- 作成日 : 2024年7月12日
日本人の生涯年収はどれくらい?増やし方は?
生涯年収は、個人が一生の間に稼ぐことが見込まれる年収の総額を指します。日本全体の平均生涯年収は約2億2,112万円で、男性は約2億2,500万円、女性は約1億7,500万円です。この記事では、生涯年収に大きな影響を与える要因について詳しく解説し、生涯年収を最大限に高めるための具体的な方策をお伝えします。
目次
日本人の平均生涯年収
生涯年収とは、人々が生涯にわたって得る収入の総額のことを指します。具体的には、就職してから定年退職するまでの間に得られる年収の合計額を指します。ただ、収入とはあくまでも税込みの収入であり、実際の手取額は収入から税金や社会保険料が引かれた額だと認識しておきましょう。
日本全体の平均生涯年収
民間機関が実施した調査によると、2023年の各年代の平均年収をもとに算出した日本全体の生涯年収(生涯賃金)は約2億2,112万円で、前年と比べて544万円増加しました。前年2022年の日本全体の推定生涯年収(生涯賃金)は約2億1,568万円です。
出典:doda
男性の平均生涯年収
労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2023 労働統計加工指標集 2023」のデータによると、男性の平均生涯年収は約2億2,500万円でした。これは、高校卒の生涯年収2億円と、大学卒の生涯年収2億5,000万円を平均したものです。ただし、これは収入の総額であり、手取りではありません。収入の総額から社会保険料や所得税・住民税などで2〜3割程度差し引かれたものが手取りとなります。
女性の平均生涯年収
同じく2023年のデータによると、女性の平均生涯年収は約1億7,500万円です。高校卒の1億5,000万円と大学卒の2億円の平均値を算出したものです。女性の場合、出産や育児で仕事を離れる期間がある場合があるため、男性と比べると平均生涯年収が少ない状態となっています。
学歴別の生涯年収
2023年の学歴別の平均生涯年収を見ていきましょう。なお、対象とする企業規模は大企業(1,000人以上)とします。また、金額には退職金を含めない定年までの収入を記載しています。
学歴 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
高校卒 | 2億3,000万円 | 1億4,92万円 |
高専・短大卒 | 2億2,800万円 | 1億7,200万円 |
大学卒 | 2億4,700万円 | 1億9,800万円 |
出典
労働政策研究・研修機構(JILPT)|ユースフル労働統計2023 ―労働統計加工指標集―をもとに表作成
上の表の通り、学歴が高いほど生涯年収が高くなる傾向です。具体的には、高校卒、高専・短大卒、大学卒の順に生涯年収が増加しています。これは一般的に、高い学歴を持つ人がより高いスキルや知識を持っていると見なされ、それに対して高い給与が支払われるためと考えられます。
ただし、同じ学歴レベルを比較すると、男性の生涯年収の方が女性よりも高くなっています。特に大学卒では、男性が2億4,700万円なのに対し、女性は1億9,800万円と、約5,000万円の開きがあります。これは、一部の職種や業種で男性が優先される傾向があることや、女性がキャリアを中断する可能性が高い(例:出産や育児のため)ことが原因だと考えられます。
企業規模別の生涯年収
企業規模別の大卒男女の生涯年収についてみていきましょう。
企業の規模 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
大企業(1,000人以上) | 2億4,700万円 | 2億3,090万円 |
中堅企業(100~999人) | 2億3,460万円 | 1億9,100万円 |
中小企業(10~99人) | 1億9,850万円 | 1億6,520万円 |
出典
労働政策研究・研修機構(JILPT)|ユースフル労働統計2023 ―労働統計加工指標集―をもとに表作成
男性の企業規模別生涯年収をみると、大企業(1,000人以上)では2億4,700万円、中堅企業(100~999人)で2億3,460万円、中小企業(10~99人)で1億9,850万円となっています。つまり、企業規模が大きくなるほど男性の生涯年収が高くなる傾向がみられます。
一方、女性の企業規模別生涯年収は、大企業で2億3,090万円、中堅企業で1億9,100万円、中小企業で1億6,520万円となっています。男性ほど顕著ではありませんが、企業規模が大きくなるほど生涯年収が高くなる傾向にあります。
生涯年収の増やし方
生涯年収を高める主な方法には以下の通りです。
仕事を長く続ける
長期にわたって安定して就業し続けることは、生涯年収を最大限高めるための不可欠な条件といえます。一度退職してしまうと、その後の再就職時の給与水準が低下する傾向にあるため、できるだけ途中で辞めることなく働き続けることが重要です。
特に女性の場合、出産や育児を機に一時的に退職するケースがよく見られます。生涯年収を高めたいというのであれば、キャリアを中断する期間と育児休暇の取得を最小限に抑える選択肢も視野に入れておきましょう。
また、会社などの雇用主側も従業員の継続雇用に向けた支援体制を充実させることが求められています。育児・介護などの事情を抱える従業員に対して、柔軟な勤務形態の提供や社会保険などの待遇面での配慮など、総合的な環境づくりが不可欠です。企業によっては支援制度を取り入れているところもありますので、できるなら活用しましょう。
スキルアップ、資格取得
