資産形成のポイントとは?年代別戦略やシミュレーション

資産形成とは貯蓄や投資などで資産を増やすことです。この記事では、資産形成の種類や年代別の戦略、効率的に資産を築くポイントを解説します。老後資金の必要額や資産形成シミュレーションもご紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。

資産形成とは

資産とは現金や預貯金・株式などの有価証券、土地や家などの不動産といった全ての財産のことです。資産形成とは、資産がない状態からつくり上げていく過程のことであり、収入を増やしたり投資したりすることで資産を大きくしていきます。

それでは、なぜ資産形成が必要なのでしょうか。以下に必要性と考え方を解説します。

資産形成の必要性

資産形成の必要性を考えたときに老後資金の確保を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

2019年に金融庁が発表した『老後2,000万円問題』により、老後資金の確保が社会的に注目されるようになりました。2,000万円は65歳以降に標準的な生活を送る場合、公的年金のみでは毎月5.5万円が不足するという試算に基づくものです。

一方、日本の少子高齢化が進めば、公的年金の支給額減額や支給開始年齢の引き上げなどが予想されるため、2,000万円を超える資金調達が必要になるかもしれません。

2,000万円をわずかな利息しかつかない預貯金のみでつくるのは難しいため、多少のリスクを取りつつ効率的に資産を増やす方法を実践するとよいでしょう。

参考:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」|金融庁

資産形成の考え方

資産形成は年齢や家族構成などによって考え方が異なります。最終的な目標を老後資金の確保に置いていても、結婚や出産、マイホーム購入などライフプランによって必要なお金の額は異なるでしょう。

また、資産形成はリスクも念頭に置いて進めることが重要です。例えば、元本保証があるからという理由で預貯金のみで資産をつくろうとした場合、物価上昇に伴う貨幣価値の減少には対応できません。

100円で買えた卵が300円になった場合、100円の価値は1/3になります。同じ100円でも貨幣価値が下がれば結果的に資産が目減りしてしまうのです。

そのため、預貯金だけでなく株式や投資信託のようにインフレリスクに対応できる金融資産や価格変動のある不動産など、さまざまな種類の資産を持っておくとよいでしょう。

資産形成の種類

資産形成は収入を上げつつ、財産を増やしていきますが、種類によって特徴が異なります。ここでは貯蓄と投資の2つを解説しましょう。

貯蓄

貯蓄とは預金や貯金をすることです。最大の利点は元本保証があることで、銀行やコンビニエンスストアのATMで入出金が手軽に行えます。低リスクで使い勝手のよい資産形成の手段として預貯金を保有する方は多いでしょう。

一方、効率的な資産の拡大は難しく、インフレリスクに対応できないこともデメリットです。預金の利息はメガバンクで0.001%です。1,000万円預けていても年間で100円の利息がつくのみで、出金時の手数料も補填できません。

また、インフレが進んでも預金額は変動しないため、貨幣価値の低下により資産が目減りします。貯蓄のみで資産形成するのはリスクがあると認識しておきましょう。

投資

投資とは物や人に資産を投じることで、株式や投資信託などの金融資産を購入し運用することを意味します。貯蓄と異なり元本保証はされておらず、価格が常に変動するのが特徴です。貯蓄よりも資産を増やせる可能性がある一方で、運用成果次第で損する場合もあります。

金融商品でも債券など比較的リスクの少ない商品から、株式投資など変動が大きい商品までさまざまです。株式投資の場合は、配当金や株を売却して得られる利益を受け取れるほか、経済や金融の知識が深まるメリットがあります。

また、不動産投資で家賃収入や売却益を得る方法もあり、投資の種類は多岐にわたります。政府は個人での資産形成を推奨しており、NISAやiDeCoなど税制優遇される制度もあるため、賢く活用するとよいでしょう。

年代別の資産形成戦略

年代によって収入やライフイベントが異なるため、資産形成の方法も異なります。ここでは、年代別に資産形成の戦略をご紹介します。

20代の資産形成

20代は社会人になって仕事を覚え始める時期です。他の年代と比較すると収入が少ないため、資産形成向けの資金も限られますが、少ない収入でも節約をしながら収支のバランスを考えた資金づくりはできます。積立貯蓄やNISAなどを活用し少額からでも資産形成を始め、残ったお金で生活する術を身につけるとよいでしょう。

また、20代独身であれば最低限の家事や身の回りのことを済ませれば、まとまった時間を確保できます。確保した時間を将来のキャリアアップのための勉強に費やせば、長い目で見て収入アップにつながる場合があります。

30~40代の資産形成

30代と40代は勤務先での地位が上がり収入も上昇する傾向ですが、結婚や出産などを経験することが多い世代であり、家族構成が変化する方も多いでしょう。

子どもができると育児に必要な物品をそろえたり、部屋を確保するために引っ越しを検討したりすることがあります。また、産休や育休などで世帯収入が減る家庭もあり、収支バランスにも変化が見られるでしょう。

支出が増える時期は、積立額を少なくして、子どもの年齢が上がって働ける時間を確保できたら積立額を増やすなど柔軟な対応が必要です。子どもの教育費確保のために、学資保険を利用するなど将来への備えも考えておきましょう。

50代以降の資産形成

50代は子どもの大学卒業など、子どもにかかる支出が一段落する時期です。大きな出費がなくなってくる時期のため、自身の老後生活に向けた資金計画を立てられるでしょう。

また、住宅ローンを完済する方も出てくる時期です。収支のバランスを見ながらNISAやiDeCoを活用して、余剰資金を積極的に運用していくとよいでしょう。

ただし、定年退職が迫ってくる時期なので、生活に必要な資金の確保は重要です。貯蓄や債券といった低リスク商品と株式などの変動幅のある資産にリスクを分散させることを意識しましょう。

