- 更新日 : 2024年3月22日
つみたてNISAが元本割れする確率は?防ぐコツや対処法を解説
2024年からNISA制度が新しくなり、多くの方が投資に関心をもつようになりました。しかし、NISAで損をするリスクを心配する方も多いでしょう。
今回は、つみたてNISA(または新NISA「つみたて投資枠」)が元本割れしてしまう確率について説明します。元本割れを防ぐためにできることや、元本割れしてしまった時の対処法についても紹介します。
目次
つみたてNISAが元本割れする確率は?
つみたてNISA(2024年以降は新NISAの「つみたて投資枠」)が元本割れする確率は、保有期間によって異なります。
以下、金融庁が示すデータを参考に、積立・分散投資を一定期間保有した場合に元本割れする確率を見てみましょう。
1年間なら20~40%
出典:金融庁ウェブサイト
上記は、積立・分散投資で毎年同じ額の投資をした場合の、各年末時の累積運用益を示したグラフです。国内の株・債券では8回(折れ線B)、国内・外国の株・債券では4回(折れ線C)前年比で下落していることがわかります。
もし1年間で運用すると、20~40%という高い確率で元本割れしてしまうリスクがあると考えられます。
ただし、長期的に平均して見ると、緩やかではあるものの運用実績に効果が現れていることもわかります。とくに国内・外国の株・債券の推移を見ると、それが顕著です。
5年なら約10%、20年なら0%
出典:金融庁ウェブサイト
上記グラフは、毎月同額を国内外の株式と債券に積立投資を行い、5年間と20年間運用した場合の収益率を示したグラフです。
5年間の保有期間では、元本割れの出現頻度が10%強となっています。1年よりリスクは抑えられますが、5年程度ではまだ元本割れの可能性は十分あるといえるでしょう。
一方で、20年間運用した場合、元本割れの出現頻度は0%となりました。一般的には、10年以上運用をすると元本割れする確率がゼロに近くなるといわれています。
つみたてNISAで元本割れを防ぐコツはある?
つみたてNISAで元本割れを防ぐためのコツを4つ紹介します。投資で損をしてしまう確率をできるだけ抑える基本的な考え方としてご参考ください。
10年以上長期投資する
前述の通り、つみたてNISAは10年以上の運用で元本割れのリスクを限りなくゼロにすることが可能です。
10年以上長期投資するなかでは、リーマンショックや新型コロナウイルスなど、世界全体で景気を大きく変動させる事象が発生する可能性はあります。実際にリーマンショック時には、株価が半値になってしまったこともありました。
しかし、一時的な不景気に惑わされず、長期的に保有し続けることが大切です。金融庁の事例はリーマンショック(2008年)をまたいだ20年間の運用でしたが、収益率は安定し元本割れは発生していません。
ローリスクの投資商品を選ぶ
投資はどのようなものにもリスクが伴いますが、そのなかでもリスクの低い商品を選ぶことで、景気による変動をできるだけ抑え、元本割れを防ぐことができるでしょう。
ローリスクの投資商品には、国内株だけに投資する商品ではなく、国内株・海外株・国内債権などのさまざまな投資先に分散投資できる「バランス型」や、複数の投資信託に投資できる「ファンド・オブ・ファンズ」などがあります。
ポイントが貯まる方法で積み立てる
つみたてNISAを含む投資信託には、クレジットカードのポイントが貯まる「クレカ積立」という方法もあります。ポイントは運用益ではありませんが、実質的な利益を増やすことが可能です。株価の変動を受けずにコツコツ貯まっていくポイントは、投資をするなかで精神的な安心要素になるかもしれません。
クレカ積立できるクレジットカードは多数あるため、ポイント還元率の高さや、普段使うポイントかどうかといった観点から、自分にあったカードを選びましょう。
プロに相談する
投資初心者の個人でも簡単に始められる投資信託ですが、不安な場合はプロに相談するのも1つの手です。金融庁を中心に国を挙げてNISAに力を入れている昨今、相談窓口は法人・個人問わず数多く存在しています。
銀行、証券会社、保険会社、ファイナンシャルプランナーなどで投資の相談が可能なため、自分が話しやすく信頼できる窓口で相談してみましょう。なお、保険会社は取扱商品が少なかったり、個人のファイナンシャルプランナーは人によって経験が少なかったりする可能性もあります。相談先は慎重に選びましょう。
つみたてNISAが元本割れした時の対処法
つみたてNISAは、長期投資していても元本割れする確率がゼロではありません。20年間投資して、いざ非課税期間の終了が近づいてきた時、元本割れしてしまっていたらどのような対処をすればいいのでしょうか。新NISAの「つみたて投資枠」の場合の考え方も紹介します。
現金化する
つみたてNISAは定期預金や年金保険などとは異なり、いつでも現金化が可能です。2023年までの旧NISAでの非課税保有期間は20年間ですが、20年経過するのを待つ必要はありません。
非課税期間終了の数年前から、現金化する準備を進めておきましょう。いつ元本割れを起こすかは、誰にも予測できないものです。できる限り長期間の投資をしつつ、タイミングを見て売却し、現金として資産を確保しておくのも1つの手段です。
課税口座に移して再投資する
つみたてNISAは非課税期間が終了した場合、課税口座に移して再投資することが可能です。NISAとは異なり、ここからは課税対象になってしまいますが、再投資すれば元本割れした分を取り戻せる可能性はあるでしょう。なお、現状の投資先で元本割れを起こしている状況なら、再投資の際の投資先は選びなおした方がいいかもしれません。
