- 更新日 : 2023年8月18日
エンジェル投資家とは?投資を受けるメリット・デメリットや出会い方について解説
スタートアップ企業やベンチャー企業が出資を受ける方法として、「エンジェル投資家」を頼るケースが挙げられます。昨今ではエンジェル投資家に投資をしてもらう若手起業家が増えている一方で、エンジェル投資家についてよくわからないことも多いのではないでしょうか。
そこで、今回の記事ではエンジェル投資家の概要をはじめ、投資を受けるメリットおよびデメリットについて解説します。記事の後半では代表的なエンジェル投資家についても触れているので、あわせて参考にしてください。
目次
エンジェル投資家とは
エンジェル投資家とは、創業間もないスタートアップ企業やベンチャー企業に出資を行う個人投資家のことです。一般的な個人投資家と異なり、金銭面の援助のみならず経営のサポートやアドバイスなどさまざまな援助を行います。エンジェル投資家は出資した企業の成長に伴い、配当や株式を受け取ることで利益を得ます。
創業間もない企業は実績や社歴がないことから金融機関の融資に通らないことも少なくありません。そうした企業にとって実績ではなく将来性や新規性、ビジネスモデルなどをもとに出資判断を下すエンジェル投資家の存在は大きいといえるでしょう。
エンジェル投資家と一般の投資家との違い
一般的に私たちがイメージする投資家は、企業が安定して利益を生むように成長し、継続的に利益(株式の配当金など)を得ることを主な目的としています。一方で、エンジェル投資家やVC(ベンチャーキャピタル)は継続して安定した利益を得ることよりも企業の成長性に注目します。両者は投資に対して求めるものがそもそも違うといえます。
エンジェル投資家とVC(ベンチャーキャピタル)の違い
エンジェル投資家と並んでよく取り上げられるキーワードとして、VCが挙げられます。混同している人も多いかもしれませんが、エンジェル投資家とVCには以下のような違いがあります。
上記の表でもわかるように、実績があまりない企業に対して投資を行うといった意味では似ているものの、そもそもの出資者が大きく異なります。エンジェル投資家が個人投資家であるのに対し、VCでは出資者が法人(投資会社)であるといった違いがみて取れるでしょう。
また、出資額にも違いがあり、エンジェル投資家の投資額は平均して百~数千万円である一方、VCでは数千万から数億円、中には数十億になるケースも珍しくありません。ただし、VCは出資額が大きい分、審査が厳しい傾向にあります。金融機関と同程度の審査基準になることも少なくありません。
エンジェル投資額の推移
従来、日本では欧米諸国と比較してエンジェル投資の普及の遅れが指摘されていましたが、昨今ではエンジェル投資市場の拡大が見受けられます。実際、経済産業省が2022(令和4)年に公表した「エンジェル税制の実績(投資額・企業数)」を見ると、投資額およびエンジェル税制を利用した企業数がともに増加していることがわかります。
■過去10年におけるエンジェル税制の実績(投資額)
参考:「エンジェル税制の実績(投資額・企業数)」|経済産業省
■過去10年におけるエンジェル税制の実績(企業数)
参考:「エンジェル税制の実績(投資額・企業数)」|経済産業省
✔ エンジェル税制とは
エンジェル税制とはベンチャー企業の投資促進を目的としたもの。ベンチャー企業あるいはスタートアップ企業に投資した個人投資家に対して、投資時点または売却時点のいずれかで税制上の優遇措置を適用する制度のこと。
エンジェル投資家に投資を受けるメリット
ここではエンジェル投資家に投資を受けるメリットについて、紹介します。
経営や事業遂行に対するアドバイスを受けられる
エンジェル投資家の多くは事業成功者であり、多くのノウハウや知識を有しているケースがほとんどです。企業の立ち上げにあたって、先駆者から経営や事業遂行に関するさまざまなアドバイスを得られるのは大きなメリットといえるでしょう。
人脈作りのきっかけが増える
エンジェル投資家の中には経営に対するアドバイスなどのサポートのみならず、人脈や取引先を紹介してくれる人もいます。きっかけさえあれば、業界のキーマンをはじめ企業の成長に大きく貢献してくれる人と出会えるチャンスをつかめるかもしれません。
とはいえ、投資家によって出資先に対するスタンスは異なるため、出資を受ける前にどういったサポートを受けられるのか内容を確認しておくとよいでしょう。
調達資金を返済する義務がない
エンジェル投資家は融資ではなく出資といった形で企業に資金提供を行います。そのため、企業側に返済の義務がなく、創業間もない企業にとってそのことは大きなメリットといえるでしょう。金融機関をはじめ、返済義務のあるところから融資を受けた場合、毎月の返済によって企業の成長スピードが損なわれることも少なくありません。
また、エンジェル投資家は金融機関による融資やVCによる出資と比較して短期での資金調達が見込めることも特徴の一つです。エンジェル投資家は法人と異なり、個人単位の意思決定で出資が決まるため、出資が決まれば資金が入ってくるまでの流れがスムーズに進むでしょう。
エンジェル投資家に投資を受けるデメリットや注意点
エンジェル投資家に投資を受けることでメリットを得られる一方、注意しなければならない点がいくつかあります。ここでは投資を受けるデメリットや注意点について解説します。
経営の自由度が下がる恐れがある
