• 更新日 : 2024年3月29日

住民税が高いと感じたら?地域差や節税方法を解説

給与明細を確認して「引かれる税金が高い」と感じる方は多くいるでしょう。そんなとき、「これらの税金を少しでも減らせたら」と考えたことはないでしょうか。

今回は、住民税が高いと感じる方のために、抑える方法があるのかどうかを紹介します。よく聞かれる「住民税額の地域差」についても解説しますので、ぜひご覧ください。

住民税が高い自治体はある?

まずは、住民税とは何かを理解しておきましょう。

そもそも住民税とは

住民税は市区町村や都道府県が徴収する「地方税」です。教育、ゴミ処理、福祉、消防や救急など、地域が提供する行政サービスをまかなうために使われています。

ちなみに、住民税は個人が支払う「個人住民税」と、法人が支払う「法人住民税」があります。さらに、住民税は市区町村に支払う「市町村民税」と都道府県に支払う「道府県民税」に分かれます。

住民税額は基本的に全国どこでも同額です。所得や扶養人数などが同じであれば、全国どこに行っても税額は変わりません。ただし、「超過課税」が適用されている自治体では、税率が高くなります。超過課税は自治体の判断で実施可能です。

「所得割」と「均等割」で算出する住民税

住民税は「所得割」と「均等割」で算出します。それぞれの特徴も確認しておきましょう。

【所得割】

納税の義務がある人の前年の所得金額に応じて課税される

【均等割】

前年の所得が非課税限度額を上回る人に一定額課税される

平均的な住民税率

住民税(所得割・均等割)の平均的な税率は、以下の通りです。

【所得割】

標準税率
市町村民税6.0%
都道府県民税4.0%

【均等割】

年額 (2024年4月以降)
市区町村民税3,000円
都道府県民税1,000円

※2023年度まで東日本大震災の復興増税を設けていたため、市区町村民税3,500円、都道府県民税1,500円として運用(各税金に500円の加算)。

その市町村に住んでおらず家屋敷(※)だけがある場合、居住する市町村だけでなく、家屋敷がある市町村にも均等割分の住民税を支払わなければなりません。

※いつでも自由に居住できる状態の場合に課税されます。人に貸している場合などは課税されません。

住んでいる地域の住民税の調べ方

先に述べた通り、原則として、所得割・均等割の税率・税額は全国どこでも同じです。ただし、超過課税を適用する自治体の場合は所得割・均等割よりも税率が高くなります。反対に市町村独自の施策で住民税減税を行っているところもあります。

住んでいる地域の住民税率

お住まいの地域の住民税率は自治体のホームページで紹介しています。その際は、市町村のホームページを確認するようにしましょう。例えば、兵庫県神戸市在住の場合、兵庫県ホームページではなく、神戸市のホームページを見ます。

住民税率の高い自治体・安い自治体

超過課税が適用されている自治体の場合、他の自治体より住民税が高くなることもあります。住民税が高い自治体、安い自治体について見てみましょう。

住民税率が高い自治体:神奈川県横浜市

神奈川県横浜市の住民税率は、以下の通りです。

【所得割】

標準税率
市民税8.0%
県民税2.025%

【均等割】

年額 (2024年4月以降)
市民税3,900円
県民税1,300円

横浜市と神奈川県では震災対策事業などの財源確保のため、2023年度まで市民税4,400円、県民税1,800円の均等割で運用していました。

また、横浜市では、2023年度まで緑を守り、つくり、育む取り組みとして、「横浜みどり税」として年間900円均等割の税率に上乗せもしていました。ただし、均等割が非課税または軽減されている場合は「横浜みどり税」は課税されません。

加えて、神奈川県では、水源環境の保全・再生のために超過課税「水源環境保全税」を運用しており、2026年まで県民税の所得割の税率に0.025%、均等割に300円上乗せとなります。

住民税率が安い自治体:大阪府田尻町

大阪府田尻町の住民税率は、以下の通りです。

【所得割】

標準税率
町民税5.4%
府民税4.0%

【均等割】

年額 (2024年4月以降)
町民税3,000円
府民税1,300円

田尻町でも2023年度まで東日本大震災の復興増税を設けていたため、町民税3,200円、府民税1,300円の均等割として運用していました。また、2017年度から2023年度までの7年間、「移住・定住の促進」「働く世代の応援策」として、町民税均等割額を300円、所得割税率を0.6%引き下げています。

前年度より住民税が高い理由として考えられること

給与明細を見て、「住民税額が高すぎでは」と感じたことはありませんか。その理由として考えられることについて紹介します。

控除が少なかった

住民税が高くなったと感じたら、控除について確認してください。例えば、「配偶者の収入が上がった」「子どもが就職した」などの理由で家族が扶養から外れた場合、その分控除が減りますので、住民税は高くなります。

