- 更新日 : 2024年2月29日
つみたてNISAを引き出せるタイミングは?売却の手順や手数料を解説
つみたてNISAの引き出し(売却)のタイミングは、自由に選べます。売却にかかる手数料は基本的に無料で、何度でも引き出し可能です。
本記事では、つみたてNISAの売却手順や引き出すタイミングを紹介します。売却を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
つみたてNISAはいつでも引き出し(売却)が可能
つみたてNISAは好きなタイミングで何度でも引き出しできます。一般的につみたてNISAの「引き出し」と表現されることもありますが、正しい意味合いは「売却」です。
「引き出し」のイメージとして、預貯金を銀行ATMから出金することを思い浮かべる方もいるでしょう。しかし、つみたてNISAの引き出しは銀行ATMからの出金とは異なり、運用した商品を売却して、積立金を得る手続きが必要になります。
また、保険商品のように、積立金を受け取るために解約手続きをする場合がありますが、つみたてNISAの売却は解約手続き不要です。つみたてNISAは解約せずに運用商品の一部または全部を売却することで資金が得られます。
ちなみに、NISA同様に税制優遇のある制度としてiDeCoがありますが、iDeCoは原則として60歳まで引き出しできません。iDeCoは年金であり、老後資金の確保を目的としているため、引き出しできる年齢に制限があるのです。
※2023年でつみたてNISAは終了し、2024年のNISA新制度では「つみたて投資枠」と名称を変えて引き継がれました。本記事では、2023年までのNISA旧制度を中心に記述しています。
つみたてNISAでの売却手順
つみたてNISAの売却には必要な手順があります。ここでは売却手順を4つのステップに分けて解説します。
【ステップ1】売却したい商品を選ぶ
まず、つみたてNISA口座で保有している投資信託の中から売却したい商品を選びましょう。複数の商品に投資している場合は、それぞれのパフォーマンスや今後の見通しなどを比較・検討し、売却する商品を決定します。
売却したい商品は以下のポイントで選びましょう。
- 売却益が出やすい商品(運用成績が良い商品)
- 今後値下がりする可能性が高い商品
- 必要資金に近い金額を積み立てている商品
売却したい商品が決まったら、次のステップに進みます。
【ステップ2】売却したい金額または口数を指定する
売却したい金額または口数を指定します。つみたてNISAは保有する商品全てを売却する必要はありません。
自分の引き出したい金額を設定して売却可能です。注文はNISA口座を開設した証券会社の公式ホームページなどで手続きができます。
【ステップ3】取引内容を確認して売却の注文をする
売却する商品の口数や金額を入力したら、取引内容を確認のうえ、注文を選択します。注文して約定(売買の成立)すると、基本的に申し込み当日か翌営業日の基準価格(投資信託の値段)で売却されます。
【ステップ4】指定された銀行口座に入金される
売却後は通常、数日から1週間程度で指定した銀行口座に入金されます。すぐに現金が必要な場合でも、つみたてNISAの引き出しは数日待たなければならないため、余裕を持って手続きしましょう。
つみたてNISAの売却手数料は無料だが注意点も
つみたてNISAの売却手数料は無料ですが、以下の注意点や特徴があります。
- 信託財産留保金が発生する場合がある
- 銀行口座への出金手数料が発生する場合がある
- つみたてNISAと課税口座の違い
こちらの3点にいて、それぞれ解説していきましょう。
信託財産留保金が発生する場合がある
つみたてNISAに売却手数料はかかりませんが、銘柄によっては信託財産留保金が発生します。信託財産留保金とは投資信託に残す財産であり、換金する人が負担する費用です。
投資信託の解約費用として発生し、解約時に売却利益から支払われます。信託財産留保金がかかる銘柄は目論見書で確認できるため、投資信託を購入する際に注意して見ておきましょう。
銀行口座への出金手数料が発生する場合がある
証券会社によっては指定された銀行口座に出金する際に、出金手数料が発生する場合があります。出金手数料は無料としている証券会社が多いですが、即時出金のみ手数料が必要とするケースもあります。
つみたてNISAと課税口座の違い
つみたてNISAで運用した商品は非課税のため、売却時の税負担もありません。NISAではない課税口座で運用した商品の場合、運用利益に対して20.315%の税金が徴収されます。
例えば、100万円を積立投資して20万円の運用利益が出た場合、NISAでは20万円全額を得られますが、課税口座の場合は約20%の税金が差し引かれ、手取りは16万円になります。
つみたてNISAと課税口座の両方で投資している場合は、つみたてNISAの商品を売却して税制優遇を活用すると良いでしょう。
再度積立をした場合の扱い
2023年までの従来型のつみたてNISAは終了しているため、売却の有無に関係なく、積立できません。
2024年からのNISA新制度では、従来型のつみたてNISAを引き継いで「つみたて投資枠」が設定されています。新制度のつみたて投資枠は年間120万円までを上限として、積立が可能です。なお、新制度のつみたて投資枠で投資した商品を売却した場合、売却した分の投資枠は復活(再利用)可能ですが、投資枠の再利用ができるのは売却した翌年以降となります。