エンジェル投資家に投資を受けることで、経営の自由度が下がる恐れがあります。その理由として、エンジェル投資家は企業が成長し、出資した分のリターンを得ることを期待していることから、積極的に事業に介入してくることが挙げられるでしょう。有益なアドバイスを得られる一方で、自分が思うように会社を経営しづらくなる恐れがあることに注意が必要です。また、資金援助を受けている手前、エンジェル投資家の方が立場が上になりやすく、思ったことを意見しづらいことも多いでしょう。
こうした事態を避けるためにも、出資を受ける前にどの程度経営に参加するのか、どれほどの頻度で企業を訪れるのかを確認しておくことが大切です。
多額の出資を得ることは難しい
エンジェル投資家は個人投資家である以上、金融機関やVCに比べると出資額が少なくなります。エンジェル投資家だけで資金が足りそうにない場合、他の方法での資金調達を検討しなければならないでしょう。
他の資金調達方法として、日本政策金融公庫や金融機関からの出資、また国や自治体などの助成金が挙げられます。とはいえ、いずれも一定の要件を満たすことが必要となるケースが多く、前もって要件を確認しておくことが欠かせません。
エンジェル投資家との出会い方
メリットおよびデメリットを把握したところで、エンジェル投資家との出会い方をいくつか紹介します。
知人からの紹介
信頼のおける知人や友人がエンジェル投資家を知っているのであれば、紹介してもらうのが最適です。信頼できる人からの紹介であれば話し合いがスムーズに進む可能性が高いといえます。ただし、友人や知人と相性が合ったからといって自分とも合うとは限りません。最後はしっかりと自分の目で判断することが大切です。
マッチングサイト
エンジェル投資家が利用するマッチングサイトに登録するのも一つの手です。ただし、中には投資家の審査基準が曖昧で怪しいサイトも含まれていることから、事前に信頼できるかどうかきちんと調べるようにしましょう。
また、昨今ではTwitterをはじめとしたSNSを利用してエンジェル投資家と知り合うケースも見受けられます。
イベントやビジネスコンテスト
イベントやビジネスコンテストに登壇者や審査員として参加するエンジェル投資家も多く、そのような場を通じて出会うケースも多く見受けられます。また、そうした場は起業家自身の熱意や人間性を伝える場としても適しているでしょう。
エンジェル投資の受け方
エンジェル投資を受ける一般的な流れは以下の通りです。
特に事前準備については過去の出資例なども参考にしながら、慎重に進めるようにしましょう。また、投資条件の交渉の際に相手のサポートスタンスなどについても確認することをおすすめします。
代表的なエンジェル投資家
ここでは代表的なエンジェル投資家を5名、紹介します。
本田圭佑氏
本田圭佑(ほんだけいすけ)氏は、元サッカー日本代表選手であり、2016年からエンジェル投資家としての活動をスタートし、テック系スタートアップを中心に分野を問わず投資を行っています。投資実績は180件(2023年2月17日時点)に及び、SNSでも積極的に活動中。
Twitter:https://twitter.com/kskgroup2017
中川綾太郎氏
中川綾太郎(なかがわあやたろう)氏は、女性向けキュレーションメディア「MERY(メリー)」の運営会社である株式会社ペロリの創業メンバーの一人です。2014年にDeNAに事業売却後、投資家集団に所属し個人投資家としても活動しています。
Twitter:https//twitter.com/ayatan48
家入一真氏
家入一真(いえいりかずま)氏は、「ロリポップ」「minne」など個人向けサービスを運営するpaperboy&co.(現GMOペパボ)を福岡で創業し、2008年にJASDAQ市場にて上場(最年少記録)しました。現在はクラウドファンディングの草分け的存在ともいえる「CAMPFIRE(キャンプファイア)」の代表取締役を務めるほか、BASEの共同創業取締役、またエンジェル投資家としても活動中。
Twitter:https://twitter.com/hbkr
千葉功太郎氏
千葉功太郎(ちばこうたろう)氏は、2009年に株式会社コロプラに参画し、取締役副社長に就任。2012年にはマザーズIPO、2014年に東証一部上場後、取締役副社長を退任しました。その後エンジェル投資家に転身し、スタートアップ企業への投資を開始していまする。
Twitter:https//twitter.com/chibakotaro
松村映子氏
松村映子(まつむらえいこ)氏は、2014年にネット宅配クリーニングサービスの「バスケット」を創業し、2015年には株式会社ストライプインターナショナルのグループ会社となったのち、同社代表取締役Chief Digital Officerに就任しました。日本でも数少ない女性のエンジェル投資家として活動しています。
Facebook:https://www.facebook.com/eiko.matsumura
エンジェル投資の特徴を正しく理解して投資判断を下そう
今回の記事ではエンジェル投資家の概要をはじめ、投資を受けるメリットおよびデメリットなどについて紹介しました。創業間もないベンチャー企業やスタートアップ企業にとって、柔軟かつスピーディーに投資してもらえるエンジェル投資家の存在は非常に大きいといえます。
とはいえ、記事でもお伝えしたようにエンジェル投資には良い点と悪い点が存在します。自分がどのように会社を経営していきたいのか、あらかじめきちんと考えた上で投資を受けるか否かの判断を下すことが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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