- 作成日 : 2024年5月10日
厚生年金の受給に必要な加入期間とは?
厚生年金の受給に必要な加入期間や計算方法、受給資格など、厚生年金に関するあらゆる疑問について解説します。
目次
厚生年金の受給に必要な加入期間とは
厚生年金を受給するためには、一定の加入期間を満たしている必要があります。この加入期間は、将来の年金受給額や受給開始時期を決定するうえで非常に重要です。厚生年金に加入している期間が長いほど、受給できる年金額も多くなるため、多くの労働者にとって加入期間は切っても切れない関係にあります。
具体的には、厚生年金の受給資格を得るためには、まず、国民年金に10年以上加入する(老齢基礎年金が受給できる)必要があります。この10年という期間は、将来的に変更される可能性もありますので、最新の情報を定期的に確認することが大切です。
また、加入期間には国内で働いた期間だけでなく、海外での勤務期間も条件により含まれる場合があります。例えば、日本の企業から派遣され海外で働いた期間は、厚生年金の加入期間として認められることがあります。さらに、任意加入制度を利用して加入期間を延長することも可能です。
加入期間は、将来受け取れる年金額に直接影響を与えるため、自分自身の加入期間を正確に把握し、仮に不足している場合には補う方法を検討することが大切です。加入期間が受給資格である10年に満たない場合、年金受給開始年齢に到達しても年金を受け取ることができません。そのため、早めに対策を講じることが望ましいでしょう。
厚生年金の加入期間の算出方法
厚生年金の加入期間の算出方法について解説します。加入期間は、将来の年金受給額を決定するうえで重要な要素です。正確な加入期間を知ることで、将来受け取れる年金額の見込みを立てることが可能になります。
加入期間の算定基準
厚生年金保険に加入している期間を指します。具体的には、厚生年金保険の被保険者である全期間が含まれます。正社員だけでなく、一定の条件を満たすパートタイマーや契約社員も厚生年金保険の被保険者となるため、これらの勤務期間も加入期間として計算されます。
具体的な算出方法
加入期間の算出は、原則として厚生年金保険の被保険者として加入されている期間に基づいて行われます。勤務していた期間がそのまま加入期間として認められますが、一部事情により加入が継続される特別なケースも存在します。
失業期間の取り扱い
厚生年金の加入要件は「厚生年金適用事業所に雇用される70歳未満の人」が対象なので、失業した場合には厚生年金に加入できません。そのため、年金事務所等にて「厚生年金から国民年金に切り替える」手続きが必要となります。
育児休業期間
雇用保険の育児休業を取得した際は、育児休業した期間について厚生年金に加入しているものとみなされます。なお、育児休業期間中の保険料は、事業主と被保険者どちらも申請により免除となります。
算出方法の具体例
状況 | 算出 |
---|---|
正社員として勤務 | 勤務期間全て加入期間に算入 |
失業期間 | 厚生年金から脱退、国民年金に切り替える |
育児休業期間 | 育児休業期間中も加入期間に算入 |
以上のように、厚生年金の加入期間の算出方法は、勤務形態や生活環境によって変動します。加入期間の正確な把握は、未来の年金生活を安心して送るために不可欠です。定期的な確認と、必要に応じた手続きを忘れずに行いましょう。
受給開始年齢と加入期間の関係
厚生年金の受給を開始する年齢と、必要な加入期間には密接な関係があります。ここでは、受給開始年齢の選択と、加入期間が受給額に与える影響について解説します。
受給開始年齢の選択
厚生年金の受給開始年齢は、原則として65歳からですが、最短で「60歳から」の繰上げ受給や、「65歳を超えて」の繰下げ受給が可能です。受給開始年齢を繰上げることで年金を早期に受け取れ、繰下げをすることで受給額が増えるというメリットがある一方、取消しや変更ができないなどのデメリットもありますので、事前に詳細を確認しておきましょう。
加入期間が受給額に与える影響
厚生年金の受給額は、加入期間に応じて大きく変動します。加入期間が長いほど受給額は増加し、反対に加入期間が短いと受給額は減少します。特に、繰上げ受給を選択した場合は、繰上げした年齢によって受給額が減額となるので、事前に計画する必要があります。
受給開始年齢 | 受給額の影響 | 受給額の減額、増額割合 |
---|---|---|
60歳 | 受給額の減額 | 76%(1ヵ月あたり0.4%×60ヵ月=24%減額) |