また、つみたて投資枠の年間投資枠(120万円)を超えたり、NISAの非課税保有限度額1,800万円を上回ったりすることも認められていません。
まとめると以下の通りです。
- 旧制度(2023年まで)のつみたてNISA
- 2024年以降の積立不可
- 新制度(2024年以降)のつみたて投資枠
- 年間上限120万円の枠が残っていれば積立可能
- 売却した分の非課税枠は翌年に復活(積立額の上限年間120万円は変わらず)
つみたてNISAを引き出した方が良いケース
つみたてNISAは非課税で投資できる制度で、いつでも引き出し可能です。自由に引き出せる反面、引き出すタイミングを判断できない人も多いでしょう。
以下につみたてNISAを引き出した方が良いケースとして3つ紹介します。
急な支出に対応するとき
急な出費が発生したときは、つみたてNISAを引き出して手元資金の確保を考えても良いでしょう。
例えば、以下のような状況です。
- 車の修理費用が必要になった
- 家電製品が壊れて買い替えが必要になった
- 怪我や入院で医療費がかかった
車の修理費用は数十万円かかることもあるため、事前に準備しておかなければ大きな負担です。家電製品の買い替えや医療費も高額になる場合があり、計画外の出費は家計を圧迫します。つみたてNISAで積み立てていた資金を売却することで、急な出費にも対応できます。
ライフイベントでお金が必要になったとき
結婚・出産・子育て、住宅購入、転職・起業など、人生における大きなイベントでは、まとまった資金が必要です。
つみたてNISAで積み立てていた資金を引き出せば、ライフイベントでお金が必要になったときに費用の一部として充てられます。
例えば、住宅購入は人生の中でも最大の買い物になる方もいることでしょう。頭金や諸費用など、数百万円から数千万円の資金が必要です。つみたてNISAを引き出して頭金の足しにしたり、ローン返済の一部に充てたりすることで、住宅購入に対応できます。
目標額に達したとき
当初設定していた目標金額を達成した場合は、つみたてNISAを引き出して利益を確定できます。
例えば、車の購入費用として200万円の資金を作るために、つみたてNISAに入っているとします。目標額の200万円に到達し、車を購入するタイミングが来たなら、つみたてNISAを引き出しても良いでしょう。
特に売却する投資信託の相場が下落傾向であれば、評価額が下がり保有する資産が目減りする前に引き出すのが賢明です。
つみたてNISAを引き出さない方が良いケース
続いて、つみたてNISAを引き出さない方が良いケースを紹介します。こちらも3つのケースを紹介しますので、それぞれの状況に合わせて参考にしてみてください。
緊急ではないとき
一時的に資金が必要になったとしても、すぐに必要ではない場合は、つみたてNISAを引き出さない方が良いでしょう。
つみたてNISAは、長期的な視点で資産形成を行うための制度です。短期的に売却すると、市場の変動の影響を受けやすく、損失をこうむる可能性が高くなります。
また、売却するほどつみたてNISAでの商品保有数は減るため、複利効果は薄れてしまいます。緊急ではない場合は、できるだけつみたてNISAには手をつけない方が良いでしょう。
運用状況が良くないとき
株式相場が下落しているときに売却すると、受け取れる金額が少なくなります。売却を待てば相場が上昇するかもしれないため、緊急でなければつみたてNISAを引き出さない方が良いでしょう。
市場には変動がつきものであり、一時的な下落は必ずしも損失を意味するわけではありません。下落時に売却すると、損失を確定させてしまいます。相場が下落しているときは、つみたて投資枠に余裕があるなら商品を買い増しするのも良いでしょう。
長期的な視点で考えれば、相場が低い時期に多くの口数を購入すると上昇相場になったときの利益が大きくなりますが、ただし、確実に相場が上昇する保証はありません。
預貯金に余裕があるとき
緊急資金や生活費など、預貯金で十分に余裕がある場合は、つみたてNISAを引き出す必要はありません。つみたてNISAは、あくまでも長期的な資産形成のための手段です。短期的な資金ニーズであれば、預貯金で対応するのが良いでしょう。
例えば、緊急資金として3カ月分の生活費を貯めている場合は、つみたてNISAを引き出す必要はありません。万が一、仕事を失ったり病気になったりしても、預貯金で生活を維持できます。
つみたてNISAの引き出しは無理のないタイミングで行いましょう
本記事では、つみたてNISAの引き出し手順や引き出した方が良いケース、引き出さない方が良いケースを解説しました。
つみたてNISAは運用途中でも自由に売却可能です。証券会社の公式ホームページで売却手続きすれば指定した銀行口座に入金されます。入金されて各種の支払いに使えるようになるまで1週間ほどかかる場合があるため、引き出しが必要な方は早めに手続きすると良いでしょう。
また、つみたてNISAの商品の運用が順調で、預貯金で支出に対応できる場合は引き出さない方が良いケースもあるので、つみたてNISAを引き出す際は余裕を持って、自分に合ったタイミングで行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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