• 作成日 : 2024年6月14日

年金の受け取り年齢は何歳から?繰り上げ・繰り下げ受給についても解説

年金を受け取れる年齢について把握している方と知らない方がいることでしょう。この記事では、国民年金と厚生年金の受け取り年齢、年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給にまつわること、受給資格の確認や受給手続きの方法といった、年金受給に関するあらゆる情報を解説します。

年金の受け取り年齢

国民年金の場合

国民年金を受け取れる基本的な年齢は65歳からです。この年齢に至るまでに必要な加入期間は、原則として10年以上とされています。とはいえ、経済的な理由や個人のライフプランに応じて、受給開始年齢を前後に調整することが可能です。

具体的には、最も早くて60歳から年金受給を開始することができる一方で、最長75歳まで受給開始を延期できます。ただし、受給が始まる年齢次第で、受給額の変動が生じます。

厚生年金の場合

厚生年金保険の受給資格者も、原則として65歳から年金受給を開始することができます。また、国民年金と同様に、60歳から75歳までの期間で受給開始年齢を選択でき、受給額の調整が可能です。

特別支給の老齢厚生年金の場合

特別支給の老齢厚生年金とは、1985(昭和60)年の法律改正によって、厚生年金保険の受給開始の年齢が60歳から65歳に引き上げられたことによって定められた年金制度です。なお、特別支給の老齢厚生年金の受給を開始する年齢は、生年月日と性別に応じて異なり、一律ではありません。

特別支給の老齢厚生年金の受給資格

特別支給の老齢厚生年金を受け取れる資格としては、以下の要件を満たしている必要があります。

  • 男性の場合、1961(昭和36)年4月1日より前に生まれた
  • 女性の場合、1966(昭和41)年4月1日より前に生まれた
  • 老齢基礎年金の10年の受給資格期間があること
  • 厚生年金保険などに1年以上の加入をしていた
  • 生年月日に応じた受給開始年齢に満たしている

なお、在職中の方は報酬によって年金の支給が停止となる場合があるので、頭に入れておきましょう。

受給開始年齢

特別支給の老齢厚生年金には、報酬比例部分と定額部分の2つで成り立っており、生年月日と性別に応じて受給を開始する年齢が異なります。

受給開始年齢の特例

1941(昭和16)年(女性は1956(昭和21)年)4月2日以後に生まれた方でも、特例として報酬比例部分の受給開始年齢から報酬比例部分と定額部分を合算した「特別支給の老齢厚生年金」が受給できます。

また、特別支給の老齢厚生年金の受給該当者は、下記のいずれかに当てはまる方となります。

  • 厚生年金保険の被保険者期間が44年を超えている方(※被保険者資格を喪失(退職)しているときに限る)
  • 障害の状態(※障害厚生年金の1級から3級に該当)について申し出た方(※被保険者資格を喪失(退職)しているときに限る)
  • 厚生年金保険の被保険者期間中に、坑内員ないしは船員だった期間が15年を超えている方
年金の種類基本受給開始年齢加入要件繰り上げ受給可能年齢繰り下げ受給可能年齢
国民年金65歳加入期間10年以上60歳から75歳まで
厚生年金65歳加入期間に応じる60歳から75歳まで
特別支給の老齢厚生年金60歳以上・男性は1961(昭和36)年4月1日以前に生まれ
・女性は1966(昭和41)年4月1日以前に生まれ
・老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があり、厚生年金保険などに1年以上加入

年金の繰り上げ受給とは

年金の繰り上げ受給とは、年金の受取開始となる年齢よりも前倒しで年金を受給できる制度です。通常、年金は65歳に達した後に受け取りますが、この制度を利用することで、その開始年齢を最大で5年間前倒しして受け取りを開始することができます。しかし、繰り上げで受給を始めると、毎月の受け取る年金額は減少します。

繰り上げ受給の条件

  • 受給資格者本人が年金の繰り上げ受給を希望している
  • 年金受給資格者が国民年金もしくは厚生年金保険の加入者、またはそれに準ずる者であること。

年金繰り上げ受給のメリット・デメリット

メリットデメリット
早期退職後の生活資金確保に役立つ受け取れる年金額が減少する
経済活動が困難な場合に支援となる長生きした場合、生涯で受け取る年金総額が少なくなるリスクがある

繰り上げ受給の手続き方法

繰り上げ受給を希望する場合、対象となる年齢に達する前に年金事務局への所定の書類提出が必要になります。これには、事前に詳細な計画および相談が求められることが一般的です。書類は年金受給権利者および受給希望者向けに年金事務所で提供されます。

繰り上げ受給に伴う年金額の調整計算

繰り上げ受給を利用すると年金額がどのように調整されるのか、具体的な数値を理解することは重要です。

年金の繰り上げ受給を選択した場合、通常受け取るべき年金額から一定割合(1カ月につき0.4%)が減額されます。この減額は、繰り上げる年数に比例して大きくなります。例えば、1962(昭和37)年4月2日以降に生まれた人が受給開始年齢を1年繰り上げると年金額は約4.8%減少、5年繰り上げるとそれは約24%にまで減少します。

