- 作成日 : 2024年4月19日
住民税はいつから支払う?計算式や減らす方法
住民税は、地方税の一つで、前年の所得を基に計算されます。ここでは、住民税の徴収方法や支払い方法、月収別の一般的な住民税額や計算方法、住民税を減らす方法について解説します。
目次
住民税はいつから引かれるのか
住民税は、原則として前年の所得を基に計算されます。そのため、2023年中に得た所得に基づく住民税は、2024年の6月から徴収が開始されます。これは、住民税が所得年度の翌年度に「前年度分」として徴収されるためです。
支払いスケジュールの例
給与所得者の場合、住民税は毎月の給与から自動的に天引きされ、12回に分けて支払います。一方、自営業者やフリーランスなどは送られてきた納税通知書に記載されている指定された期日までに、年4回(6月、8月、10月、翌年1月)に分割して支払うことが一般的です。
住民税は毎月引かれるのか
住民税は、原則として毎月引かれます。しかし、その具体的な徴収方法は、納税者の所得の種類や選択した支払い方法によって異なります。
給与所得者の場合
給与所得者の場合、住民税は給与からの天引き(源泉徴収)によって徴収されます。この方法を「特別徴収」といい、給与支払いの際に自動的に住民税が差し引かれます。通常、この特別徴収は毎月行われるため、給与所得者は住民税を毎月支払っていることになります。
自営業者やフリーランスの場合
自営業者やフリーランスなど、給与所得以外の収入が主である人々は、「普通徴収」によって住民税を納付します。これは、市区町村から送付される納税通知書に従って、納税者が直接市区町村に住民税を納付する方法です。普通徴収の場合、支払いは通常、年4回(6月、8月、10月、翌年1月)の分割払いとなりますが、希望に応じて毎月の分割払いに変更することも可能です。
社会人1年目の場合
社会人1年目は前年度の所得が一定以上でなければ住民税の納付はありません。会社勤めの場合、社会人2年目の6月から住民税が給与から天引きされます。個人事業主の場合も同様に、事業を立ち上げて1年目の確定申告をした翌年の6月から課税対象になります。
ただし、社会人1年目でも前年のアルバイトなどでの所得が一定の金額を超える場合は、社会人1年目から住民税が課税されることがあります。また、一定以上の所得に満たない場合や生活扶助を受けている場合、障がい者、未成年者、寡婦(夫)またはひとり親などの場合は住民税が課税されないケースがあります。
住民税の徴収方法
住民税の徴収方法は、主に「特別徴収」と「普通徴収」の2つです。
特別徴収(給与からの天引き)
特別徴収とは、給与所得者に適用される徴収方法です。この方法では、給与支払者(例:雇用主)が給与から住民税を天引きし、納税者に代わって直接市区町村に納付します。この方法の最大の利点は、納税者が自ら納税の手続きを行う必要がないことです。住民税が自動的に給与から差し引かれるため、納税の手間が簡単になります。
普通徴収(自己による納税)
普通徴収は、自営業者、フリーランス、年金受給者、またはその他の非給与所得者に適用される徴収方法です。この方法では、納税者が市区町村から送付される納税通知書に基づいて、自ら納税の手続きを行います。通常、納税は年4回の分割払いで行われますが、市区町村によっては月払いや一括払いも選択できます。
住民税の計算式
住民税は、所得にかかわらず定額で課税される「均等割」と所得に応じて課税される「所得割」から成り立っています。
住民税の総額は、以下の式によって計算されます。
- 均等割均等割は、所得にかかわらず定額で課税され市区町村によって異なりますが、5,000円程度に設定している自治体が多くみられます。
- 所得額所得額は、前年の収入から必要経費を差し引いた金額です。
- 控除額基礎控除や社会保険料控除などの所得控除が該当し、これらを所得金額から差し引くことができます。
- 所得割率所得割率は、所得に対して一律10%(道府県民税が4%、市町村民税が6%)です。
住民税を減らす方法
住民税を減らすには、以下の方法が挙げられます。
ふるさと納税を利用する
ふるさと納税は、特定の地域に寄付をすることで、寄付した金額のうち、自己負担額である2,000円を超える部分について所得税と住民税から控除されます。ただし、寄付額には年収や家族構成に応じた上限があります。上限を超えた金額については全て自己負担になりますので、その年の収入がどのくらいになるかについて事前に把握したうえで寄付を行うようにしましょう。
所得控除を最大限活用する
所得控除を活用することで、課税される所得を減らし、結果的に住民税を軽減できます。以下は、所得控除の主な例です。
- 基礎控除:全ての納税者が適用される控除で、控除額は43万円です。
- 配偶者控除:配偶者がいて、その年収が一定額以下の場合に適用される控除です。
- 扶養控除:扶養している家族がいる場合に適用されます。
- 社会保険料控除:健康保険や年金保険の保険料を払っている場合、その額が控除されます。
- 生命保険料控除:生命保険や個人年金保険の保険料を支払っている場合に適用される控除です。
例えば、年間で生命保険料に10万円、健康保険料に15万円を支払っている場合、支払った保険料に応じた生命保険料控除が適用されます。結果として住民税を計算するうえでの上限である7万円までが控除されます。
小規模企業共済等を利用する
小規模企業共済制度は、中小企業者や自営業者、個人事業主が将来の退職金を積み立てるための公的な制度です。小規模企業共済に加入し、掛金を納付すると、その掛金が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となります。これにより、所得税と住民税が軽減される効果があります。
小規模企業共済の主な特徴
- 節税効果:共済金の掛金は、所得税や住民税の計算上、必要経費として扱われます。これにより、掛金として支払った分だけ所得金額が減少し、税負担が軽減されます。
