- 作成日 : 2024年7月12日
夫婦の年金受給額の平均は?年金額を上げる方法とは?
夫婦の年金受給額の平均は、国民年金と厚生年金を合わせた金額であり、2022(令和4)年度の厚生労働省の調査では、男性が16万7,388円、女性が10万9,165円でした。
この記事では、老後にいくらあれば安心か、必要な金額や年金額を上げる方法について解説します。老後を安心して過ごすためには、年金だけでなく、自分で用意する老後資金も必要であり、早めに計画を立てることが大切です。
目次
夫婦の年金受給額の平均
私たちが老後を迎えたとき、年金は生活を支える重要な収入源となります。特に夫婦にとって、2人の年金受給額は、ゆとりある暮らしを送るために欠かせません。ここでは、日本における夫婦の年金受給額の平均について詳しく見ていきましょう。
まず、日本の公的年金制度は、国民年金と厚生年金の2つの制度で成り立っています。国民年金は、日本在住の全ての20歳以上60歳未満を対象とした年金制度です。一方、厚生年金は、会社員や公務員が加入する年金制度であり、国民年金に上乗せする形で支給されます。
国民年金の場合
国民年金の受給額は、基準月額と加入期間とによって決まります。なお、基準月額は、毎年厚生労働省によって決定され、加入期間は、20歳から60歳までの40年間を基準として計算されます。
では、実際の夫婦の年金受給額の平均はどのくらいなのでしょうか。厚生労働省が発表した「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金の平均受給額は月額5万6,316円となっています。
ただし、これはあくまでも平均値であり、実際の受給額は、それぞれの加入期間や収入によって異なるので注意が必要です。
厚生年金の場合
厚生年金は公務員や70歳未満の会社員などといった第2号被保険者が加入する公的年金制度であり、国民年金に上乗せして支払われます。厚生年金の受給額は、加入期間と平均標準報酬月額によって決まります。平均標準報酬月額は、加入期間中の報酬の平均額を指し、これに加入期間をかけて算出されます。
厚生労働省が後悔している「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金と国民年金を合算した平均受給額は、男性は約17万円、女性は約11万円です。ただし、個々の受給額が異なっているので、こちらの数値はあくまでも目安となります。
夫婦の年金額を上げる方法とは
老後の生活に余裕を持たせるなら、できるだけ多くの年金を受け取ることが重要です。ここでは、夫婦の年金額を上げるための具体的な方法について解説します。
国民年金保険料の追納制度を利用する
国民年金保険料の追納とは、国民年金の保険料の免除や猶予を受けていた期間の国民年金保険料を、さかのぼって納付することです。追納をすることで、老齢基礎年金の受給額を増やせます。
ただし、追納できるのは、追納の承認が下りた月から10年以内の免除期間などに限られています。追納したいと思った時期の直前に追納申込書を提出すると、追納できないことがあるため、早めに提出することが肝心です。
国民年金の任意加入制度を活用する
国民年金の任意加入制度は、国民年金の加入期間が足りずに、満額の老齢基礎年金を受け取れない方や、受給資格を得られない方を支援するための制度です。日本在住の60歳から65歳までの方が該当し、任意で加入できます。
ただし、受給資格が得られない場合は、70歳まで加入が可能です。任意加入することで、国民年金保険料の支払い期間を増やし、将来受け取る老齢基礎年金の額を増やせます。
給料を上げて年金保険料を多く支払う
老齢厚生年金の受給額は、加入期間と平均標準報酬月額によって決定します。将来の老齢厚生年金受給額を増やしたいなら、現役時代の給料を上げることが一つの方法といえるでしょう。
加入期間中の報酬の平均額を指す平均標準報酬月額に加入期間を掛け合わせると、年金額が計算されます。つまり、給料が高ければ高いほど、将来もらえる老齢厚生年金額も増えるということです。
ただし、年金の計算に使われる報酬には上限があります。基本給や通勤手当、住宅手当、残業手当、役付き手当、日当手当、家族手当、休職手当などが対象になります。臨時的に支給される慶弔見舞金などは含まれません。
繰り下げて年金を受け取る
年金は原則として65歳から受給が開始されますが、月単位で繰り下げの指定が可能です。受給を1カ月繰り下げるごとに、年金額が0.7%ずつ増額するという流れとなっています。例えば、1年間繰り下げると、年金額は8.4%(0.7%×12カ月)増えるのです。
この制度を有効利用すれば、将来もらえる年金額を増せますが、いくつか注意点もあります。
まず、年金の受給開始が遅くなるため、その間の生活費を管理して、使うかを考えておきましょう。他にも、自分の健康状態も考えなくてはなりません。年金の受給額が増えるということは、それに伴い徴収される税金や健康保険料も増えることになるため、注意が必要です。
さらに、原則として一度繰り下げ受給を選択すると、後から変更ができません。受給時期の決定は、計画性を持って慎重に考える必要があります。自分の老後の生活設計に合わせて、繰り下げ受給を活用するかどうかを検討してみてください。
厚生年金に加入して働く
特に、専業主婦(主夫)といった配偶者の扶養家族になっていた人が会社員として働くことで、将来の年金額を増せる見込みがあります。厚生年金保険に加入することで、保険料が給与に比例して計算され、その結果として将来受け取れる年金額も増加します。
ただし、厚生年金保険に加入するには、労働時間が週20時間以上、賃金が月8万8,000円以上、当初雇用期間が2カ月以内でも当該期間を過ぎても雇用されることが見込まれている、学生ではない、勤務する企業の被保険者数が101人以上(※2024年10月以降、被保険者数51人以上の企業などに変更予定)ということが一定の条件となります。
働きながら年金を受給する
