iDeCoとNISAを併用すべきケースとは?制度を最大限活用する方法を解説

2024年1月に新NISA制度が始まり、既存のiDeCo(イデコ)と併用すべきか悩んでいる方もいるでしょう。
iDeCoとNISA(ニーサ)は併用可能です。本記事ではiDeCoとNISAのメリットやリスクを比較しつつ、併用すべきケースや1種類に絞るべきケース、年代別の活用イメージを解説します。iDeCoとNISAの制度を最大限活用するための参考にしてください。

 iDeCoとNISAは併用できる

iDeCo(イデコ)は、国民年金や厚生年金などの公的年金とは別に年金給付を受けられる、個人型確定拠出年金制度です。iDeCo(イデコ)は、国民年金や厚生年金などの公的年金とは別に年金給付を受けられる、個人型確定拠出年金制度です。一方NISA(ニーサ)は、一定額まで投資の運用益が非課税となる少額投資非課税制度となります。

NISAはつみたて投資枠と成長投資枠の2種類があり、それぞれの併用だけでなくiDeCoとの併用も可能です。
本章では、iDeCoとNISAの概要と、併用できる組み合わせを解説します。

そもそもiDeCo・NISAとは?

iDeCoは自分で掛け金と銘柄を決定し、毎月一定額を積み立てながら運用していく制度です。運用益を含めた投資額は、年金として60歳以降に受け取れます。
iDeCoは年金制度であることから、60歳になるまで引き出せません。掛け金は全額所得控除の対象で、運用益は非課税です。受取金は、年金控除もしくは退職所得控除の対象となります。

iDeCoの対象者は、以下の国民年金加入者です。

  • 自営業者(第1号被保険者)
  • 民間企業の会社員(第2号被保険者)
  • 公務員(第2号被保険者)
  • 扶養に入っている配偶者(第3号被保険者)
  • 国民年金に任意加入されている方

iDeCoの対象年齢は、20歳以上60歳未満となります。ただし次の場合は、60歳以上65歳未満まで加入対象です。

  • 60歳以上で国民年金に任意加入した
  • 60歳以上だが厚生年金への加入を継続している。

一方のNISAは、投資信託などの金融商品で得られた利益が、一定金額の範囲内で非課税となる制度です。60歳まで掛け金を引き出すことのできないiDeCoとは違い、NISAはいつでも払い出し・売却が可能です。

NISAは、つみたて投資枠と成長投資枠合算して1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)までの運用益が非課税となります。1,800万円は購入価額の総額となり、運用益は含みません。
どちらのNISAも、年間の投資枠に上限があります。つみたて投資枠は年間120万円まで積み立て可能です。成長投資枠は、年間240万円までとなります。

iDeCoとNISAの比較表

iDeCoNISA
対象者20歳以上60歳未満(条件により65歳未満)の国民年金加入者18歳以上
年間の投資上限額第1号被保険者、任意加入被保険者:81.6万円
第2号被保険者(会社員、公務員等):14.4~27.6万円※1
第3号被保険者(扶養内の配偶者):27.6万円
つみたて投資枠は120万円
成長投資枠は240万円
引き出し年齢60歳以上制限なし
運用商品投資信託、保険などつみたて投資枠:金融庁の基準を満たした投資信託
成長投資枠:株式・投資信託など
税制優遇掛け金:所得控除の対象
運用益:非課税
受取金:公的年金控除もしくは退職所得控除の対象
掛け金:控除なし
運用益:つみたて投資枠、成長投資枠合算で1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)まで非課税※2
受取金:控除なし

※1:企業型DC(企業型確定拠出年金)の加入有無により異なる
※2:合算して1,800万円以上の利用はできない

併用できる組み合わせ

iDeCoとNISAが併用できる組み合わせは、以下の通りです。

  • iDeCo+つみたて投資枠
  • iDeCo+成長投資枠
  • iDeCo+つみたて投資枠+成長投資枠

つまり、iDeCoとNISAはすべて併用可能となっています。

2023年までのNISAは、一般NISAとつみたてNISAに分かれ、併用はできませんでした。2024年1月の新制度開始により、一般NISAが成長投資枠に、つみたてNISAがつみたて投資枠に変更され、併用が可能となりました。NISA間の併用が可能になった現在は、2種類のNISAとiDeCoすべての併用が可能です。

iDeCoとNISAを併用するとお得なケース

iDeCoとNISAの併用でお得になるのは、主に以下の2ケースです。

  1. 老後資金を多く受け取りたい場合
  2. 節税したい場合

どのようにお得になるか、掘り下げて解説します。

ケース1.老後資金を多く受け取りたい場合

老後資金を多く受け取りたい場合、iDeCoとNISAの併用をおすすめします。iDeCoは運用益がすべて非課税となるため、本来は課税される分を、年金として全額受け取れるからです。
また、iDeCoは60歳未満では引き出せません。そのため、運用益は60歳以降に一括で受け取る形になります。投資期間が長いほど運用益は増えるため、iDeCoの活用により老後資金が増える確率がより高まるでしょう。