高度なスキルや専門的な知識を身につけることで、個人の市場価値を高めることができます。例えば、プログラミングやデータ分析、マーケティングなどの最新のビジネススキルを習得すれば、より高い給与水準が期待できるでしょう。またこれらのスキルは企業にとっても重要なニーズがあるため、スキルアップに励むことで、より高い評価や昇進につながる可能性も高まります。
同様に、さまざまな資格取得も生涯年収向上に寄与します。公認会計士や弁護士、医師などの高度な資格はもちろん、IT系やファイナンス、マネジメントなどの分野の資格取得も給与水準の改善につながるでしょう。このような専門性の高い資格を保有することで、企業から高い評価を受けやすくなり、ひいては生涯賃金の増加につながるのです。
ただし、スキルアップや資格取得には時間とコストがかかるため、個人の事情に応じた効果的な学習方法を見つけ出すことが重要です。企業による研修制度の活用や、e-ラーニングなどのオンラインツールの活用などをしながら、自分に適切な方法を見つけて取り組みましょう。
管理職への昇進
生涯年収を高めるうえで、管理職への昇進も重要な方策の一つです。一般的に、管理職の賃金水準は一般社員よりも格段に高くなっています。例えば、部長クラスの年収は1,000万円を超えるケースが多く見られるなど、管理職になれば大幅な給与アップが期待できるでしょう。つまり、長期的に見れば、管理職への昇進は生涯年収を大きく押し上げる大きな要因となるのです。
特に大企業においては、管理職登用の機会が多く、キャリア開発を精力的に行えば、上位の管理職に就ける可能性が高くなります。部署の責任者や事業部長、さらには役員クラスへと昇進していけば、高い年収を得られるようになるのです。
一方で、管理職昇進には一定の能力や経験が必要とされるため、計画的なスキルアップや業績向上に努める必要があります。上司から高い評価を得て、適切なタイミングで昇進の機会をつかむことが肝心です。
副業をする
近年、副業解禁の流れが広がる中で、本業以外の収入源を持つことで、個人の生涯年収を押し上げることができます。自分の専門性や得意分野を活かした副業を見つけ、それを継続的に行うことで、本業の収入に加えて得られる副収入によって、総合的な生涯年収を底上げできます。
特に、IT関連スキルや専門的な知識・技術を持つ労働者にとっては、フリーランスとしての副業が有効な選択肢となります。自らのスキルを最大限に活かし、複数の案件を掛け持ちすることで、本業以上の収入を得られる可能性があります。
また、管理部門の経験者が、コンサルティングや研修講師などの副業に就くケースも少なくありません。これらは高い時給設定が可能な仕事であり、生涯年収の底上げが期待できるでしょう。
ただし、副業にはリスクもあるため、本業への影響がないよう、時間管理にも気をつける必要があります。また、会社が副業を禁止している場合は、絶対に副業は行わないようにしましょう。発覚した場合、就業規定違反として何らかの処分の対象になってしまいます。
投資で資産を増やす
生涯年収を向上させるには、単に給与を上げるだけでなく、自分の資産形成を図ってみるのもよいでしょう。適切な投資を行うことで、給与以外の収入源を生み出し、結果として総資産を大きくすることができます。。
具体的な投資方法としては、株式・債券・投資信託などの購入と合わせ、新NISAやiDeCoなどの税制優遇制度の活用も有効です。2024年1月から開始された制度「新NISA」は、非課税の保有期間が無期限となり、非課税上限額が拡大されました。これまでの「一般NISA」と「つみたてNISA」が一本化され、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」が設けられました。「成長投資枠」と「つみたて投資枠」併用可能で、年間投資枠は、「つみたて投資枠」が120万円、「成長投資枠」が240万円となっています。つまり、年間で最大360万円の非課税投資枠が用意されているのです。生涯非課税で運用できるため、ぜひ活用しましょう。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、国民年金保険や厚生年金保険などの公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金の一つです。自分が拠出した掛金を運用し、資産を形成する私的年金制度で、税制上の優遇があります。加入は任意で、60歳から65歳以降に一時金もしくは年金形式で資産を受け取れますが、原則として60歳以降は資産を引き出せません。
このように、適切な投資と税制優遇制度の活用によって、給与以外の収入源を確保し、生涯収入の向上につなげられます。
転職する
生涯年収を最大限高めるためには、「転職」も有効な選択肢の一つです。同じ企業に長く勤め続けるよりも、適切なタイミングで転職を行うことで、自分の市場価値を高め、給与水準の向上につなげられる可能性があります。
中には、転職を重ねることで昇進やスキルアップの機会が増え、結果的に年収が向上する傾向にあります。特に若手の頃に転職を経験すると、給与面での大きなメリットが期待できます。現職の給与水準に満足できないなら、転職を検討し、自分に合った新しい環境を見つけてみましょう。
転職にはリスクも伴うため、慎重に検討する必要があります。新しい職場での人間関係の構築や、業務内容の理解などを柔軟に対応しなくてはなりません。以上のことを理解したうえで、転職をするか、しないかを判断しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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