます(繰越控除)。これらの控除を利用するには確定申告が必須です。
確定申告が不要なケース
- 年間の配当収入と売却益が20万円以下の場合
株式投資からの年間総収益(配当金と売却益を合計した額)が20万円以下である場合、その収益に対する確定申告は必要ありません。ただし、他の要件で確定申告が必要になる場合、株式投資からの収益が20万円を超えていなくても確定申告書にその利益を記載する必要があります。 - 源泉徴収ありの特定口座を利用している場合
多くの証券会社では、投資家の配当収入に対して自動的に源泉徴収を行い、適切な税額を国に納付しています。この特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、投資家は個別に確定申告を行う必要がありません。
株式投資にかかる税金
株式投資から得られる利益は、原則として課税対象です。日本における株式投資にかかる税金には、「所得税」と「住民税」の二種類があります。特に、株式の売買によって得られた利益(譲渡所得)と配当所得には、それぞれ異なる税率が適用されます。
譲渡所得にかかる税金
株式の売却から生じる利益に対しては「譲渡所得」として所得税と住民税が課税されます。
税率は20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)
配当所得にかかる税金
株式投資による配当所得に対しても、分離課税を選択する場合は20.315%の税率が適用されます。こちらも特定口座(源泉徴収あり)を使用していれば、手続きなしで税金が徴収されます。源泉徴収なしの場合や一般口座を利用している場合は、確定申告を通じて税金が計算されます。
収入の種類 | 税率 | 適用条件 |
---|---|---|
譲渡所得 | 20.315% | 特定口座(源泉徴収あり/なし)、一般口座 |
配当所得(分離課税の場合) | 20.315% | 特定口座(源泉徴収あり)、一般口座(確定申告が必要) |
税制の詳細は年によって変更される可能性がありますので、適切な申告と納税を行うには、最新の税制改正の情報を確認することが重要です。株式投資にかかる税金に関する理解を深めることで、より効果的な資産運用を行うことが可能となります。
株で損をした場合は確定申告で節税できる?
株で損失を出した場合、確定申告を行うことで税金が節税される可能性があります。特に、譲渡損失が発生した場合や、他の証券口座で得た譲渡利益との損益通算を行いたい場合、または譲渡損失の繰越控除を利用して将来の税金を節約したい場合には、確定申告が必要になります。
譲渡損失の損益通算
株式投資において譲渡損失が出た場合、その年に得た他の株式投資の譲渡利益とその譲渡損失を相殺することができます。これにより課税対象となる所得が減少し、支払う税金が減ることが期待できます。この処理を行うには確定申告が必須です。
譲渡損失の繰越控除の利用
株式投資での譲渡損失は、発生した年だけでなく、翌年以降の3年間にわたって、株式投資からの譲渡利益から控除することができます。この繰越控除を利用することで、将来的に税金の節税が見込めます。確定申告を通して、繰越を行う必要があります。
株の確定申告をしないとバレる?
投資家の間では、「株の確定申告を行わなければ税務署にバレないのでは?」という認識が少なからずあります。しかし、この点に関しては大きな誤解があります。現実には、証券会社や銀行などの金融機関は、国税庁に対して顧客の投資収益に関する情報を報告しています。これは、税務署が個人投資家の税金逃れを防ぐ目的で行っているのです。
特に注意すべきは、源泉徴収されていない利益や、特定口座以外での取引による収益です。これらは自分で確定申告をしなければ、適切に税金が納付されないことになります。その結果、税務調査の対象になる可能性が高まります。税務調査によって無申告が発覚した場合、無少申告加算税や延滞税などの追徴課税がなされる危険性があります。
税務署が無申告をどのように発見するのか
税務署は、証券会社や銀行からの報告書類を基に、投資家の収益が確定申告で申告されている値と一致するかを確認します。もし、報告された収益と申告された収益に差異がある場合は、税務調査の対象になることがあります。税務署は、さまざまなデータベースや情報交換システムを用いて、投資収益に関する詳細な情報を把握しています。
確定申告を行うことのメリット
確定申告を行うことには、適切な納税をすることでやましい気持ちを持たなくて良いという安心感だけではなく、節税効果を享受できる可能性も含まれます。例えば、株で損をした場合、その損失を他の所得から差し引くことができるため、結果的に納税額が減少する可能性があります。また、さまざまな税制優遇措置を活用することもできます。確定申告を通じて、自身の税務状況を適切に管理することは、賢明な投資戦略の一環と言えるでしょう。