繰り上げ受給の対象者となるケース

  • 早期退職をされた方で、退職金だけでは不安という場合
  • 健康上の理由や家族の状況などで、早めに年金を受け取りたい方
  • その他、経済的な理由で早期に収入が必要な場合

注意点としての将来受け取れる年金の算出

繰り上げ受給は一見魅力的な選択肢に思えるかもしれませんが、裏を返せば受け取る年金総額の減少を意味します。長期的な視点で、将来の生活設計にどのように影響を与えるかを検討する必要があります。具体的な計算や相談を行うことで、自分にとって最適な選択を行いましょう。

年金の繰り下げ受給とは

年金の繰り下げ受給とは、年金受給を開始する年齢を延長することにより、月額受給額および生涯で受け取る総額を増やす制度です。受給開始年齢を後ろにずらすことで、一時的に年金受給を見送る代わりに、受給開始以降はより多くの年金を受け取ることができます。

繰り下げ受給のメリット

繰り下げ受給には複数のメリットがあります。主なものとして、月額受給額の増加、生涯における受給額の増加、および将来的な生活の安定が挙げられます。特に長生きすることが予想される場合、この制度を利用することで老後の資金計画に有利に働く可能性があります。

繰り下げ受給の条件

年金の繰り下げ受給を利用できる年齢は、66歳から最大で75歳までです。この期間内であれば、1カ月単位で繰り下げることができ、その期間に応じて受給額が増加します。

繰り下げ受給の計算方法

繰り下げによる年金額の増加率は、繰り下げを開始する年齢と期間によって変動します。繰り下げ受給を行うにあたっての年金額増加率は1カ月あたり0.7%です。また、増額率を計算するにあたっては、0.7%に65歳に達した月から繰り下げ受給を申し立てた月の前月までの月数を乗じて行います。

仮に受給する年金が老齢基礎年金のみだった場合の繰り下げ期間に応じた年金額の増加は以下の通りです。なお、計算のもととなる老齢基礎年金額は2024年度の額(月額6万8,000円)とします。

繰り下げ開始年齢繰り下げ期間増加率月額増加額
66歳1年8.4%約5,700円
70歳5年42%約3万3,000円
75歳10年84%約5万7,000円

本来なら65歳から受け取る年金を、70歳にスライドすることで、毎月受け取れる年金額は10万1,000円まで増やせます。もちろん年金受け取り開始までは何らかの手段で収入を得る必要がありますが、2021年4月の高年齢者雇用安定法の改正により、企業に対して70歳までの就業機会が確保できるような措置を講じることが努力義務とされました。就業の機会があれば可能な限り65歳以降も働き、年金受け取り年齢を繰り下げることで、リタイア後の年金額をより増やすことができます。

上記の表では老齢基礎年金のみについて試算しましたが、老齢厚生年金も受け取れるのであれば、同様に繰り下げ受給を行うことで受け取れる年金額が増額します。

厚生労働省が発表した「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金加入者が受け取れる年金額の平均月額(2021年度)は、約15万円でした。これには老齢基礎年金も含まれます。

この状態で仮に70歳まで受け取り年齢を繰り下げると、受け取れる年金額は約22万2,000円で65歳から受給するよりも7万2,000円増加することがわかります。厚生年金も一緒に受給できる場合は、計算の基礎となる年金額が多くなるため、その分、増加額も大きくなるというわけです。

ただし、年金受給額が多くなると、支払う社会保険料や税金額も高くなります。また、人はいつ亡くなるかわかりません。場合によっては、65歳から受け取っていた方が生涯で受け取る年金額の方が多かったという結果になる可能性もあります。

自分の健康状態や、働く気力、また資産状況などを含めて総合的に判断し、最終的な年金受け取り年齢を選ぶようにしましょう。

繰り下げ受給を選ぶべきか

繰り下げ受給を選ぶかどうかは、個人の老後の生活設計、健康状態、経済状況によって大きく異なります。長期にわたり安定した収入が見込める場合や、健康で長寿が予想される場合は、繰り下げ受給の選択が妥当と言えるでしょう。

繰り下げ受給の手続き方法

年金の繰り下げ受給の手続きには、年金事務所にて年金の繰り下げ受給に関する申請を行う必要があります。申請には本人確認書類や年金手帳などが必要となる場合があるため、事前に必要書類を確認しておきましょう。

年金の受給方法

受給資格

年金を受給するためには、一定の資格が必要です。以下の表は、国民年金と厚生年金の受給資格をまとめたものです。

年金の種類受給資格
国民年金20歳以上60歳未満で日本国内に住所を有し、保険加入期間が10年以上ある者
厚生年金厚生年金保険の被保険者期間がある者

受給の手続き

年金の受給資格を満たしたら、次に受給の手続きを行います。

  1. 年金受給開始の申請
    • 年金事務所への申請書提出
    • 必要書類(身分証明書、年金手帳など)の添付
  2. 年金受給権の確認
    • 年金事務所からの確認通知
    • 受給資格の最終確認
  3. 年金支払いの開始
    • 指定した銀行口座への支払い
    • 指定日に振込み

受給手続きには、事前に必要書類をそろえておくことが重要です。また、年金事務所や自治体の役所役場では、手続きに関する相談や支援も行っています。不明点や困ったことがあれば、積極的に相談しましょう。


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