• 更新日 : 2023年11月17日

DAO(分散型自律組織)のメリットとデメリットや事例とは?

DAOとは「Decentralized Autonomous Organization」の略称です。日本語では「分散型自律組織」と呼ばれています。リーダーがおらず、メンバーで共同管理されている組織のことですが、具体的にどのような事例があるのかご存じでしょうか。今回は、DAOの特徴、メリットとデメリットと、DAOを活用して運営されている暗号資産の銘柄も解説します。

DAOとは?なぜ注目されている?

DAOとは、分散型自律組織を意味する言葉であり、リーダー不在で中央集権的ではない組織のことです。物事を決定する際もリーダーからの指示ではなく、平等な立場の人たちが話し合って決めます。

また、DAOが注目されるようになった背景として、分散型アプリケーションを通じて、ユーザー各自が個々のデータを所有および管理、共有するスタイル「Web3.0」という概念が広がっていることが挙げられます。具体的にはNFTや暗号資産などにリーダーが存在せず、ユーザー主体で運営されている分散型自律組織となっているため、DAOが注目されるようになったのです。

DAOの特徴

DAOの特徴について、詳しく見ていきましょう。

誰でも参加できる

従来の組織の場合、大きな力を持つリーダーの指示でメンバーが動いています。また、メンバーが組織に所属する際は一定の能力があるかをテストされ、所属が決まった者は組織と雇用契約を結ぶのが一般的です。一方で、DAOは年齢や性別、そして能力にかかわらず誰でも参加できます。

組織・情報に関して透明性が高い

従来、組織において情報閲覧の権限が階層ごとに決められているのが一般的でした。しかし、DAOの運営はパブリック型ブロックチェーン(※1)を基盤としており、情報の透明性が高いため、ユーザーは情報のチェックが可能です。また、メンバーのやり取りはDiscord (※2)などのコミュニケーションツールを通じて行われますが、サーバーに参加しているユーザーであれば閲覧可能です。

※1.ブロックチェーン:

取引履歴などのデータを「ブロック」と呼ばれる単位で管理し、それを鎖(チェーン)のようにつなげて記録する技術。パブリック型ブロックチェーンではデータがネットワーク上に公開されており、ユーザーがデータを閲覧することが可能

※2. Discord:

米国で誕生したボイスチャットサービスであり、音声・テキストを使いユーザー同士のやり取りが可能。複数の人でコミュニケーションできるサーバーは招待制となっている

上場しているガバナンストークンがある

DAOでは運営方針を投票で決定しますが、その際に利用されるのがガバナンストークンです。ガバナンストークンとは、特定のサービスが受けられる権利を持つユーティリティトークンの一つで、組織運営に関する権利が付与されています。

このガバナンストークンは暗号資産として上場していることも多いため、売買が可能です。購入した人はDAOについての情報閲覧や運営についての意思表明ができるようになります。

ガバナンストークンは利益を得る目的で売買することもできます。

DAOのメリット

DAOのメリットは以下の3つです。

  • 参加者の立場が平等
  • 透明性が高い
  • 資金調達が容易

参加者の立場が平等

DAOでは全ての参加者の立場が平等です。ガバナンストークンを持つ方であれば、誰でも運営に参加できます。

従来の組織のように立場が上の人の意見に従う必要はなく、誰でも自由に意見を述べられるため、メンバーが主体性を持って運営に参加できる点がメリットです。

透明性が高い

従来の組織では、上司と部下、幹事と一般参加者など、立場によってアクセスできる情報が異なる場合が多くあります。情報へのアクセス権限付与は情報漏えい防止の観点からは有効ですが、組織の透明性を保てるかについては疑問が残る部分でした。

しかし、DAOの場合、運営に関する情報は全てブロックチェーンに残されており、誰でも閲覧できます。また、いつでも最新の情報にアクセスできるようになっているため、企業の収支報告のように、一定期間、情報開示を待つ必要がありません。

資金調達が容易

従来の組織の資金調達の手段といえば、株式や債券の発行、金融機関からの借り入れ、自治体からの助成金などが挙げられます。しかし、これらの手段は、資金が手に入るまでに時間・手間・費用がかかる点が難点でしたが、DAOでは、トークン発行で資金調達ができます。従来と比較すると資金調達が非常に簡単です。

DAOのデメリット

DAOには以下のデメリットもあります。こちらも把握しておいてください。

  • 意思決定が遅くなりがち
  • セキュリティーに関してリスクがある
  • 法的リスクがある

意思決定が遅くなりがち

DAOでは、全てのトークン保有者の投票で意思決定が行われます。立場の上下がなく、投票者の意思が組織運営に反映されるのがDAOのメリットですが、意思決定までに時間がかかる点はデメリットでもあります。DAOは急いで意思決定をせざる状況には不向きな部分もあると認識しておきましょう。

