• 作成日 : 2024年7月5日

iDeCoをやらないほうがいい理由とは?デメリットや注意点は何がある?

個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」は、節税効果や老後の資産形成に役立つ制度ですが、すべての人にメリットがあるわけではありません。この記事では、iDeCoの具体的なデメリットと、iDeCoを選ばない方が良い場合の条件について解説します。

iDeCoのデメリットとは

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、節税効果や自由な運用が可能な点でメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。

iDeCo(個人型確定拠出年金)のデメリットは以下の通りです。

原則として60歳まで資産を引き出せない

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、原則として60歳まで資産を引き出すことができません。これは、iDeCoが老後の資金準備を目的とした制度であるためです。

ただし、一部の例外(死亡・重度障害者)があります。

  • 加入者が死亡した場合:加入者が死亡した場合、遺族等が遺産としてiDeCoの資産を引き継ぐことができます。
  • 加入者が一定以上の障害状態になった場合:加入者が一定以上の障害状態になった場合、障害給付金としてiDeCoの資産を受け取ることが可能です。
  • 脱退した場合:特定の条件下でiDeCoから脱退することが可能で、その際には脱退一時金を請求することができます。

これらの例外は、加入者の状況に応じて適用されます。ただし、これらの例外が適用される場合でも、受け取り時の税金や手数料などに注意が必要です。

元本割れのリスクがある

運用状況によっては資産が減少する可能性があります。iDeCo(個人型確定拠出年金)の運用商品には「元本確保型」と「元本変動型」の2種類があり、元本変動型の商品を選択した場合、元本割れのリスクが存在します。

元本割れとは、投資した元本(投資した金額)を下回る状態を指します。つまり、投資した金額よりも少ない金額になってしまう状態です。

元本変動型の商品は、投資対象が株式や不動産、債券などの価格が変動する商品で、経済状況によって価格が変動します。そのため、投資した金額が保証されず、運用状況によっては資産が減少する可能性があります。

元本割れのリスクを抑えるためには、以下のような対策が考えられます。

  • 長期・分散・積立投資:投資は長期間行うことでリスクを分散し、積立投資を行うことで価格の変動リスクを軽減することができます。
  • 適切な資産配分:リスクを分散するために、複数の異なる種類の資産に投資することが重要です。
  • 定期的な見直し:市場環境やライフステージの変化に応じて、適時に投資ポートフォリオを見直すことが必要です。

以上のように、iDeCoの「元本割れのリスク」は存在しますが、適切な運用方法とリスク管理により、そのリスクを軽減することが可能です。

手数料がかかる

iDeCo(個人型確定拠出年金)の利用には、以下の種類の手数料が発生します。

  • 加入・移換時手数料:iDeCoに新規で加入する際や、企業型DCからiDeCoへ移換する際に発生します。この手数料は一度だけ発生し、金額は2,829円(税込)です。
  • 口座管理手数料:iDeCoの口座を管理するために毎月発生する手数料です。この手数料は金融機関により異なり、一部の金融機関では無料の場合もあります。
  • 信託報酬:iDeCoの運用商品(投資信託)の運用・管理に対する報酬として発生します。この報酬は投資信託の残高に応じて毎日差し引かれます。
  • 給付事務手数料:60歳以降にiDeCoの資産を受け取る際に発生します。この手数料は受け取りごとに440円(税込)が発生します。
  • 還付事務手数料:掛金が還付される際に発生します。還付が発生するのは、限度額を超えて拠出された掛金や加入資格のない月に拠出された掛金などを加入者に返金する場合です。

これらの手数料は、iDeCoの運営主体である国民年金基金連合会と、実務を行う信託銀行・金融機関が運営していくための手数料です。手数料を少しでも抑えたい場合は、口座管理手数料が低い金融機関を選ぶことが重要です。

自分で金融機関を選んで手続きしなければならない

iDeCo(個人型確定拠出年金)の運営管理機関(金融機関)は多数あるのが特徴です。具体的には銀行(信託銀行や信用金庫など含む)や証券会社、生命保険会社、損害保険会社、投信会社などが挙げられます。金融機関によって、運用対象商品や口座管理などの手数料が異なるため注意しなくてはなりません。

掛金額に上限がある

iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金額には上限があり、その上限額は加入者の職業によって異なります。
以下に、主な職業別の掛金上限額について説明します。

  • 自営業者、学生等(第1号被保険者):月額68,000円、年額816,000円まで積立てることができます。
  • 会社員等(第2号被保険者):企業年金の有無により、以下のように掛金上限額が異なります。

・企業年金なしの場合:月額23,000円、年額276,000円まで。
・企業型DCのみ加入の場合:月額55,000円から企業型DCの掛金額を引いた額(月額20,000円まで)。
・企業型DCと確定給付型年金等に加入の場合:月額27,500円から企業型DCの掛金額を引いた額(月額12,000円まで)。

  • 専業主婦(夫)等(第3号被保険者):月額23,000円、年額276,000円まで積立てることができます。

また2024年12月以降には、第2号被保険者の上限額が月額20,000円に統一される予定です。

誰でも加入できるとは限らない

iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入資格は、国民年金の被保険者種別によって異なります。以下に、主な加入資格について詳しく説明します。

  • 国民年金第1号被保険者:自営業者、フリーランス、パート・アルバイト等が該当します。
  • 国民年金第2号被保険者:会社員、公務員等が該当します。
  • 国民年金第3号被保険者:専業主婦(夫)等が該当します。
  • 60歳以上65歳未満の方:2022年からは60歳以上65歳未満の方や海外居住の方も加入できるようになりました。
  • 企業型確定拠出年金の加入者:企業型確定拠出年金に加入している方は、一部の条件下でiDeCoに加入することが可能です。