株式投資での確定申告の方法
株式投資による利益があった年には、翌年の3月15日までに確定申告を行う必要があります。
株式投資の確定申告の方法は、大きく分けて「確定申告書をダウンロードして記入する方法」と「e-Taxを利用する方法」があります。
確定申告書の記入には、事前に、株式売買による利益(譲渡所得)、受け取った配当金、株式取引にかかった経費や手数料などの情報が必要です。
確定申告書の作成
確定申告書をダウンロードして記入する方法
国税庁の「確定申告書等様式コーナー」から確定申告書(一般用)を選び、必要に応じて付表などもダウンロードします。
■確定申告書への記入
収入金額: 株式の売却代金総額と配当金を記載します。
所得の計算: 収入から必要経費を差し引いて、所得を計算します。
税額の計算: 計算した所得に対して、適用される税率を乗じて税額を計算します。
e-Taxを利用する方法
確定申告書等作成コーナーにアクセスします。e-Taxで申告するためには利用者識別番号が必要です。初めて利用する場合は、ウェブサイト上で取得手続きを行います。また、電子証明書を使用してログインする場合は、マイナンバーカードとカードリーダーを準備します。
メニューから「確定申告」を選択し、所得税の申告書作成に進みます。記載する基本情報(所得種類、金額、必要経費、控除等)は、e-Taxでも紙の確定申告書でも違いはありませんが、e-Taxを利用することで、所得税額などの計算が自動で行われ、計算ミスを防ぐことができます。
所得の計算
株式投資による所得を計算します。売却益や配当金など、株式投資に関連する全ての所得を合計し、必要に応じて損失の控除適用して所得を算出します。ここでは、具体的な計算方法や適用できる控除についても理解しておく必要があります。
項目 | 内容 |
---|---|
株式売却益 | 売却時の価格と購入時の価格の差額から売却手数料を差し引いたもの |
配当金 | 株式から受け取った配当の合計 |
必要経費 | 株式売買に伴う手数料や税金等 |
書類の提出
計算した所得と確定申告書をもとに、最寄りの税務署に書類を提出します。確定申告は窓口での提出のほか、郵送または電子申告(e-Tax)で行うことができます。電子申告を利用することで、確定申告書の作成や提出がより簡単になります。
申告書類の保管
確定申告の手続きが完了したら、提出した確定申告書や計算に用いた資料など、関連する全ての書類を保管しておくことが重要です。万が一、税務調査が行われた際に、これらの書類が求められることがありますので、7年間は保管するようにしましょう。
以上が株式投資での確定申告の基本的な方法です。確定申告は複雑に感じるかもしれませんが、手順に従って丁寧に進めれば誰でも完了させることができます。不明点がある場合は、税務署や税理士に相談することをお勧めします。
株式投資での確定申告の必要書類
株式投資での確定申告を行う際には、以下のような必要書類を準備する必要があります。これらの書類は、収入の計算、必要経費の把握、税額の正確な計算などに必要となります。
- 確定申告書
国税庁から提供されている確定申告書の用紙またはe-Taxでのオンライン申告用のフォームを用います。 - 取引報告書
証券会社から提供される年間の取引報告書。この報告書には、売買の詳細、取得コスト、売却価格、手数料など、株式取引に関する全ての情報が記載されています。 - 配当金計算書
配当金を受け取った際に証券会社から提供される証明書。配当金の額が記載されています。 - 源泉徴収票
雇用主から受け取る源泉徴収票。給与や天引きされた社会保険料、源泉徴収された所得税額の情報が必要です。 - 前年度の確定申告書(あれば)
譲渡損失の繰越控除を申告する場合、前年度の確定申告書が必要になることがあります。 - マイナンバーカードまたは通知カード
身分証明として、またe-Taxでの電子申告を行う場合には、マイナンバーカードが必要になります。
上記の書類を用意することで、確定申告の際に必要な情報を正確に、効率的に行うことができます。特に電子申告を利用する場合は、これらの書類のデジタルコピーを準備しておくと、入力作業がスムーズになります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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