また、DAOでは参加者(トークン保有者)の立場は平等、となっていますが、意思決定の投票権の量はトークン保有量に応じて決まります。もし、一部の人が多くのトークンを買い占めてしまうと、その人だけに有利な運営になることも考えられます。この点にも気をつけなければなりません。

セキュリティーに関してリスクがある

DAOはブロックチェーン技術を使って運営されています。安全性は非常に高いのですが、インターネット経由で利用されるものであるため、ハッキングされる可能性が全くないとは言い切れません。また、トークン保有などで不正が行われる恐れもあります。

DAOだけでなく、トークンを保有する参加者の一人ひとりのセキュリティー対策も必要です。万が一、参加者のウォレットがハッキングされてしまうと、組織運営に大きな支障が生じることも考えられます。

法的リスクがある

DAOは日本の法律でしっかりと規制されているものではありません(※)。そもそもDAOの意思決定に必要なトークン自体が有価証券にあたるのかも定められていない状況です。今後、税務関連で重大な問題が生じる可能性もあるので、今後の法整備の動きも注視する必要があります。

※ただし、DAOが配当や100%以上の元本償還の可能性があるトークンを発行する場合は金融商品取引業資格が必要なため、法規制に準ずることになります。

DAOの事例

DAOの運営の事例について3つご紹介します。

ビットコイン

暗号資産で有名なビットコインは企業が発行しているものではありません。ブロックチェーンによって自動的に運営されており、全てのビットコイン保有者の協力で成り立っています。リーダーにあたる人や企業も存在しません。

ブロックチェーンを利用するため、ビットコインのやり取りの履歴は誰もがチェック可能です。そのため不正が起きにくいといったメリットもあります。

CityDAO

ブロックチェーンにデジタルシティを構築するのを目指したのが「CityDAO」です。都市の運営を「NFT」という非代替性トークン保有者で行います。ちなみに現在、米国のワイオミング州にはCityDAOが所有する40エーカーの土地があり、CityDAOのNFTを保有する方たちが利用しています。

UNCHAIN

エンジニアのための学習サービスであるUNCHAINでは学びの報酬をトークンで支払っています。また、学習が修了すると、証明書がNFTで発行されます。学びの過程を可視化できるようになっており、学習者のモチベーション維持にも役立つ仕組みです。

DAO関連の暗号資産銘柄

DAO関連の暗号資産として、以下の3つの銘柄をご紹介します。

  • トロン(TRX)
  • マナ(MANA)
  • BitDAO(BIT)

トロン(TRX)

トロンは「TRONプラットフォーム」の基軸通貨となっている暗号資産です。当初はTRON財団が運営していましたが、2021年12月に解散し、その後はトロンDAOが運営しています。

TRONプラットフォームはエンターテイメント系サービスに強いプラットフォームとして将来性が見込まれており、トロンの時価総額増加も期待できるでしょう。

マナ(MANA)

メタバースプラットフォーム「Decentraland(ディセントラランド)」の基軸通貨となっているのがマナです。ディセントラランドはディセントラランド財団が開発しましたが、DAOもあります。運営に関しては参加者の投票で決定します。

マナはプラットフォーム内の決済、そしてDAOのガバナンストークンとして利用されています。

BitDAO(BIT)

BitDAO(以下、BIT)はDAO「BitDAO」で使われる暗号資産です。DAO「BitDAO」は将来が期待できるブロックチェーンなどへの投資を行っているプロジェクトです。BITはBitDAOのガバナンストークンとして使え、保有するとBitDAOの投票権が得られます。

また、BitDAOで収益が出た場合、BIT保有者にも配当として支払われます。保有するだけでもメリットが大きい暗号資産です。

リーダー不在で運営されるDAO、今後の動きも要チェック!

DAOは従来の組織とは異なり、全てのガバナンストークン保有者の意思で運営されるという特徴があります。立場の上下がないため、誰もが自分の意見を活かしやすいのが大きなメリットといえるでしょう。さらに、DAOの情報はブロックチェーン上に保管されているため、いつでも閲覧可能です。透明性が高い組織運営ができる点も魅力といえます。

ただし、意思決定にはトークン保有者全員の投票が必要になるため、意思決定に時間がかかる点は注意点です。

また、日本ではDAOの法整備がされていないという現状もあります。トークンが有価証券にあたるのか、税制がどうなるのかも定められていません。今後、どのような動きになるかわかりませんが、新しい組織形態としてのDAOに注目しておきましょう。


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