なお、旧NISAの口座を新NISAに移管(ロールオーバー)することはできません。再投資するなら、課税対象になることは認識しておきましょう。
【新NISAの場合】保有し続ける
2024年からの新NISAでは、「つみたてNISA」という投資枠はなくなり、「つみたて投資枠」という名称になりました。仕組みも変更となり、新NISAのつみたて投資枠での非課税期間は「無期限」となっています。旧NISAでは20年間という制限がありましたが、新NISAなら30年、40年と非課税で保有し続けることが可能です。
長期投資すればするほど元本割れのリスクは低下します。20年のリミットがなくなった新NISAなら、可能な限り長期で保有していくことが得策といえるでしょう。
つみたてNISAに向いている人
前章まで解説したNISAの特徴を踏まえると、次のような人がつみたてNISAに向いているといえます。
- 10年以上長期投資できる見込みがある人
- 少額から投資を始めたい人
- ある程度プロに任せて投資したい人
- 非課税で投資したい人
つみたてNISAは、元本割れのリスクを理解したうえで、長期間にわたり投資をしていきたい人に向いています。元本割れしないように運用したいなら、10年以上の投資が前提となるでしょう。
月100円、1,000円といった少額でも、毎月コツコツと投資し続けることが成功のコツです。相場に惑わされることなく、一定ペース、一定金額の投資を継続していきましょう。
また、つみたてNISAをはじめとした投資信託はプロが運用するため、投資に詳しくない人にも向いています。初心者向けの手法でもあるので、これまで投資の経験がなかった人でも気軽にチャレンジできるでしょう。
つみたてNISAをやめたほうがいい人
反対に、次のような人はつみたてNISAには向いていません。
- 短期的なリターンを求める人
- 貯蓄する余裕がない人
- 元本保証を求める人
つみたてNISAは長期での資産形成を目指す投資信託の仕組みです。いわゆる「投資家」のイメージのように、短期間の株式投資で大きな利益を生み出せるものではないため、すぐにリターンを求める人には向いていません。
また、継続的に投資し続けることに意味があるため、「毎月余裕がなく、NISAの金額を捻出するのがやっと」という人はまず貯蓄から始めたほうが良いでしょう。
加えて、つみたてNISAに元本保証はありません。絶対に元本割れしたくないという場合は、銀行口座への貯金のほうが適しているかもしれません。
つみたてNISAの運用利益を計算するには?
つみたてNISAの運用利益は簡単に計算できます。運用利益を計算するために必要な4つの数字を用意して、シミュレーションツールで計算してみましょう。
<運用利益を計算するために必要な4つの数字>
①資産運用の元本……最初に入金する元手の資金。0円でも試算可能
②毎月の積立金額……毎月一定金額入金して積み立てていく資金
③想定利回り……投資額に対する収益の割合
④運用期間……つみたてNISAを運用する期間
①②④は自分の希望する金額や期間を想定してみてください。③の利回りについては、金融商品によって異なるため、投資したい商品がすでに決まっている場合は、その平均利回りを参考にしましょう。とくに決まっていない場合は、前述の金融庁データより、20年運用した場合に最も出現頻度が高い利回り、「4〜6%」を参考にしてみてください。
想定する数字が決まったら、さっそくシミュレーションしていきましょう。今回は「Money Journey」の「積立シミュレーション」を活用します。
元本は10万円で積立金額は3万円、利回りは4%で20年間運用した場合をシミュレーションしてみました。
シミュレーションした結果、20年で資産は11,225,497円になりました。利息分だけでも3,925,497円の利益を生んでいます。
つみたてNISAの非課税期間が終わった後の手続き
2024年からスタートした新NISAから、非課税保有期間が無期限になりました。しかし、2023年末までに購入したNISA商品は、一般NISAが5年、つみたてNISAが20年の非課税保有期間であり、新NISAへのロールオーバーはできません。
旧制度のつみたてNISAで20年間の非課税期間が終わったら、適切な手続きを行いましょう。非課税期間終了後に放置していると、自動的に課税口座に移管されます。
課税口座で引き続き投資をしていきたいと考えている場合は、そのままでも問題ありません。課税されたくない場合は、売却して現金にするか、再度新NISAのつみたて投資枠を始めるかの2択になります。
現金化する際は、一気に20年分を売却しなくても問題ありません。非課税期間が終了した分だけ、小分けに少しずつ売却していくことが可能です。喫緊で大きな資金が必要でない限りは小分けに売却していき、つみたてNISAとして投資できる期間を最大限活用しましょう。
つみたてNISAは長期保有で元本割れを防げる
つみたてNISAをはじめとした投資は元本割れのリスクが少なからずありますが、10年以上の保有で元本割れの確率を0%に近づけられます。一時的な金額に一喜一憂せず、非課税期間が満了となる20年間、一定金額を投資し続けることが成功確率を高めるコツといえるでしょう。
なお、2024年から始まった新NISAのつみたて投資枠は、非課税期間が無期限になるので、さらに長期間の投資が可能です。旧NISA(つみたてNISA)と新NISA(つみたて投資枠)の特性を理解して、自分にあった資産形成を始めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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