- 作成日 : 2024年7月26日
年金はいくら払っていくら受け取れる?
年金はいくら払って、いくら受け取れるのか気になっている方も多いでしょう。本記事では、国民年金と厚生年金の生涯納付額や生涯受給額を具体的に解説します。また、年金を繰り下げることで受給額がどう変わるのかについても詳しく説明します。この記事を読むことで、将来の年金計画を具体的に立てるための基礎知識を得ることができます。
目次
年金の生涯納付額
国民年金の場合
国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する公的年金制度です。収入に関係なく、月額で定められた一定の金額を支払います。このシステムにより、収入が低い人も高い人も平等に年金を受け取る権利が生じます。以下に国民年金の基本的な納付額に関する詳細を示します。
月額保険料
国民年金の月額保険料は毎年度見直しが行われます。2024年度の月額保険料はおおよそ1万6,980円です。これを毎月納付します。
生涯納付額
通常の加入期間は20歳から60歳までの40年間、つまり480か月間です。よって、20歳から60歳までに支払う総額は約815万400円になります。ただし、納付期間中に免除制度や追納制度を利用した場合は、この金額は変わります。
追納制度
過去に納め忘れた保険料を後から支払うことができる「追納制度」もあります。この制度を利用することで、未納期間をカバーし、将来的な年金受給額を減額されるリスクを避けることができます。
免除制度
経済的な理由や特定の事情により保険料の納付が難しい場合は、全額または一部の保険料を免除される「免除制度」があります。免除期間中も年金受給資格期間として認められるため、無収入や低収入の期間中も年金を受け取る基礎が確保されます。
納付状況の確認
年金ネットを利用すると、自分の現時点までの納付状況や将来の年金受給見込み額を確認することができます。定期的に納付状況を確認し、未納期間があれば追納制度を活用して整えることがおすすめです。
厚生年金の場合
厚生年金は主に会社員や公務員が加入する公的年金制度です。給与に連動して保険料が決まるため、収入が多いほど納付額も増えますが、それに比例して受給額も多くなります。以下に厚生年金の基本的な納付額に関する特徴を示します。
月額保険料
厚生年金の保険料は給与と賞与に対して一定の割合で計算されます。2024年度の保険料率は18.30%であり、これを労使折半で負担します。具体的には、労働者と雇用主がそれぞれ9.15%ずつ負担することになります。
生涯納付額の計算方法
生涯納付額は、加入期間中の平均給与と賞与に保険料率を掛け合わせて算出されます。つまり、納付額は個人の働いた年数や平均給与水準によって大きく異なります。給与が高いほど、納付額は増えますが、将来受け取る年金額もそれに比例して高くなります。
標準的な例
標準的な給与(月額30万円、賞与年2回各50万円)のケースを考えると、年間の労働者負担分は約42万900円になります。これを40年間働き続けると、労働者負担分の生涯納付額はおおよそ1,683万円になります。この金額は企業の負担分を含まない額ですので、実際には倍の額が納められます。
特例措置
育児休業や介護休業を取得した場合、一定期間は厚生年金保険料の納付が免除される特例措置があります。この期間も年金受給資格期間としてカウントされ、将来の年金受給額に反映されるため安心です。
納付状況の確認
厚生年金制度における納付状況も年金ネットを利用すれば簡単に確認できます。過去の納付履歴や将来の年金受給見込み額を把握することで、計画的なライフプランを立てることができます。
年金の生涯受給額
国民年金の場合
国民年金の場合、生涯の受給額は受給開始年齢や納付期間、さらに経済状況によって変動します。
受給開始年齢について
受給開始年齢は65歳が基本ですが、60歳から70歳の間で選ぶことができます。開始年齢によって受け取れる月額年金額が異なります。例えば、60歳から受給開始する場合は減額され、70歳からの場合は増額されます。
納付期間について
国民年金の満額受給を得るには、原則40年間(20歳から60歳まで)の納付が必要です。納付期間が短い場合でも受給資格はありますが、その場合の年金額は減少します。また、学生時代の納付猶予期間や免除期間も考慮されます。
生涯受給額の例
具体的な例を挙げると、以下のようになります。これらはあくまで一例であり、実際には経済状況や政策変更により変動することがあります。
- 40年間納付した場合:年間約78万円、10年間で約780万円
- 30年間納付した場合:年間約58.5万円、10年間で約585万円
厚生年金の場合
厚生年金の受給額は給与や勤続年数に依存します。勤続年数が長いほど、また給与が高いほど受給額も増えます。
給与について
厚生年金には基礎年金と報酬比例部分があります。基礎年金は国民年金と共通であり、報酬比例部分は平均標準報酬額に基づいて計算されます。
勤続年数について