NISAも買付総額1,800万円までの運用益が非課税です。最大1,800万円分の運用益を控除なしで受け取れるため、老後資金作りに有効活用できます。
このようにiDeCoとNISAを併用すると、両方の運用益を満額受け取ることが可能です。60歳以降に老後資金を多く受け取りたい場合は、iDeCoとNISAの併用をおすすめします。

ケース2.節税したい場合

節税したい場合も、iDeCoとNISAの併用がおすすめです。iDeCo、NISAとも運用益が非課税なので、そもそも節税効果があります。さらにiDeCoは掛け金が全額所得控除の対象です。所得控除を使うことで、掛け金を拠出している間の所得税や住民税を節税できます。

節税で増えた余剰金は、再投資に回すことも可能です。余剰金を再投資できることからも、節税したい場合はiDeCoとNISAの併用をおすすめします。

iDeCoとNISAどちらかに絞った方が良いケース

iDeCoとNISAは、併用しない方が良いケースもあります。ここからは、iDeCoとNISAを併用せず、片方に絞った方が良いケースを解説します。

iDeCoに絞った方が良い場合

老後資金のためだけに投資する場合は、iDeCoに絞った方が良いでしょう。iDeCoは60歳にならなければ引き出せないので、老後資金を確実に貯められるからです。運用益も非課税なので、運用益を全額老後資金として利用可能です。
投資で確実に老後資金を準備したい場合は、60歳にならないと引き出せず、かつ運用益が非課税であるiDeCoに絞ることをおすすめします。

NISAに絞った方が良い場合

配偶者の扶養に入っている第3号被保険者の場合、NISAに絞ることをおすすめします。収入が少ないため、iDeCoの所得控除を使い切れないからです。
iDeCoの掛け金は全額所得控除の対象で、給与や事業収入から控除されます。しかし所得税や住民税が非課税の第3号被保険者は所得がないため、iDeCoの掛け金による控除が受けられません。住民税の課税対象者であっても、iDeCoの掛け金による所得が少ないことから控除を全額使い切れない可能性があります。

また、急な出費で今すぐ使いたい場合も、NISAに絞った方が良いでしょう。iDeCoは、60歳になるまで引き出せませんが、NISAはすぐに引き出せます。もしもの時の備えとして投資をする場合は、必要に応じてすぐ引き出せるNISAに絞ることをおすすめします。

年代別のiDeCo・NISA活用イメージ

iDeCoやNISAには、引き出し開始年齢や非課税措置の有無などの違いがあり、年代によっておすすめする商品や活用方法が変わります。
iDeCoとNISAの活用イメージを、20代から50代まで年代別に解説します。

20代の活用例

20代は、投資資金作りから始めましょう。何かあった際にすぐ引き出せるNISAのつみたて投資枠を活用して、少しずつ投資資金を貯めることがおすすめです。ある程度資金が貯まったら、iDeCoやNISAの成長投資枠で運用益を増やしつつ資産形成を進めていきます。

20代の投資は、多少損失を出しても時間を掛けて取り戻すことが可能です。NISAのつみたて投資枠で堅実に資金を作りつつ、成長投資枠やiDeCoを使って運用益を増やしていきましょう。

30代の活用例

30代は結婚や出産などライフイベントが多く出費が増えるため、すぐ引き出せるNISAで生活資金を作っておくことをおすすめします。夫婦共働きの場合は、夫婦別々にNISAを運用するとより安心です。

30代は、自分の老後についても少しずつ考え始めます。老後に備えるために、60歳まで引き出せないiDeCoの併用もおすすめです。

40代の活用例

40代で老後資金のためにiDeCoやNISAを始める場合、60歳までに資金を貯められない場合もあります。iDeCoの月額上限分まで掛け金を増やし、老後資金作りを進めましょう。老後資金にこだわらない場合は、iDeCoとNISAの併用、もしくはNISAだけでも大丈夫です。

