準富裕層とは?定義や割合について解説
一般的に準富裕層とは、富裕層と一般層の間に位置する経済的地位のことです。具体的には、純金融資産保有額が5,000万円以上1億円未満の世帯のことを準富裕層と位置付けられます。本記事では、準富裕層の定義や割合、主な職業、準富裕層になるための方法について解説していきましょう。
目次
準富裕層の定義とは
「準富裕層」という言葉を聞いたことがありますか。近年、経済や投資の分野でよく耳にするようになりましたが、具体的にどのような層を指すのでしょうか。
準富裕層は、野村総合研究所の定義によると、純金融資産保有額が「5,000万円以上1億円未満」の世帯を指します。ここでいう純金融資産とは、「世帯として保有する金融資産の合計額から不動産購入に伴う借入などの負債を差し引いた」という意味合いです。
つまり、金融資産が5,000万円あったとしても、100万円の負債があれば、その世帯は準富裕層とはみなされません。
準富裕層の特徴
準富裕層の人々は、一般的に以下のような特徴があるといわれています。
- 資産管理が上手:富裕層ほど資産管理は徹底しており、価値のあるもの・費用対効果の良いものには高額であってもお金を払いますが、無駄遣いはしません。
- 時間の無駄が非常に嫌い:高所得者である富裕層にとって、時間の価値はかなり大きいので、彼らは時間を非常に大切にします。例えば、歩いて十数分の移動でも富裕層ならタクシーを使う方もいます。これは、タクシーに乗って移動時間を減らした方のリターンが大きいからです。
- 複利効果を活用している:投資する額が多いほど、利益も大きくなります。そのため、元本に加えて資産運用で得られた利益を再投資することで、運用益は雪だるま式に大きくなっていくのです。これを複利効果と呼びます。
準富裕層の生活スタイル
準富裕層の人々は、一般的な層よりも高い収入を得ており、快適な生活を送っています。彼らは質の良い住宅や車を所有し、旅行やレジャーを楽しむ余裕がありますが、高級品や高額な投資にはあまり関心を持たない傾向です。
以下に、準富裕層の生活スタイルの特徴をいくつか挙げてみます。
- 質を重視する消費行動:準富裕層は、購入する商品やサービスにおいて質を非常に重視します。例えば、ファッションや家電製品、食品においても、一般的な商品よりは高価でも、品質が高い、長持ちする、または特別な体験を提供するものを選ぶ傾向にあります。彼らは、単にブランド名で選ぶのではなく、実際の価値を理解し、そのうえで購入を決定します。
- 投資と貯蓄への意識が高い:経済的余裕があるため、準富裕層は貯蓄や投資にも積極的です。しかし、無理なリスクを避け、堅実な資産運用を好む傾向があります。例えば、株式や不動産への投資だけでなく、子どもの教育費用のための積立や自己啓発のための投資も行います。
- 教育への投資:子どもの教育に対する投資も、準富裕層の特徴的な行動の一つです。彼らは子どもに高い教育を受けさせることを重視し、私立学校の学費や塾、習い事などに高い投資をする家庭が多い傾向です。これは、自分自身の地位や、一定の生活水準を子どもにも引き継がせたいという願望の表れともいえます。
- ライフスタイルの充実:準富裕層は、ライフスタイルの充実にも力を入れています。健康や美容に関する投資はもちろんのこと、趣味や旅行にも積極的に時間とお金を使います。特に、国内外の旅行に出かけることで、新たな体験を積極的に求める傾向があります。また、自宅のインテリアや家庭用品にも、機能性だけでなくデザイン性を重視した選択をします。
また、準富裕層の人々の中には、収入が平均レベルでも、数十年単位でコツコツ努力を積み重ねたり、知識を身につけて節約や投資に励んだりしてステータスのある地位と生活を実現させた方もいます。
準富裕層の人の割合
日本全体で見た場合、この準富裕層はどれくらいの割合で存在するのでしょうか。
日本国内での割合
野村総合研究所の2023年のレポートによると、準富裕層の世帯数は、2005年には約280万世帯でしたが、その後、少し減少して、2011年には約268万世帯となりました。その後は再び増加し、2021年の準富裕層は約325万世帯となっています。
これを全世帯数で割ると、準富裕層の割合は約6.0%です。つまり、50世帯中3世帯が準富裕層に該当する計算となります。
また、富裕層(純金融資産保有額が1億円以上5億円未満)と超富裕層(純金融資産保有額が5億円以上)の割合を合わせれば、日本の世帯総数の約8.8%が準富裕層以上ということになるでしょう。
出典:野村総合研究所、日本の富裕層は149万世帯、その純金融資産総額は364兆円と推計
地域別の割合
大和総研による調査では、富裕層の人数が突出して多いのは東京・神奈川・愛知となっています。特に、東京都には富裕層の約2割、超富裕層の約3割が住んでいます。これは、東京都の場合、給与の高さなどもさることながら、住宅や宅地などの不動産資産が非常に高額であることも影響していると考えられます。
年代別の割合