厚生年金の受給額は勤続年数により増減します。例えば、40年間勤続した場合と20年間勤続した場合では大きな差があります。
生涯受給額の例
以下の例を考えてみましょう。これらも将来的な物価変動や賃金変動により変わる可能性があります。
- 平均年収500万円で40年間働いた場合:年間約180万円、10年間で約1,800万円
- 平均年収300万円で30年間働いた場合:年間約90万円、10年間で約900万円
加算制度について
厚生年金には加算制度があります。扶養する配偶者がいる場合や障害を持つ子供がいる場合など、特定の条件を満たすとその分が加算されます。これにより、受給額がさらに増えることがあります。具体的な例として、配偶者加算や障害者加算などがあります。
年金を繰り下げた場合の生涯受給額
繰り下げ受給とは
年金の受給開始を本来の受給年齢である65歳から、自分の希望によって後ろにずらすことを「繰り下げ受給」と言います。繰り下げる期間に応じて年金の月額が増えるため、長生きする場合には総受給額が大きくなる可能性があります。
繰り下げ受給のメリット
年金受給額の増加
繰り下げ受給をすることで1ヶ月あたりの受給額が0.7%増額されます。つまり、1年(12ヶ月)繰り下げると8.4%の増額、最大で5年間繰り下げると42%の増額となります。
長生きリスクへの対応
日本人の平均寿命は高くなっており、長生きするリスクも考慮すると繰り下げ受給は有効な手段です。長期的に見ると、増額された年金額が生涯収入の安定に寄与します。
繰り下げ受給のデメリット
受給開始までの生活費の確保
受給開始を後ろにずらすことで、65歳以降の生活費を自己資金で賄う必要があります。事前に十分な資金計画を立てておくことが重要です。
早期死亡リスク
繰り下げ受給を選んだ場合、早期に亡くなった場合には増額された年金の恩恵を十分に享受できない可能性があります。健康状態や家族のサポート体制も考慮することが必要です。
国民年金を繰り下げた場合の生涯受給額
国民年金の月額受給額が繰り下げにより増加する仕組みについて具体例を挙げて解説します。例えば、65歳から受け取る場合には年間約78万円の受給額ですが、70歳まで繰り下げると年間約111万円に増額されます。これにより、長寿命の場合には生涯受給額が大幅に増加します。
具体例と計算方法
例えば60歳の時点で繰り下げを考える場合、65歳から70歳までの期間における受給総額がどのように変化するかを計算します。65歳から受け取る場合には年間78万円×5年間=390万円となります。一方で70歳まで繰り下げた場合、年間111万円×残りの年数という形で、受給開始後20年間で計算すれば111万円×20年=2220万円になります。
厚生年金を繰り下げた場合の生涯受給額
厚生年金も同様に繰り下げることで受給額が増加します。例えば、元々の年金受給額が年間200万円の場合、70歳まで繰り下げると年間約284万円に増額されます。勤務期間が長いほど繰り下げ受給の恩恵は大きくなります。
具体的な増額例
45年間勤務した場合の年金受給シミュレーションを行います。65歳で年200万円の受給額が70歳では年284万円になります。この場合、70歳から受給開始してからの20年間の総受給額を計算すると284万円×20年=5,680万円です。一方、65歳から受給を開始した場合には200万円×25年=5,000万円となり、差額680万円となります。
企業年金との連携
厚生年金を繰り下げる場合、企業年金や退職金のタイミングとも連携させることがポイントです。退職後の資金計画を十分に考慮し、企業年金などの補完制度も活用することで、生活費の安定を図ることができます。
企業年金の活用方法
企業年金を補完的に使用することで、繰り下げ受給までの期間の生活費を賄うことができます。例えば、退職金を活用して65歳から70歳までの生活費の一部を補填することが可能です。また、一部の企業年金制度では、早期に年金を受け取ることができる場合もありますので、そのような制度を活用することも一つの方法です。
税制面での考慮
繰り下げ受給を選択する際には、税金の影響も考慮する必要があります。高額な年金を受給する場合、所得税や住民税が増加する可能性があります。そのため、適切な税額控除や節税策を検討し、必要に応じて税理士など専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
年金の納付額と受給額を理解することで、将来の生活設計がより具体的になるでしょう。国民年金と厚生年金それぞれで納付する額や受け取る額は異なり、特に厚生年金の場合は給与に応じて変動します。また、年金を繰り下げることで生涯受給額が増える可能性もありますが、これには個々の状況に応じたメリットとデメリットがあるため、慎重な検討が必要です。最終的には、自身のライフプランに合わせて最適な選択をすることが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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