65歳 | 標準受給額 | 100% |
70歳 | 受給額の増加 | 142%(1ヵ月あたり0.7%×60ヵ月=42%増額) |
75歳 | 受給額の増加 | 184%(1ヵ月あたり0.7%×120ヵ月=84%増額) |
表で示すように、繰上げ受給は早期での受給を可能にしますが、受給額が減少するため、自分自身の将来計画と照らし合わせた選択が求められます。
※参考:日本年金機構(年金の繰上げ受給)
※参考:日本年金機構(年金の繰下げ受給)
不足分の加入期間を補う方法
仮に年金を受給するための加入期間が足りない場合、どのようにして不足分を補えるかという点です。そもそも加入期間が「10年未満」だと、受給資格を得ることができません。しかしながら、不足分を補う方法があります。
任意加入制度について
任意加入制度とは、国民年金の制度で老齢基礎年金の受給資格を満たしていない場合や老齢基礎年金を満額(加入期間40年)に近づけたい方が、その不足分を補うために60歳以降に任意で加入できる制度です。
厚生年金の制度ではないので、先述した60歳からの繰上げ受給を検討する場合は、任意加入ができません。60歳までに国民年金の受給資格(加入期間10年以上)があるかどうかを必ず確認しておきましょう。
例えば、自営業者やフリーランスとして働いていた方で、国民年金の保険料を払えなかった等の事情により年金の加入期間が少ないケースです。会社員や公務員は、原則、厚生年金に加入しますので必然的に国民年金にも加入しています。
上記の理由により「60歳以降に任意加入制度を利用」することが可能です。そうすることで、受給資格を満たすために必要な加入期間を確保することができます。
※参考:日本年金機構(任意加入制度)
追納について
追納とは、過去に保険料の支払いができなかった期間(免除や猶予)を遡って支払うことができる保険料の後払い制度です。この追納を利用することで受給資格を満たすことが可能です。ただし、追納が可能な期間(遡及期間)には「10年」という制限がありますので、注意が必要です。手続きをする際は、最寄りの年金事務所にて申請をしましょう。また、厚生年金に加入している会社員や公務員の方は、給与天引きで保険料を支払っていますので、追納の心配はなく問題ありません。
※参考:日本年金機構(追納制度)
厚生年金の受給資格の確認方法
厚生年金の受給資格を確認するためには、いくつかの方法があります。
マイナンバーカードを利用したオンライン確認
マイナンバーカードを使用して、個人の年金情報をオンラインで確認する方法があります。政府の提供する年金ポータルサイトにアクセスし、マイナンバーカードと対応するカードリーダーを使用してログインすることで、加入期間や年金額など、自分の年金情報を確認することができます。
日本年金機構に問い合わせ
直接、日本年金機構に問い合わせる方法もあります。電話や窓口での問い合わせが可能です。対面での相談を希望する場合は、事前に最寄りの年金事務所を調べ、予約することをおすすめします。問い合わせる際は、本人確認が必要になるため、運転免許証や保険証などの身分証明書を準備しておきましょう。
年金定期便をチェック
日本年金機構から毎年送られてくる「年金定期便」には、自分の厚生年金加入期間や見込み受給額などが記載されています。この書類を通じて、自分が年金制度にどの程度準備されているかを確認することが可能です。もし年金定期便が手元にない場合は、日本年金機構に請求して、再発行を依頼することもできます。
確認方法 | 必要なもの | 提供情報 |
---|---|---|
マイナンバーカードを利用したオンライン確認 | マイナンバーカード、カードリーダー | 加入期間、年金額 |
日本年金機構への問い合わせ | 身分証明書(運転免許証、保険証等) | 加入期間、見込み受給額など |
年金定期便をチェック | 年金定期便(書類) | 加入期間、見込み受給額など |
厚生年金の受給資格を確認する方法はいくつかあります。自分にとって最適な方法を選び、定期的な確認を心がけることが大切です。そして、年金は長期的なライフプランを考えるうえで非常に重要な資金源ですので、早期から準備し、計画をするようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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