世界最大級の公的年金基金・GPIFとは

少子高齢化による将来の現役世代の負担を考慮して、公的年金制度で集められる年金保険料のうち、年金積立金に当たる部分は運用管理および運用方針においては、GPIFが対応しています。今回の記事では、GPIFの役割や資産規模、投資先・投資実績、ESGとの関係まで解説していきましょう。

GPIFとは

GPIFとは、年金積立金管理運用独立行政法人(Government Pension Investment Fund)のことであり、厚生労働大臣からの預託によって、年金積立金の運用や管理を行っている組織です。日本の公的年金制度と密接な関わりがあります。

GPIFの役割

GPIFと関係の深い公的年金制度は、20歳以上の全ての国民が加入する制度です。国内に住む20歳から60歳までの人は年金保険料を納める義務があります。納められた保険料は次のような人々に給付される仕組みです。

  • 高齢で働けない人(老齢年金)
  • ケガや病気で障害を抱えた人(障害年金)
  • 家計を支えていた人の遺族(遺族年金)

公的年金は、現役世代の納めた金額が、そのときの年金給付に充当される賦課(ふか)方式となっています。しかし、少子高齢化社会により現役世代の負担は徐々に大きくなっていることから、年金制度を持続可能なものにしようと設けられた仕組みの一つが年金積立金の活用です。

年金積立金は、現役世代から集めた年金保険料のうち、年金の支払いに充てられなかった資金のことを指します。年金積立金は全体の1割ほどであり、最終的に100年後に年金給付の1年分の積立金が残るように運用していく方針です。

GPIFは、将来使える年金積立金を増やして財源の均衡を図るために、政府からの寄託を受けて年金積立金の運用と管理を担う役割を持った組織といえるでしょう。

GPIFの資産規模

2001年の財政投融資制度改革によって、旧大蔵省資金運用部への預託義務がなくなり、年金積立金の市場運用がはじまりました。2001年から、年金資金運用基金で年金積立金の運用が開始され、GPIFが設立された2006年には、年金資金運用基金からGPIFに事業が引き継がれています。

GPIFの「2023年度の運用状況」によると、第1四半期末(2023年6月末)時点の資産規模は合計で220兆円を超えています。

GPIFの資産規模は世界の年金基金と比較しても多く、世界最大規模の年金基金だといえるでしょう。

参考:2023年度の運用状況|年金積立金管理運用独立行政法人
参考:世界最大級の年金基金群の資産が23.6兆米ドルの新記録達成|wtw

GPIFの運用方針

公的年金の積立金の運用については、以下3つの法律で定めがあります。

  • 厚生年金保険
  • 国民年金法
  • 年金積立金管理運用独立行政法人法(GPIF法)

GPIF法では、「積立金の運用は安全、かつ効率的に」と要請されているため、リスクの高い運用は制限されます。一定の規定が設けられている理由は、将来的な年金資金の確保を目的としており、国民から納付された年金保険料が原資となっているためです。

なお、将来的な年金資金の確保を踏まえ、GPIFは厚生労働大臣から長期的な目標として以下の指標を達成することを要請されています。

長期的な運用目標 = 賃金上昇率+1.7%

※運用利回り1.7%は最低限のリスクで確保すること

運用目標の計算で賃金上昇率が加味されている理由は、賃金水準によって、年金積立金の原資である保険料収入などが変動するためです。長期目標の他に、5年ごとに厚生労働大臣により中期目標が定められます。

GPIFは、厚生労働大臣の要請を踏まえ、リスクを抑えながら効率よく年金積立金の運用を行うために、資産を長期にわたり保有する運用によって収益を上げることを運用方針としています。

参考:年金積立金の運用目標|年金積立金管理運用独立行政法人

GPIFの投資先

GPIFは、リスク管理のために長期運用に加え、複数の資産に投資する分散投資によって、安定性と収益の確保の両立を図っています。

GPIFの投資先は、国内債券、外国債券、国内株式、外国株式です。GPIFは、5年ごとに設定される厚生労働大臣の中期目標や経済状況などを加味し、基本ポートフォリオを策定しています。

基本ポートフォリオとは、どの資産にどのくらいの配分で投資するかを示したものです。GPIFの「基本ポートフォリオ」の考え方によると、2020年4月からの5年間については、投資先それぞれに対して、25%の割合で設定されています。かい離許容幅は、株式と債券それぞれ±11%です。

基本ポートフォリオについては、2006~2009年度は国内債券67%、2010年~2014年度は国内債券60%、2014年~2019年度は国内債券35%と徐々に比率が下がっているものの、国内債券の比率が高い状況にありました。2020年度からの基本ポートフォリオにおいては、債券の比率が下がり、株式の比率が高まっています。

参考:基本ポートフォリオの考え方|年金積立金管理運用独立行政法人

GPIFの運用実績

ここでは、GPIFの「2022年度の運用状況」より、決算が確定している2022年度の運用実績をみていきましょう。

2021年度比の収益については、2022年度は+1.5%、収益額は+2兆9,536億円となりました。1年という短期的な収益率では、経済状況の影響も受けるため、これだけの情報で比較するのは不十分といえます。

運用を開始した2001年から比較した収益率をみていきましょう。運用開始以降の収益率については+3.59%、収益額の累積額は+108兆3,824億円に上ることがわかりました。長期的なラインである1.7%と比較し、2022年度末の時点では収益率が上回っていることがわかります。

参考:2022年度の運用状況|年金積立金管理運用独立行政法人

GPIFとESG

GPIFは、ESG投資を推進しています。ESGは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字を組み合わせた言葉です。投資先の価値を判断するときの材料として使われています。

また、ESG投資は、企業の環境への取り組み、社会貢献、ガバナンス(管理・統制の仕組み)を考慮して投資先を選定しようとする考え方です。

GPIFは、ESGを考慮して投資先を選定するために、2017年からは指数会社の評価したESG指数をもとに株式投資を行っています。毎年、ESG活動報告で活動を検証している点も特徴です。

2021年度の活動報告では、気候変動にかかわる温室効果ガスに焦点を当て、カーボンフットプリント(原料調達から廃棄までの温室効果ガスの排出を二酸化炭素に換算したもの)の測定、カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること)実現の動向などを活動報告として挙げています。

また、GPIFがESG投資で積極的に動いている理由は、世界市場全体で幅広く運用する投資額の多いユニバーサル・オーナーであり、スチュワードシップ責任があるためです。ちなみにスチュワードシップ責任とは、大口の投資家である機関投資家が、サステナビリティ(持続可能性)を考慮した建設的な対話で、企業の価値向上や持続的成長を促し、中長期的投資リターンを拡大させる責任のことを指します。

将来の年金給付に関係が深いGPIF

少子高齢化社会によって、先細りが懸念される年金制度の持続可能な仕組みを実現するための取り組みの一つが年金積立金の運用です。年金積立金の運用と管理は、厚生労働大臣からの預託によってGPIFが担っています。

GPIFの動向や運用実績は、将来のわたしたちの年金給付にも大きく影響するものです。将来の年金について考えるときは、GPIFの動向についても関心を持ってみるとよいでしょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。