- 作成日 : 2024年5月10日
遺族年金のガイド:いくらもらえる?計算方法から受給資格まで詳しく解説
本記事では、遺族年金の基本から受給資格、計算方法について解説します。どれだけの遺族年金を受け取れるか、どのように申請するのか、さらには受給中に知っておくべき情報をお伝えします。
目次
遺族年金とは
遺族年金は、亡くなった方が加入していた年金の保険に基づき、その遺族が受け取れる年金です。主に、亡くなった方が加入していた「国民年金」または「厚生年金」の加入状況などによって支給されます。この制度は、遺族の生活を経済的に支援し、社会的保障を提供するために設けられています。そして、遺族年金の支給を受けるためには、一定の条件を満たす必要があります。
遺族年金の種類
遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。それぞれの年金は支給対象者や計算方法が異なり、亡くなった方が加入していた「国民年金」または「厚生年金」の加入状況などによって、「いずれか」または「両方」の年金が支給されます。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者等の受給要件を満たした場合に、亡くなった方に生計を維持されていた「子どもがいる配偶者」または「子ども」を対象に支給されます。
支給の条件
遺族基礎年金を受け取るための条件は、主に以下の通りです。
- 国民年金の被保険者であったこと
- 老齢基礎年金の受給権者や受給資格を満たしていたこと
- 亡くなった前日時点で保険料の支払いが遅れていなかったこと など
遺族基礎年金は、亡くなった方の遺族にとって重要な経済的支援となります。しかし、具体的な支給条件は複雑であるため、詳細は最寄りの年金事務所にお問い合わせください。
※参考:日本年金機構(遺族基礎年金)
遺族厚生年金
遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者等の受給要件を満たした場合、亡くなった方に生計を維持されていた一定の遺族が受け取ることができる年金です。この年金は、遺族基礎年金とは異なり、亡くなった方が会社員や公務員といった厚生年金保険の被保険者が対象です。
支給の条件
遺族厚生年金を受け取るための条件は、主に以下の通りです。
- 厚生年金保険の被保険者であったこと
- 老齢厚生年金の受給権者や受給資格を満たしていたこと
- 亡くなった前日時点で保険料の支払いが遅れていなかったこと など
遺族厚生年金は、遺族基礎年金と同様、遺族の経済的基盤を支え、亡くなった方が築いてきた生活水準の保持を助ける制度です。そのため、受給資格がある場合は、正しい手続きを通じて受給権を確立することが大切です。
※参考:日本年金機構(遺族厚生年金)
遺族年金の受給資格
遺族基礎年金の受給資格
遺族基礎年金の受給資格は、被保険者が亡くなったときに、その遺族が以下の条件を満たす必要があります。まず、被保険者は死亡時に国民年金の加入者、またはすでに年金を受け取っている方(老齢基礎年金受給者を含む)などで、受給権者は、亡くなった方に生計を維持されていた「子どものいる配偶者」または「子ども」です。子どもは、18歳になった年度の3月31日まで(一定の障害がある場合は20歳未満)が要件です。
遺族厚生年金の受給資格
遺族厚生年金の受給資格は、厚生年金保険の被保険者や、老齢厚生年金の受給権を有していた場合に、その遺族が受給権を持ちます。受給権者は、遺族基礎年金と違い受給対象者の範囲が広く、優先順位が定められており、主に亡くなった被保険者の「子どものいる配偶者、子ども、子どものいない配偶者、父母、孫、祖父母」です。なお、遺族基礎年金を受給できる場合(子どものいる配偶者、または、子ども)は、併せて受給できます。
遺族年金がいくらもらえるか
遺族基礎年金の計算方法
遺族基礎年金の計算は、基本的に亡くなった被保険者が支払っていた保険料の総額や加入期間は考慮されず定額なのでシンプルに算出可能です。受給資格者がいる場合、固定された基本額に、子どもの数に応じた一定の加算があります。そのため、受給額は受給者の状況に応じて異なります。
具体的な計算式は、例えば、配偶者と18歳未満の子どもが1人のケースで「老齢基礎年金の満額(816,000円)+子ども1人分の加算(234,800円)」(2024年度)です。毎年度の政府の経済政策により金額が変動することがありますので、具体的な金額は年金事務所やホームページで確認しましょう。
