- 作成日 : 2024年8月9日
国債はやめたほうがいい?メリット・デメリットを解説
国債は安全性が高く、確実に利息を得られる投資商品ですが、低金利による利回りの低さや価格変動リスク、流動性の低さなどのデメリットもあります。この記事では、国債のしくみやメリット・デメリットを解説し、国債への投資が向いている人、向いていない人を紹介します。国債のメリットを生かしつつ、デメリットを理解して適切に投資判断することが重要です。
目次
国債のしくみ
国債とは、国が発行する債券であり、国が必要とする資金を調達するために発行されます。国債を購入することは、国に対して資金を貸し付けることであり、その見返りとして購入者(投資者)は利子を受取れるのです。
国債は、利払い方式に応じて固定利付国債、変動利付国債、割引国債の3種類に分けられます。
固定利付国債は、利率が固定されており、満期まで保有することでその利率で利子受取りが可能です。
変動利付国債は、市場金利に応じて利率が変動するタイプの国債です。
割引国債は、利子の支払いがなく、そのぶん額面よりも安い価格で発行される国債です。
なお、国債の利回りは、国債の価格と年間利率によって決定されます。そのため、国債の価格が上昇すると利回りは下落し、国債の価格が下落すると利回りは上昇し、国債の価格が同じなら利率が高いほど、利回りも高くなる傾向です。
国債の具体的な購入方法
国債の購入方法には、以下のようなものがあります。
- 窓口販売:銀行や証券会社の窓口で国債を購入する方法であり、対面で説明を受けながら購入できるため、初心者でも安心して購入可能
- オンライン販売:インターネットを通じて国債を購入できるので、自宅にいながら24時間いつでも購入可能
- オークション:競争入札によって決定された価格で国債を購入、主に機関投資家が利用
国債には満期があり、満期になると元本が償還されます。償還された元本は、国債を購入した際の金額と同額です。また、利子は、国債の種類によって異なりますが、通常は半年ごとに支払われます。
国債の信用力と格付け
国債は、発行国の信用力に応じて格付けがされています。格付けが高いほど、デフォルト(債務不履行)のリスクが低いとされています。ちなみに一番高い格付けはAAAで、最も格付けが低いのはBBBです(スタンダード&プアーズ(S&P)による格付け)。
日本国債は、世界的に見てもA+ランクと高い格付けを維持しており、比較的安全性が高いと評価されています。実際、日本国債のデフォルト率は極めて低く、過去にデフォルトした例はありません。これは、日本政府の信用力の高さと、日本経済の安定性によるものです。
国債のメリット
国債のメリットは、主に以下の3点です。
安全性が高い
国債は日本国政府が発行する債券であり、その返済は国の信用によって保証されています。日本国の信用は世界的に高く、デフォルト(債務不履行)のリスクは極めて低いと考えられています。そのため、国債は安全性の高い投資商品の一つとされています。
実際、日本国債のデフォルト確率は、格付け会社のムーディーズによるとほぼ0%とされており、他の先進国と比較しても非常に低い水準にあります。この高い信用力は、日本経済の安定性や政府の健全な財政運営に支えられています。
税制面での優遇措置がある
国債の中には税制面での優遇措置が設けられているものもあります。国債の利子には原則として20.315%の税金がかかりますが、個人が保有する国債のうち、一部の国債には利子に税金がかからない「非課税制度」があります。ただし、税金には所得税や住民税のほか、非課税がありますので、混同しないように注意してください。
国債の利子には消費税がかかりません。さらに、国債を相続や贈与で取得した場合、一定の条件を満たせば相続税や贈与税が非課税となる制度もあります。これらの税制優遇措置は、国債投資を促進するための政策の一環として設けられたものです。税金の節税効果により、最終的な利回りが高くなるというメリットがあります。
非課税制度の条件
- 個人が保有する国債の利子は原則消費税がかからない
- 受取った利子や国内債券の償還差益(購入価格と償還価格の差額)には所得税が課税されるが、消費税は非課税
- 国債を相続や贈与で取得した場合、一定の条件を満たせば非課税
国債のデメリット
国債にはメリットだけでなく、デメリットもあります。以下の3点が主なデメリットです。
金利変動リスク
国債の最大のデメリットは、金利変動リスクがあることです。金利が上昇すると、すでに発行された国債の価値は下がります。これは、新しく発行される国債の金利が上がり、より高い利回りを求める投資家が既存の国債を売却するためです。