ただし、以下のような場合は原則としてiDeCoに加入することができません。

  • 国民年金の保険料について免除、一部免除している人(障害年金の受給者は除く)
  • 企業型DC加入者で毎月拠出になっていない人
  • 企業型DC加入者で月5.5万円を超えて拠出している人
  • 企業型DCと企業型DB加入者で月2万7,500円を超えて拠出している人
  • 企業型DCのマッチング拠出を利用している人
  • 20歳未満、または65歳以上の人(会社員などの国民年金第2号被保険者を除く)

iDeCoをやらない方が良い人とは

安定した収入がないフリーランスや自営業者

iDeCoは安定した収入が前提です。不定期な収入や事業の変動が激しい場合、定期的な拠出が経済的な負担になる可能性があります。特に新規事業を立ち上げたばかりの自営業者や、収入が安定しないクリエイティブ業界のフリーランスにとって、月々の定額投資は難しい選択かもしれません。

対処方法

  • 収入が安定するまでの期間はiDeCoの加入を見送る
  • 低リスクの投資手段を検討する

既に退職金制度が充実している公務員や大企業の社員

退職金制度が充実している公務員や大企業の社員は、iDeCoのメリットを十分に享受する必要がない場合があります。特に大企業や公的機関で働く人の中には、既に豊富な退職金プランが設けられているため、追加で老後資金を積み立てる必要が少ないかもしれません。

検討すべきポイント

  • 既存の退職金とiDeCoの利益を比較検討する
  • 必要以上の資金拠出が生じないよう計画的に管理する

早期リタイアを計画している人

iDeCoは60歳まで資金を引き出すことができません。そのため、50代やそれより若い年齢でリタイアを計画している人には向きません。早期リタイアを目指す場合、より柔軟に資金を引き出せる投資方法が適しているかもしれません。

代替案

  • 個人型確定拠出年金以外の退職金準備を検討する
  • 資産運用を多様化してリスク分散を図る

短期間で高いリターンを求める投資家

iDeCoは長期間にわたる資産形成を目的としています。そのため、短期間での高リターンを求める投資スタイルには合いません。短期トレーディングや高ボラティリティ投資を好む投資家にとっては、他の投資手段を検討した方が良いでしょう。

考慮すべき投資アプローチ

  • 株式や為替など他の短期投資に注目する
  • 金融技術を利用した新しい投資ツールを利用する

手数料や税制に敏感な人

iDeCo口座の運用には、管理手数料などのコストが発生します。また、税制の変動により将来的には不利な変更が生じる可能性があります。コスト最小化を重視する場合や、税制変更によるリスクを避けたい人は、iDeCoの利用を避けた方が無難かもしれません。

コスト低減の提案

  • 手数料の低い投資商品を選択する
  • 税効果を考慮した投資計画を立てる

iDeCoをやる上での注意点

長期的な投資が必要

iDeCoは長期的な資産形成を目的としています。そのため、短期的な利益を求める方には向いていません。加入後の解約が原則として認められていないため、一定期間(原則60歳まで)資金を引き出すことができないことに注意が必要です。60歳までの期間、すぐに資金を必要とする可能性がある方は特に慎重に考慮する必要があります。

運用リスクを理解する

運用商品には株式や債券などが含まれますが、市場の変動により資産価値が減少する可能性があります。投資の基本は、高リスク・高リターン、低リスク・低リターンですが、iDeCoの場合もこの原則が当てはまります。運用リスクに対する理解と、自身のリスク許容度に応じた商品選択を行うことが重要です。市場が不安定な時期には、特にその運用成果が大きく変動する可能性があります。

税制の利点と制限を把握する

iDeCoは所得控除の効果があり、その結果として所得税や住民税の節税が期待できます。しかし、その反面、掛け金の納付には年間上限が設定されています。例えば、自営業者の場合、年間の掛け金上限は81.6万円です。また、給与所得者の場合は、給与の額によって上限が異なりますから、事前によく確認しておく必要があります。加えて、税金の優遇措置を受けるためには一定のルールを守る必要があり、違反すると税制優遇が受けられなくなる場合もあります。

手数料についての調査

各金融機関によって手数料の設定が異なります。加入前には、運用管理手数料や解約手数料など、各種手数料の比較を行うことが大切です。高い手数料が運用成果を圧迫することがあるため、比較検討し、コストパフォーマンスを考慮する必要があります。たとえば、ある金融機関では月額手数料が数百円から数千円の範囲で設定されている場合があり、これが長期にわたると大きな額になり得ます。

退職金とのバランスを考慮する

既に確定給付企業年金や確定拠出年金など他の退職金制度に加入している場合、iDeCoとの組み合わせによるメリット・デメリットを把握しておくことが重要です。例えば、他の退職金制度と組み合わせることで、将来受け取る退職金の総額が増える可能性がありますが、一方でリスク分散の観点から見ると、すべての退職金を同一の運用方針で管理するのは避けた方が良いでしょう。複数の退職金制度とのバランスを上手く取りながら計画を立てることが、より確実な老後の資産形成につながります。

まとめ

iDeCo(個人型確定拠出年金)は老後の資金形成に有益ですが、全ての人に適しているわけではありません。特に若年層や収入が不安定なフリーランサー、またすでに高額の年金を受け取る見込みのある人にとって、iDeCoの必要性は低いかもしれません。投資にはリスクが伴いますので、自身の経済状況や将来設計を考慮した上で、iDeCoへの加入を検討することが重要です。最終的な判断を下す前に、専門家と相談することをお勧めします。


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