• 更新日 : 2023年10月13日

テーパリングが起きるとどうなる?わかりやすく解説

経済情報を収集している人は、「テーパリング」の概要について知りたいのではないでしょうか。経済新聞やマーケットレポートでときどき登場しますが、テーパリングが起きると、どのような影響があるのか気になりますよね。

本記事では、テーパリングによる株価や為替への影響や、過去のテーパリングの動きを解説していきます。中央銀行の金融政策についても解説しているため、投資を始めようと考えている方も参考にしてください。

テーパリングとは

テーパリングとは、資金供給を減らして量的緩和を段階的に縮小していくことです。テーパー(taper)には「先が細くなる」「徐々に減らしていく」という意味があり、市場が驚かないように金融資産の買入れ額を少しずつ減らしていくニュアンスとなります。

この章で最初に述べた量的緩和とは、中央銀行が国債などを購入して、市場に出回る資金の量を増やす金融政策のことです。これまで日本銀行(日銀)では、日本の物価を安定させることを目的として、政策金利を上下させていました。

しかし政策金利がゼロに近づくと引き下げの余地が小さくなるため、さらなる効果を期待して、2001年に量的緩和策を導入しました。中央銀行では、民間の金融機関との間で資金の貸付けや国債の買入れなどを行うことにより、公開市場操作(オペレーション)を行っています。

テーパリングが始まると、金融資産の買入れ額を減らしていくことから、量的緩和の出口戦略とも呼ばれています。

テーパリングが起きるとどうなる?

ではなぜ今になって、テーパリングが注目されているのでしょうか。それは米国のFRB(連邦準備制度理事会)が、2021年11月から2022年3月にかけて、テーパリングを行ったからです。ここからはテーパリングによる株価と為替への影響について、解説していきます。

株価への影響

テーパリングが始まると、理論上は株価が下落します。金融資産の買入れが少なくなると、(テーパリング終了後に)国債の長期金利が上昇することから、企業の資金調達が難しくなるからです。その結果、企業の業績悪化や配当の減少などにより、株価の下落へとつながります。

また株価の理論価値を示す「割引現在価値」が低下するため、株価が割高となり、保有株を売却する投資家が増えることも要因の一つと考えられます。ただし長期的に見ると、市場がテーパリングを織り込んでいる場合がほとんどとなっている、株価に大きな影響が生じないでしょう。

為替への影響

テーパリングが始まると、将来的に通貨の価値が上昇するといわれています。量的緩和の終了後は、政策金利を上げていくことが予想されるからです。政策金利が上がることにより、その国の通貨で預金や資産運用をしたいと考える人が多くなるため、通貨の価値が上昇するのです。

実際に米国では、テーパリング終了後(2022年3月以降)に度重なる利上げを行っており、2022年3月時点では1ドル136円でしたが、2023年8月末時点では145.52円にまで上昇しています。

過去のテーパリング時の動き

米国では過去(2014年1月から同年10月まで)にも、テーパリングを行っています。当時は2008年のリーマンショック後の金融緩和局面で、量的緩和政策の第3弾(QE3)が行われている時期でした。2013年の米国経済は、年初から住宅や自動車市場が堅調で、雇用者数や失業率なども着実に改善していたようです。

ところが2013年5月に当時のバーナンキFRB議長は、市場が全く予想していないタイミングでテーパリングを示唆。量的緩和の拡大を予想していた投資家が政策金利の引き上げを懸念したため、米国債売りが急激に進み、米10年国債利回りが急騰しました。5月末頃からの市場の動揺は同年9月には一服しましたが、テーパリングの開始は当初の見込みより遅れ、2014年1月からとなりました。

テーパリングによる株価への影響

当時の株価はバーナンキ氏の発言を受けて一時的に下落しましたが、テーパリング開始後は堅調に推移しました。市場が予想していないタイミングでテーパリングが示唆されたため、一時的には動揺を見せたものの、結果的にはテーパリングの開始を織り込んだ動きとなったようです。

テーパリングによる為替への影響

ドル円相場はバーナンキ氏の発言を受けて、一時的に94.61円まで下落しました。その後は緩やかに推移を続け、テーパリング開始後は105.39円まで回復。テーパリング期間中は為替への影響はほとんど見られませんでした。

ただし2014年10月31日に、日銀が追加緩和を決定するとドル高・円安が進行して、2014年末には121.58円に達しました。

長期・積立・分散投資を意識して市場の混乱を回避しよう

米国のFRB(連邦準備制度理事会)では現在も利上げを行っており、2021年以来、5.50%の高水準に達しました(2023年9月28日時点)。このまま政策金利の上昇が続くと世界経済に混乱を来す恐れがあるため、投資家は警戒を強めています。

市場の混乱はプロの投資家でもなかなか予想できないため、資産形成を目的として投資を始める場合は、「長期・積立・分散」を意識しましょう。今後もニュースや新聞を確認して、米国市場の動向を確認しておきたいところです。


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