例えば、1.0%の利回りで購入した10年物国債の価値は、金利が1.5%に上昇すると、約4%下落すると試算されています。結果として、投資家は損失を被ることがあります。
ただし、満期まで国債を保有し続ければ、金利変動の影響を受けずに額面金額が償還されるため、金利変動リスクを回避することが可能です。しかし、途中で売却する必要がある場合は、金利変動による価格下落のリスクを考慮する必要があります。
信用リスク
国債は、国の信用力に依存しています。日本国債は、日本政府の信用力が高いため、信用リスクは低いと考えられています。しかし、国の財政状況が悪化し、債務返済能力に対する懸念が高まると、国債の価値は下がる可能性があり、国債保有者にとって大きなリスクとなるのです。
実際に、ギリシャ国債は2009年の欧州債務危機の際に大きく値下がりし、投資家に多大な損失をもたらしました。日本の場合、政府債務残高がGDP比で200%を超える水準にあるため、将来的な信用リスクの高まりには注意が必要です。ただし、日本国債の大部分は国内投資家や金融機関に保有されているため、海外投資家の動向に左右されにくいという特徴があります。
流動性リスク
国債は、株式や一部の社債と比べると流動性リスクが低いと言われています。なお、流動性とは、現金化(換金)のしやすさです。国債の流動性が低いと、必要なときに国債を売却できない、または売却する際に不利な価格で取引しなければならないので、投資家にとって大きなデメリットとなります。
特に、個人投資家が少額の国債を売買する場合、流動性リスクが高くなる傾向です。大口の機関投資家に比べて、個人投資家の取引量は少ないため、売買がしにくくなります。国債の流動性リスクを回避するには、流動性の高い銘柄を選ぶことや、長期保有を前提とした投資スタンスが有効です。
国債投資をやめたほうがいい人とは
国債は安全性が高く、確実に利息収入を得られる投資商品ですが、全ての方に適しているわけではありません。ここでは、国債投資をやめたほうがいい人の特徴を詳しく説明します。
高利回りを求める人
国債の利回りは、他の投資商品と比べると低めに設定されています。
例えば、10年物の国債利回りは0.1%程度(※ここでは1年単位の利回り、2024年7月時点)です。一方、株式投資では配当利回りが2%以上の企業も存在し、不動産投資においては利回り5%以上を目指すことができます。このため、高い利回りを求める人にとっては、国債の投資は魅力的ではないかもしれません。株式投資やリート投資など、よりリスクは高いものの、高いリターンが期待できる投資商品を検討したほうがよいでしょう。
短期的な資金運用を考えている人
国債は、長期的な資金運用に適した投資商品です。償還までの期間が長いため、途中で換金すると損失が出る可能性があります。例えば、10年物の国債を購入した場合、満期まで10年間保有し続ける必要があります。仮に5年後に換金すると、金利変動によって売却価格が下がり、損失が発生するかもしれません。
短期的な資金運用を考えている人は、定期預金や短期国債など、換金性の高い商品を選ぶことをおすすめします。例えば、1年物の国債なら、1年後には満期を迎えるため、資金を回収しやすくなります。
インフレリスクを懸念する人
国債は、インフレ率が上昇すると実質的な価値が目減りするリスクがあります。インフレ率が国債の利回りを上回ると、購買力が低下し、資産価値が目減りしてしまうのです。例えば、国債利回りが0.1%のとき、インフレ率が1%になると、実質的には0.9%価値が下がることになります。
インフレリスクを懸念する人は、インフレ連動債など、インフレヘッジ効果のある商品を検討したほうがよいかもしれません。インフレ連動債は、インフレ率に応じて元本や利払いが調整されるため、インフレによる資産価値の目減りを防げます。
まとめ
国債は安全性が高く、利回りも安定しているメリットがある一方で、金利が低く、為替リスクやインフレリスクなどのデメリットもあります。短期的な資金運用や分散投資の一部として国債を活用するのは有効ですが、長期的な資産形成を目指すなら、国債だけに頼るのは避けたほうが賢明でしょう。自分の投資目的やリスク許容度に合わせて、株式や不動産、投資信託など他の金融商品も組み合わせることをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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