遺族厚生年金の計算方法
遺族厚生年金の計算方法は、遺族基礎年金よりも若干複雑です。こちらは、定額ではなく、亡くなった被保険者の平均標準報酬月額と、加入期間に応じて計算され、おおよそ「老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3」となります。なお、遺族基礎年金と同様に「18歳未満の子ども」がいる場合には一定の加算があります。
受給額の例(配偶者+子ども1人)
年金の種類 | 条件 | 月額受給額の例 |
---|---|---|
遺族基礎年金 | 18歳未満の子ども1人 | 月額約87,000円 |
遺族厚生年金 | 被保険者の平均標準報酬月額が300,000円、加入期間が25年(300カ月)の場合 | 月額約127,000円(※遺族基礎年金含む) |
上記の表は、遺族年金の受給額の一例を示しています。遺族基礎年金は子どもの数に応じて加算されるため、子どもが多いほど受給額が増えます。一方、遺族厚生年金は被保険者の平均標準報酬月額と加入期間によって受給額が異なるため、遺族厚生年金の詳細や具体的な計算方法については、日本年金機構のホームページを確認ください。
※参考:日本年金機構(遺族厚生年金)
遺族年金を申請する手続き
必要な書類
遺族年金を申請する際には、以下の書類が必要となります。事前に書類を準備しておくと申請がスムーズです。
- 遺族年金請求書
- 死亡診断書または死亡証明書
- 申請者の身分証明書
- 戸籍謄本(死亡者および申請者のもの)
- 年金手帳(被保険者のもの)
- 口座振替依頼書
申請の流れ
遺族年金の申請プロセスは以下のステップで行われます。各ステップを丁寧に進め、必要な書類を準備してください。
- 必要な書類の収集
- 最寄りの年金事務所で遺族年金請求書を入手
- 請求書に必要事項を記入し、必要書類を添付
- 年金事務所に書類を提出
- 申請の受理および審査
- 審査の結果通知
- 年金の受給開始
申請から受給開始までの期間は、数週間から数カ月かかることもありますので、必要に応じて最寄りの年金事務所に確認しましょう。
注意点とアドバイス
遺族年金の申請に際しては、以下の点に注意してください。
- 申請書類は正確に、かつ丁寧に記入する
- 提出する書類の原本が求められる場合があるため、コピーを保管しておく
- 申請書類の返却を希望する場合は、その旨を事前に伝えておく
- 受給資格や計算方法に不明点があれば、年金事務所に相談する
遺族年金の申請は、予期せぬ遅延を避けるため、早めに行うことが重要です。手続きに不安がある場合は、専門の相談員に助言を求めましょう。
遺族年金の受給中に知っておくべきこと
再婚と遺族年金
遺族年金を受給している最中に再婚する場合、遺族年金の支給が停止されます。これは遺族年金の目的が遺族の生活を支援することにあるため、再婚によって経済的な支援が不要になったと判断されるからです。ただし、再婚後も経済的な困難が続く場合には、他の社会保障制度の利用が可能な場合があるので、事前に確認することが重要です。
他の年金との併給規定
遺族年金受給中に他の年金が受給できる場合、その年金額によっては遺族年金の額が調整されることがあります。特に、受給資格がある他の公的年金(老齢年金や障害年金など)との併給の際に、年金額の合計が一定額を超えると、遺族年金の額が減額されます。具体的な併給制限額については、日本年金機構のホームページや最寄りの年金事務所で確認が可能です。
年金の種類 | 併給制限が適用される条件 |
---|---|
老齢年金 | 遺族年金と老齢年金の合計額が一定額を超える場合 |
障害年金 | 遺族年金と障害年金の合計額が一定額を超えた場合 |
上記の表は、遺族年金と他の年金との併給規定についての例ですが、具体的な金額や条件は年度によって変動することがあるため、最新の情報を確認することが大切です。また、併給制限の計算方法は複雑なケースもあり、事前に専門家への相談をおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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