準富裕層の割合を年代別に見ると、経済活動のピークや資産形成の進展度合いによって大きな違いがあります。一般的に、キャリアの中盤から後半にかけての世代では、収入が安定し、資産が蓄積されやすいため、準富裕層の割合が高くなる傾向にあります。以下では、具体的な年代別の傾向について解説します。
金融広報中央委員会の調査によると、2022年のデータでは、3,000万円以上の金融資産を保有している世帯の年代別割合は、以下の通りです。「3,000万円以上」という額は、準富裕層の定義とは異なりますが、それでも一定の傾向を示したものではあります。
3,000万円以上の金融資産を保有している世帯(世帯主が30代)の割合は2.2%です。「3,000万円以上」という額は、先に紹介した準富裕層の定義とは異なりますが、それでも一定の傾向を示したものではあります。また、全世帯で見ると準富裕層の割合は約6.0%でしたが、30代という年齢に限ってみると、推定0.3%程度とかなり貴重な存在になっていることがわかります。
- 全世代:11.7%
- 20歳代:1.2%
- 30歳代:2.2%
- 40歳代:4.9%
- 50歳代:10.8%
- 60歳代:20.3%
- 70歳代:18.3%
これらのデータから、60歳代が最も多くの金融資産を保有している世代であることがわかります。全体的に見て、年齢が上がるにつれて3,000万円以上の金融資産を持つ割合が増加していますが、70歳代で若干減少していることが特徴です。また、全世帯の中でこの水準の金融資産を持つのはわずか約12%程度となっており、多くの世帯がそれ以下の資産しか持っていないことが明らかになりました。
参考:家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]|金融広報中央委員会
準富裕層の人の主な職業
準富裕層に属する人々の職業は多岐にわたりますが、一般的には高所得の専門職や経営者が多い傾向です。以下に、具体的な職業の例をいくつか挙げてみます。
弁護士や医師などの専門職
弁護士や医師、公認会計士、税理士などの専門職は、高度な専門知識と技術を必要とする職業であり、その報酬も高額です。これらの職業に就いている人々は、一定の収入を得ることができ、その結果、準富裕層に該当することが多いといわれています。
経営者や企業オーナー
自分のビジネスを成功させることで、大きな収益を上げることができるので、中小企業の経営者や企業オーナーも、準富裕層に該当することがあります。
また、自分の会社の株式を保有している場合、その価値が上昇することで資産を増やすことも可能です。
大企業の役員
大企業の役員は、高額な報酬を得ることができます。また、役員報酬の一部が株式として支給されることもあり、その株式の価値が上昇することで資産を増やすことが可能です。
公務員
公務員は、安定した収入と退職金があるため、準富裕層になる可能性があります。特に、高位の公務員や教育関連の公務員は、退職後に大きな退職金を得ることができます。
準富裕層になるためにすべきこと
準富裕層になるためには、単に収入を増やすだけではなく、賢い資産管理と投資戦略、生活習慣の見直しも必要です。以下では、準富裕層への道を目指すための具体的なアプローチを詳しく解説します。
賢い資産管理を行う
・家計簿をつける
まず、自分の収入と支出を正確に把握することが重要です。家計簿アプリや帳簿タイプの家計簿を使って、日々の収支を記録しましょう。
・固定費の見直し
水道光熱費や通信費などの固定費を見直し、節約可能な部分は積極的に節約しましょう。例えば、不要な定額サービスの解約や、節水・節電に努めることが挙げられます。
効果的な投資戦略を立てる
・分散投資を心がける
全ての資産を一つの投資先に集中させるのではなく、株式、債券、不動産など、異なる種類の資産に分散して投資しましょう。これにより、リスクを分散し、安定した収益を目指します。
・長期投資を行う
短期間で大きな利益を狙うのではなく、長期的な視点で資産を増やすことを目指しましょう。特に、積立投資は少額から始められ、時間を味方につけることができます。
スキルアップとキャリアアップを図る
・専門性を高める
今の職業で更なる専門性を高めるか、将来性のある分野で新たなスキルを習得しましょう。オンラインコースや資格取得が有効です。
・副業を検討する
本業以外に収入源を持つことで、収入の柱を増やすことが可能です。自分の得意分野を活かした副業を始めてみましょう。
ライフスタイルの見直し
・消費行動を見直す
必要なものとそうでないものを見極め、無駄遣いを減らしましょう。品質にこだわりつつも、コストパフォーマンスの高い選択を心がけます。
準富裕層になるためには、日ごろから仕事や勉強などといった努力を継続的に行うことが重要です。また、自分自身のライフプランに合った方法を選択し、柔軟に対応することで、目標に近づくことができるでしょう。
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