- 退職金の準備:共済契約を解約することで、積立金として納めた掛金とそれに上乗せされる利息(共済金)を退職金として受け取ることができます。
- 柔軟な掛金設定:掛金は月額数千円から数万円の範囲で自由に設定でき、経済状況に応じて変更することが可能です。
- 所得補償のオプション:加入者が事故や病気で働けなくなった場合に、所得補償給付金を受け取れるオプションもあります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用する
iDeCoは、将来のために年金資金を積み立てることができる個人向けの公的な年金制度です。iDeCoに加入し掛金を拠出すると、その掛金全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となり、所得税と住民税が軽減されます。
また、iDeCoで得られた運用益については非課税扱いです。
iDeCoへの加入資格
- 会社員、公務員などの厚生年金加入者で要件を満たす人
- 自営業者、フリーランスなどの国民年金第1号被保険者
- パートタイム、アルバイトなどの国民年金第3号被保険者(配偶者の扶養に入っている方)
例として、事業所得500万円のフリーランスが月額2万円をiDeCoに拠出する場合、年間24万円が所得控除され、住民税を計算するうえで課税所得金額も同様に減少します。
月収別の一般的な住民税額
月収20万円、25万円、30万円の場合、住民税はどれくらいになるのでしょうか。住民税は、所得割と均等割の合計で計算されます。ここでは、東京都など標準税率の場合を例にして解説します。
所得割は税率10%(道府県民税が4%、市区町村民税が6%)、均等割は、道府県民税が1,500円、市区町村民税が3,500円の合計5,000円で計算します。
また、以下の計算にあたっては、30代独身(給与所得者)とし、所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみと仮定します。
月収 | 20万円 | 25万円 | 30万円 |
---|---|---|---|
年収 | 240万円 | 300万円 | 360万円 |
給与所得控除額 | 80万円 | 98万円 | 116万円 |
所得金額 | 160万円 | 202万円 | 244万円 |
社会保険料控除(※) | 36万円 | 45万円 | 54万円 |
基礎控除 | 43万円 | ||
課税所得 | 81万円 | 114万円 | 147円 |
所得割の税率 | 10% | ||
所得割の税額 | 8.1万円 | 11.4万円 | 14.7万円 |
均等割 | 5,000円 | ||
住民税合計 | 8.6万円 | 11.9万円 | 15.2万円 |
月額住民税 | 約7,166円 | 約9,166 円 | 約1万2,666円 |
※社会保険料については年収の15%程度と仮定します。
実際の住民税額は、個人の所得控除の適用状況や自治体による均等割の差によって異なります。また、社会保険料控除、配偶者控除、扶養控除など、他の控除を適用する場合、課税所得とそれに基づく住民税額も変動します。
月収20万円の場合
(基本的な計算式)
年収: 月収×12カ月 = 20万円×12 = 240万円
給与所得控除:80万円
給与所得金額:160万円
社会保険料控除:36万円
基礎控除:43万円
課税所得金額:給与所得金額-社会保険料控除-基礎控除= 160万円-36万円-43万円 =81万円
課税所得金額が81万円の場合、この金額に対して住民税が計算されます。
(住民税の計算)
所得割の税額:課税所得×所得割の税率 = 81万円×10% = 8.1万円
住民税合計:所得割の税額+均等割 = 8.1万円+5,000円 = 8.6万円
したがって、月収20万円の場合の1年間の住民税は、約8.6万円となります。これを12カ月で割ると、月額約7,166円が住民税として給与から天引きされることになります。
月収25万円の場合
(基本的な計算式)
年収:月収×12カ月 = 25万円×12 = 300万円
給与所得控除:98万円
給与所得金額:202万円
社会保険料控除:45万円
基礎控除:43万円
課税所得:給与所得金額-社会保険料控除- 基礎控除 =202万円-45万円-43万円 = 114万円
課税所得金額が114万円の場合、この金額に基づいて住民税が計算されます。
(住民税の計算)
所得割の税額:課税所得×所得割の税率 =114万円×10% = 11.4万円
住民税合計:所得割の税額+均等割 = 11.4万円+5,000円 = 11.9万円
したがって、月収25万円の場合の1年間の住民税は、約11.9万円となります。これを12カ月で割ると、月額約9,166円が住民税として給与から天引きされることになります。
月収30万円の場合
(基本的な計算式)
年収: 月収×12カ月 = 30万円×12 = 360万円
給与所得控除:116万円
給与所得金額:244万円
社会保険料控除:54万円
基礎控除:43万円
課税所得:給与所得金額-社会保険料控除-基礎控除 = 244万円-54万円- 43万円 = 147万円
課税所得金額が147万円の場合、この金額に基づいて住民税が計算されます。
(住民税の計算)
所得割の税額:課税所得 x 所得割の税率 =147万円×10% =14.7万円
住民税合計:所得割の税額 + 均等割 =14.7万円 + 5,000円 =15.2万円
したがって、月収30万円の場合の1年間の住民税は、約15.2万円となります。これを12カ月で割ると、月額約1万2,666円が住民税として給与から天引きされることになります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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