資産形成のポイント

資産形成にはいくつかの種類や段階があります。ここでは、資産形成のために必要な3つのポイントをご紹介します。以下のポイントを意識しながら無理なく資産をつくりましょう。

生活防衛資金の確保

生活防衛資金とは、病気やけがの治療や働けなくなったときのための万が一の備えとして蓄えておく資金です。車や住宅の購入費、子どもの教育費とは別に貯めておく資金であり、最優先に準備しておく必要があります。

生活防衛資金の金額は年齢や家族構成によって異なります。独身一人暮らしなら月の生活費の3カ月~半年分、子どもがいる家庭の場合は生活費の半年~1年分が目安です。生活防衛資金を確保していなければ緊急時に対応できず、最悪の場合、生活が成り立たなくなる可能性があるため必ず用意しましょう。

分散投資

投資の基本は分散投資です。生活防衛資金を確保したら余剰資金を少しずつ投資に回します。比較的リスクの少ない債券や価格変動に幅のある個別株や投資信託など、さまざまな商品に分散して投資するとよいでしょう。

投資信託は国内・海外の株式を組み入れているため、一つの商品でも分散投資が可能です。初心者は投資信託の中でもリスクの少ない、インデックス型の銘柄から始めてみましょう。投資に慣れてきたら個別株や不動産などにも注目すると投資の幅が広がります。

長期運用

分散投資に加えて重要なのが長期運用です。短期間では価格変動の大きい商品でも長い目で見ると少しずつ価値が上昇していく商品は多くあります。

ただし、投資は短期間に大儲けしようと考えずに、地道にコツコツ続ける姿勢が大事です。2024年からはNISAが新制度に変わり、非課税期間が恒久化されます。

税制優遇をこれまで以上に享受できるようになるため、月々数千円からでもよいので投資し続けることが重要です。派手さはなくても地道に続けられる人が資産形成に向いています。

参考:新しいNISAのポイント|金融庁

老後に必要な資金はいくら?

『老後2,000万円問題』が話題になりましたが、実際にはそれぞれの生活スタイルによって必要な資金は異なります。平均的な生活とゆとりのある生活の2つにわけて必要な老後資金を解説します。

平均的な生活の場合

2023年11月に発表された総務省の家計調査報告によると1カ月当たりの消費支出は2人以上世帯で約28万円、単身世帯も含めた総世帯では約24万円となっています。

  • 夫婦2人世帯が60~90歳までの30年間で必要な支出月28万円×12カ月×30年=1億80万円

一方、将来受け取れる年金額は加入する年金保険によって異なります。仮に会社員だった夫(厚生年金+国民年金)と専業主婦の妻(国民年金)の場合、平均的な年金額は夫婦2人で約26万円です。

  • 夫婦ともに同年齢で65~90歳まで年金を受給する場合の2人合わせた受給額月26万円×12カ月×25年=7,800万円

平均的な生活を送るために必要な老後資金は、30年分の生活費(1億80万円)から25年分の年金額(7,800万円)を引いた2,280万円となります。

参考:家計調査報告-2023年(令和5年)9月分及び7~9月期平均-|総務省
参考:令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省「

ゆとりある生活の場合

外食や旅行・レジャー、趣味などを充実させた、ゆとりある生活をしたい場合は平均的な生活よりもさらに多くの資金が必要です。仮に、ゆとりある生活を送るために月の支出を10万円プラスすると月々必要な生活費は38万円となります。

こちらも夫婦2人世帯が60~90歳までの30年間生活すると仮定します。

  • ゆとりある生活を送るための生活費月38万円×12カ月×30年=1億3,680万円
  • 65~90歳までの年金受給額7,800万円
  • ゆとりある生活を送るために必要な資金1億3,680万円-7,800万円=5,880万円

平均的な生活と比べて、倍以上の資金をつくる必要があります。

資産形成シミュレーション

資産形成は生活防衛資金を確保した上で、投資信託などで複利運用していくことが大事です。複利とは運用で得られた利益を元本に組み込んで再投資する方法です。利益が利益を生み出すため、運用期間が長いほど複利効果が大きくなります。

以下は、30~60歳まで30年間の資産形成をシミュレーションした結果です。

■条件
・毎月の積立金額:3万円
・想定利回り:5%
・運用期間:30年

資産形成シミュレーション

引用:Money Journey積立シミュレーション

運用結果は約2,500万円となり、平均的な生活を送るための老後資金2,280万円を達成できます。特に濃い青色で示された利息合計の割合が大きく伸びているのがわかります。これが、利息を元本に組み入れて再投資する複利運用の効果なのです。

積立シミュレーションのリンクから積立額や運用期間を設定して概算ができるため、ぜひご利用ください。

少額から投資を始めて、資産形成を実践しよう

本記事では資産形成の概要や種類、年代別の戦略を解説しました。年代ごとに必要なお金は異なり、資産形成に使える時間や資金にも差があります。一方で、老後資金の調達は全ての方が必要なものなので、『老後2,000万円問題』は他人事ではありません。

効果的に資産形成していくには、生活防衛資金を確保したうえでNISAやiDeCoなどを活用することが重要です。NISAやiDeCoは月々数千円から積み立てできるので、少額から投資を始めて、資産形成を進めていくとよいでしょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。