- 更新日 : 2023年8月10日
海外FXにかかる税金とは?タイミングや計算式を解説
海外FXは、海外に拠点を持ち、海外で登録されているFX会社での取引のことです(一般的に日本法人を設立しているFX会社は海外FXから除きます)。
国内FXは、個人の場合レバレッジ25倍までと規制を受けますが、海外FXは日本国内より高いレバレッジでの取引が可能です。少額でより大きな取引ができるなどの違いがあるほか、税金面についても違いがあります。
今回は、海外FXで税金がかかるタイミングや計算方法、いくらから税金がかかるか、海外FXの確定申告の方法まで解説していきます。
目次
海外FXでも税金はかかる?
個人に課税される所得税の範囲は、非永住者以外の居住者、非永住者、非居住者で異なります。このうち、非永住者以外の居住者とは、非永住者ではなく、日本国内に住所がある方、もしくは現在までに引き続き1年以上日本国内に居所がある方のことです。
日本国内に住む多くの方が非永住者以外の居住者に該当し、これらの方は国内だけでなく、国外で生じた所得についても課税の義務を負うことになります。
つまり、海外FXでも、基本的には、国外で生じた所得として税金が課されるということです。ただし、海外FXで年間の取引額に損失が出ている場合は、所得(収入から必要経費を差し引いた残額で利益のようなもの)が発生しないことから税金はかかりません。
海外FXの税金はいくらから?
海外FXの所得について、いくらから税金がかかるかは、海外FXによる所得のほか、どのような所得がほかにあるかなどで異なってきます。
例えば、会社員で給与所得を得ていて海外FXによる利益がある場合(※会社からの給与と海外FXによる所得以外ないものとします)、海外FXの所得(収入-必要経費の額)が20万円を超えるときは確定申告が必要です。確定申告により海外FXの所得に対して所得税を納税することになります。
個人事業主など、給与所得者以外の場合は、海外FXの所得とその他の所得が所得控除を超えるかどうかが目安になります。例えば、適用される所得控除が基礎控除の48万円のみというケースでは、海外FXの所得を含めた各種の所得の合計が48万円を超える場合、確定申告および所得税の納税が必要です。
なお、上記は所得税についての説明であり、住民税は計算が異なります。例えば、会社員で海外FXによる所得が20万円以下であっても、海外FXの所得に対して税金がかかることもあります。一方で、海外FXの所得が20万円を超える場合でも、合計所得が一定基準以下のときは住民税非課税となり住民税がかからないケースもあります。
海外FXの税金がかかるタイミングは?
個人の場合、買いポジションのまま、あるいは売りポジションのまま持ち続けている未決済ポジションの含み益については、課税の対象になりません。反対売買を行い決済が確定したときに、為替差益やスワップポイント受取益について課税が生じることになります。
そのため、個人の保有するポジションに利益が出ていたとしても、保有している間に税金は発生せず、決済時まで課税が繰り延べられることになります。
なお、未決済ポジションの取り扱いについては、個人と法人で異なる点に注意が必要です。法人の場合、原則として期末時の価値で換算する必要があるため、未決済の含み損益を事業年度末で認識し、翌年に洗い替え処理(損益を前期とは反対に計上すること)を行うことになります。
海外FXの税金の計算方法は?
海外FXの所得は総合課税に分類される所得で、累進課税となるため、そのほかの所得の合計額や所得控除の金額に応じて税率が変わってきます。ここでは、具体的な計算方法を見るために、2つのケースを紹介します。
【ケース1】
会社員で、給与所得648万円、海外FXの所得100万円、所得控除48万円の場合
総所得金額:648万円+100万円=748万円
課税所得:748万円-48万円=700万円
所得税額:700万円×23%-63.6万円=97.4万円
【ケース2】
個人事業主で、事業所得148万円、海外FXの所得50万円、所得控除48万円の場合
総所得金額:148万円+50万円=198万円
課税所得:198万円-48万円=150万円
所得税額:150万円×5%=7.5万円
※ケース1とケース2では、所得税のほか、住民税約10%と復興特別所得税(所得税の2.1%)がかかります。所得税の計算は以下の速算表を参照。
【所得税の速算表】
課税所得金額(A) | 所得税の計算 |
---|---|
195万円以下 | (A)×5% |
190万円超330万円以下 | (A)×10%-97,500円 |
330万円超695万円以下 | (A)×20%-427,500円 |
695万円超900万円以下 | (A)×23%-636,000円 |
900万円超1,800万円以下 | (A)×33%-1,536,000円 |
1,800万円超4,000万円以下 | (A)×40%-2,796,000円 |
4,000万円超 | (A)×45%-4,796,000円 |
参考:「No.2260 所得税の税率|国税庁」をもとに作成
海外FXと国内FXの税金の違いとは?