40代でハイリスク・ハイリターンの商品を選ぶと、損失が出た場合取り返せなくなる可能性があります。投資の際は、なるべく損失を出さず堅実に運用できる商品を選ぶことが大切です。

50代の活用例

iDeCoは60歳以降、自由に受け取り開始年齢を決められます。将来の受給額や受給年数を計画的に考えて投資を始めるならば、50代から開始しても問題ありません。節税効果もあるので、50代からiDeCoを開始しても損はないといえるでしょう。

iDeCoの積立金を受け取るには、10年以上の加入期間が必要です。加入期間が10年未満だと、60歳になってもすぐには受給できません。60歳でiDeCoを受給できない場合は、iDeCoの空白期間に受け取れるNISAの併用がおすすめです。

iDeCoやNISAで運用する投資信託のおすすめは?

iDeCoやNISAで運用する投資信託は、目的により選び方が変わります。将来に備えてお金を貯めたい場合は、値上がり益が期待できる株式や、債券の割合が高い投資信託がおすすめです。収入を補てんすることを考えている場合は、1年・半年に1回配当や利子を受け取れる債券や高配当の株式が良いでしょう。上記の資産に分散投資できる、複合型の投資信託もあります。

投資信託は、運用方針でも分類されます。目標とする指標の動きに沿って運用するインデックスファンドと、指標以上の利益を目指すアクティブファンドです。堅実に運用したい場合は、インデックスファンドをおすすめします。値上がり益を期待する場合は、アクティブファンドが良いでしょう。

投資信託を検討する際は、信託報酬の比較も忘れてはいけません。信託報酬は運用会社に支払う手数料で、資産から控除されます。手元により多く残すために、信託報酬が安い商品を選びましょう。

上記を踏まえたうえで、おすすめの銘柄をいくつか紹介します。いずれも、指標の動きに沿った運用を行うインデックスファンドです。

商品名信託報酬特徴
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)0.05775%・通称「オルカン」
・成長が著しい新興国の株式を含めた全世界の株式を組み入れている
eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)0.143%・日経平均(日経225)に連動
・「日経225マザーファンド」を使って国内の株式に投資
SBI・V・S&P500インデクス・ファンド0.0938%・米国S&P500に連動
・マイクロソフトやアップル、アマゾンなど米国の主要銘柄に投資
ニッセイTOPIXインデックスファンド0.143%・TOPIX(東証株価指数)に連動
・国内の金融商品取引所上場株式等に投資
三井住友・DC年金バランス30(債券重点型)0.242%・国内外の株式と公社債4種類を組み入れた、バランス型投資信託
・国内債券55%、株式30%
TOPIXを含めた独自の指標に連動するよう運用

iDeCoやNISAを活用する際はリスクも把握しよう

iDeCoやNISAは投資なので、いくつかのリスクがあります。

経済や市場の影響で投資信託の価格が急下落した場合、投資総額より残高が少なくなる「元本割れ」になるかもしれません。株式の配当益を期待する商品の場合は、企業の業績により配当が少なくなったり、ゼロになったりする可能性もあります。また、市場の需要と供給が一致せず、希望する価格より安く売却することも想定されるでしょう。

iDeCoやNISAでは、投資額をすべて受け取れるとは限りません。余剰金をすべてiDeCoやNISAに投資した場合、資金が大幅に減ってしまう可能性もあります。また、配当が減少、もしくはゼロになることで、期待していた配当益を受け取れないケースもあるかもしれません。

このようなリスクを防ぐために、財形貯蓄や定期預金など別の方法で貯蓄を行い、資金を分散しておくことも大切です。

iDeCoとNISAは目的に応じて併用もしくは使い分けを

iDeCoとNISAはそれぞれ特徴が異なる商品であり、併用が可能です。老後資金を多く受け取りたい、あるいは節税したい場合は、併用をおすすめします。

併用をおすすめしない場合もあります。投資の目的が主に老後資金である場合は、iDeCoがおすすめです。収入が少ない場合はNISAのみに絞ると良いでしょう。

iDeCoとNISAには違いがあることから、年代や目的によってもおすすめする商品が変わります。また、利用しやすい投資である反面、リスクがあることも忘れてはいけません。

本記事を参考に自分に合った商品を選び、金銭的な余裕を生む資産運用を行っていきましょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。