老齢年金を受給できる年齢や条件に達しても、70歳まで厚生年金保険に加入し続けることができます。厚生年金保険に加入した期間は、在職定時改定・退職改定により年金額の計算に反映され、受け取る年金額が増える見込みがあります。
ただし、厚生年金保険に加入しながら働く場合や、70歳以降も厚生年金保険の加入事業所で働く場合は、注意が必要です。
他にも基本月額と給与の1カ月の合計があたり50万円(※2024年度の支給停止調整額)を超える場合、特別支給の老齢厚生年金または老齢厚生年金の一部または全額が支給の対象から外れるので、注意をしましょう。
iDeCoを活用する
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分が拠出した掛金を自分の選んだ金融商品で運用し、資産を形成する年金制度です。20歳以上60歳未満の全ての人が加入対象であり、条件を満たせば65歳まで加入できます。掛金は加入期間の間、拠出可能で、原則として60歳以降に貯まった資産を一時金もしくは年金として受け取り可能です。受け取り開始年齢は60歳から75歳の間で自由に選べます。
iDeCoの大きな特徴は、税制上の優遇措置が講じられていることです。具体的には、掛金、運用益、そして給付を受け取るときに、税制上のメリットがあります。掛金を拠出した際には、掛金全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となり、加入期間の運用益は非課税で再投資されます。そして、受け取りの際には、受け取り方法によって退職所得控除もしくは公的年金等控除の対象になります。
iDeCo口座で投資した金融商品から得られる利益は非課税で再投資されるため、効率的に資産を増やすことができます。
ただし、iDeCoには注意点もあります。原則として60歳にならないと資産を引き出すことができないため、長期的な資産形成の手段として捉える必要があることです。逆に考えると60歳まで引き出せないため、老後資金を着実に築けます。
また、運用によるリスクもあるため、自分の知識や経験、リスク許容度に合わせて、適切な金融商品を選ぶ必要があります。
iDeCoを活用することで、自分の老後資金を増やすことができます。これは、公的年金に加えて、私的年金を充実させることにつながります。夫婦で iDeCoに加入し、計画的に資産を形成していくことで、より豊かな老後生活を送ることが可能となるでしょう。
新NISAを活用する
新NISAは、新NISA口座内での投資で得た利益に税金がかからない制度であり、一定枠までの利益が非課税となります。通常、株や投資信託などを運用して利益が出た場合、その利益には約20%の税金が課されますが、新NISA口座を活用することで、その税金をなしにすることができます。
新NISAの大きな特徴として挙げられるのが、非課税保有期間が無期限となったことです。本制度の廃止や改正がない限り、半永久的に非課税で保有することができるので、長期的な資産形成が可能となります。新NISAはiDeCoと異なり、いつでも資金を引き出せるので、子どもの教育費など緊急でまとまったお金が必要なときにも何かと助かるでしょう。
また、旧制度ではつみたてNISAと一般NISAのいずれかを選択しなければなりませんでしたが、新NISAでは「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の併用も可能となりました。年間の非課税投資枠上限は「成長投資枠」が240万円、「つみたて投資枠」が120万円なので、最大で年間360万円の非課税投資枠を利用できるのです。ただし、投資枠には上限が設けられており、1,800万円(※そのうち「成長投資枠」は1,200万円)までと決まっている点に注意しておきましょう。
新NISAを活用することで、税金や口座からの引き出しを気にすることなく、効率的に資産を増やすことができます。夫婦で新NISAを活用し、計画的に資産を形成していくことで、より豊かな老後生活を送ることが可能となるでしょう。
ただし、新NISAを活用する際には、投資に関する知識や経験、リスク許容度を考慮し、自分に合った金融商品を選ぶ必要があります。投資には常にリスクが伴うことを理解し、無理のない範囲で行うことが肝心なので、、緊急予備資金を除いた余剰資金の中で運用しましょう。
夫婦の老後資金はいくらあれば安心?
老後を安心して過ごすためには、年金だけでなく、自分で用意する資金も必要です。この資金のことを「老後資金」と呼びます。
老後資金の必要額は、生活状況や家族構成、ライフスタイルによって異なりますが、夫婦2人の場合は約5,000万円、単身者の場合でも約3,000万円以上が一般的な目安とされています。
また、別の調査では、夫婦が年金以外に用意すべき老後資金の目安は約4,000万円以上とされています。この金額は、年金だけではカバーできない生活費や医療費、介護費用などを考慮したものです。老後の資金ついては、あくまでも目安なので、参考程度にとどめておきましょう。
今後の物価上昇や医療費負担の増加などを考慮し、老後資金には余裕を持たせておく必要があること意識しておきましょう。特に将来介護施設を利用しようと考えている場合、入居費用として数千万円のお金が必要なケースもあります。
老後資金の主な内訳は、以下のようなものがあります。
- 生活費:食費、光熱費、通信費、交通費、教養娯楽費など、日々の生活に必要な費用
- 医療費:健康保険が適用されない自己負担分の医療費や、薬代、健康管理のための費用など
- 介護費:自宅での介護や施設での介護にかかる費用
- その他の支出:住宅の修繕費や車の買い替え、子どもの結婚費用やお祝い、旅行などの特別な支出
老後資金を計画する際には、これらの費用を考慮しながら、自分のライフスタイルや希望する生活水準に合わせて資金を準備することが肝心です。公的年金だけに頼るのではなく、早めに老後資金の計画を立て、必要な資金を確保しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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