その他、「前年は申請できた医療費控除が今年はできなかった」といった理由で控除が減ることもあります。

前年の収入が高かった

住民税は前年1月1日~12月31日までの所得を基に計算されます。そのため、前年の収入が高かった場合は、住民税額が高くなるので気をつけましょう。「12月末で退職し、翌年は収入がない」というケースでも住民税の支払い義務はありますので、要注意です。

森林環境税の課税が含まれている

2024年度から国内に住所がある個人を対象に、温室効果ガスの排出削減の達成と災害防止を目的として国税である「森林環境税」が課税されます。税額は1人あたり年額1,000円です。市区町村の個人住民税の均等割りと一緒に徴収されます。

なお、徴収された森林環境税は、全額「森林環境譲与税」として、都道府県や市区町村が持続できるような取り組み(例:森林の整備や森林関連従事者の人材育成など)に充てる流れとなります。

住民税が高いと感じたときの節税方法や対策

住民税が高いと感じたときの節税方法・対策には、以下のようなものがあります。

  • iDeCoに加入する
  • ふるさと納税をする
  • 家族を扶養に入れる
  • 医療費控除を受ける
  • その他の控除が受けられないか探す

iDeCoに加入する

個人型確定拠出年金「iDeCo」とは、自分が拠出した掛金を運用し、資産を形成するという年金制度です。運用先は自分で決めることができます。また、掛金は全額所得控除の対象です。

例えば、年齢30歳、年収500万円の人が毎月1万円iDeCoに支払った場合(払込期間65歳まで)、住民税は1年間で1万2,000円軽減されます。

住民税の節税を考えるならばぜひ検討したい制度です。なお、iDeCoは証券会社や銀行で加入可能ですが、以下の注意点もあります。

  • 1人=1口座に限られる
  • 運用商品によっては元本割れする可能性もある
  • 原則60歳まで引き出し不可
  • 加入者の属性によって掛金の上限が決まる

ふるさと納税をする

ふるさと納税とは故郷や応援したい自治体に寄付ができるという制度です。寄付をすると、2,000円を超える部分について所得税還付や住民税控除があります。さらに、寄付した地域から返礼品としてその地域の名産品などが受け取れます。なお、控除上限額は年収、各種控除の有無などで変わります。

家族を扶養に入れる

条件が合えば、家族を扶養に入れて扶養控除額を増やすという方法も検討してはいかがでしょうか。例えば、親を扶養に入れるのであれば、以下の金額が控除されます。

区分控除額
69歳まで38万円
70歳以上
(その年の12月31日現在の年齢)
同居老親など以外の者48万円
同居老親など58万円

また、扶養できる親には、以下の条件があります。

  • 親の所得が48万円以内
  • 親の収入が年金のみ、65歳以上の場合、年金収入が158万円以内
  • 生計を一にしていること
  • 自分もしくは配偶者の親、もしくは市町村長から養護を委託された老人であること

医療費控除を受ける

自分と生計を一にする人の1年間(1月1日~12月31日)にかかった医療費が一定の額を超えた場合、医療費控除を受けることができます。控除額は、以下で計算します。

1年間に払った医療費(保険金・給付金などを除く)-10万円又は所得総額の5%のいずれか少ない方=医療費控除額

控除上限額は200万円です。医療費控除を受けたい場合は確定申告を行ってください。

その他の控除が受けられないか探す

紹介した控除以外の控除が受けられないかも探してみましょう。例えば、薬局・ドラッグストアで医薬品を購入する方であれば「セルフメディケーション税制」の対象になるかもしれません。セルフメディケーション税制の詳細は、以下の通りです。

【制度の対象になる条件】

  • 所得税・住民税を納めている人
  • 対象の検診など(特定健康診断、定期健康診断、予防接種など)のいずれかを受けている人
  • 医療費控除を受けていない人
  • セルフメディケーション税制対象医薬品(パッケージに記載されています。レシートでも確認可能です)を世帯合計で年間1万2,000円以上購入した人

1万2,000円を超えた部分が控除対象となります。控除上限額は8万8,000円です。手続きは医療費控除同様、確定申告で行います。

住民税の節税方法を知って家計防衛を!

住民税は「所得割」「均等割」で計算します。基本的には全国どの自治体でも同じ税額・税率ですが、地域によっては超過課税で若干高くなる場合もあります。詳しくは自治体のホームページで確認可能です。

なお、住民税は前年の所得から計算する税金です。よって、退職・転職などで前年よりも所得が下がった場合、税負担が重くなる可能性がありますので気をつけなければなりません。

しかし、住民税は「iDeCo加入」「ふるさと納税の活用」「家族を扶養に入れる」といった方法で節税することもできます。税の負担をなるべく軽くしたいと考えるのであれば、これらの節税方法を積極的に使うことも検討しましょう。


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