国内FXと海外FXは、いずれも所得税の計算上、雑所得に区分されますが、課税方法が異なります。
海外FXは、先述したように総合課税となるため、他の総合課税である所得を合算した金額から所得控除を行った、課税所得に対応する税率が適用されます。
一方、国内FXは申告分離課税で、税率は一定です。国内FXの所得に対して、15%の所得税と5%の住民税に加え、復興特別所得税(所得税の2.1%)が加わるため、全体で所得に対して20.315%の課税になります。
総合課税の課税所得が少ない場合は海外FXの方が税率的に有利ですが、多い場合は、同じ利益額でも海外FXの方が多く税金を課されます。住民税や復興特別所得税を加味すると、課税所得330万円を超えると海外FXの方が税金負担は重くなる可能性があるでしょう。
海外FXの確定申告はどうすればいい?
海外FXで利益が出て確定申告する場合のフローを簡単に説明します。
海外FXの収入や必要経費に関する資料を集めておく
海外FXは雑所得に分類され、総収入金額から必要経費を控除した金額を所得として税金を計算します。適切に申告できるようにするには、海外FXに関する収入や必要経費に関する資料を集めておくことが重要です。
まず、年間の損益がわかる年間取引報告書は、海外FX証券会社ごとに取得しておきましょう。
海外FXの必要経費は、海外FXを行うにあたって必要になる経費のことです。例えば、海外FXで成績を上げるために参加した海外FXのセミナー代などが含まれます。
資料から収入や経費、所得を計算する
集めた資料をもとに、海外FXの取引にかかわる収入や必要経費を計算し、所得金額を計算します。複数の海外FX証券会社を利用している場合は、合算して雑所得の金額を計算していきます。
海外FXの所得金額がマイナスになる場合(損失が出ている場合や必要経費が収入を上回る場合)は、確定申告の必要はありません。
なお、雑所得は他の所得との損益通算(赤字と黒字を相殺すること)が認められていないものの、雑所得内であれば損益通算ができます。副業などで雑所得がある場合は海外FXの損失と損益通算できるので、この場合は確定申告が必要です。
確定申告書に記載していく
金額がわかったら、確定申告書第一表の「収入金額等」と「所得金額等」にある「雑」の部分にそれぞれの金額を記入します。海外FXの所得は、基本的には雑所得の「その他」です(営利を目的に継続的に行う副業の収入は「業務」に区分されます)。
海外FXの所得以外にもその他の雑所得がある場合は合算した金額となりますので注意しましょう。
他に必要な事項を記載して提出する
確定申告書の住所や氏名欄に必要事項を記入するほか、ほかに所得や所得控除など記入が必要な項目があるときは、確定申告書の必要箇所に記入を行います。
例えば、会社員で、給与所得以外に海外FXの所得がある人が確定申告をする場合、給与収入や給与所得欄への記入も必要です。詳細がわかる源泉徴収票(会社から発行される書類)を用意しておきましょう。
必要事項の記載が終わったら税務署に確定申告書や添付書類を提出します。確定申告書は手書きで作成し、郵送や窓口で提出することもできます。電子申告にも対応しているので、パソコンなどから確定申告書などの作成コーナーにアクセスし、必要事項を入力してシステムから提出することも可能です。
海外FXと国内FXは税金関係が異なる
海外FXによる所得も、国内FXによる所得も、所得の種類のうち雑所得に分類されますが、課税の方法がそれぞれ異なります。国内FXは分離課税で決まった税率が適用されます、海外FXは総合課税になるため、課税所得の額で税率が異なる点に注意が必要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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