- 更新日 : 2023年11月10日
FIREするにはいくら必要?達成のためのステップとは
FIREとは「Financial Independence」と「Retire Early」の頭文字からなります。この記事ではリタイアやサイドFIREとの違いやメリット・注意点を紹介します。FIRE達成にいくら必要なのか、そして達成までのステップも解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
FIREとは何か?
FIREとは「Financial Independence(経済的自立)」と「Retire Early(早期リタイア)」の頭文字をとった造語です。
言葉の意味そのままに経済的に困らない程度の資産を形成し、早期に仕事を引退することで達成されます。
FIREは、従来のリタイアやサイドFIREなどと混同しやすいですが、異なる概念です。
用語の整理とともにFIREの概念を理解しておきましょう。
リタイアとの違い
リタイアは仕事を辞めて引退することを意味しており、一般的に定年退職を指す言葉です。FIREの概念が登場する前から、定年退職よりも早めに引退する「早期リタイア」という言葉はありました。
早期リタイアとFIREは、定年前に仕事を辞めるという点では同じですが、その後の生計の立て方が異なります。
従来の早期リタイアは仕事を辞めてから人生を、蓄えた貯蓄を切り崩して生活する方法です。一方で、FIREは資産運用でお金を増やしながら生活することを前提にするため、資産運用に必要な元本を蓄えます。
従来の早期リタイアでは莫大な貯蓄額が必要でしたが、資産運用の元本を用意すればよいFIREなら実現可能な人は多いでしょう。
サイドFIREとは?
サイドFIREとは、資産運用からの運用益を生活費の主軸としながらも、短時間勤務やアルバイトなどで就労収入を得ながら生活することです。
定年退職後も時短勤務をしたり、副業したりして収入を補填できる場合は、必要な貯蓄額も少なく済みます。
社会とのつながりややりがいを維持するために仕事を継続して、サイドFIREを選択する人も多いものです。
FIREのメリット
FIREは、単に早期退職する以上の意味を持っています。FIREを目指す過程は、資産の管理や貯蓄の方法、生活スタイルを再考することで、豊かな生活を手に入れるプロセスとも言えるでしょう。
FIREによって得られるメリットはさまざまですが、中でも特に重要な5つのメリットを紹介します。
自由な時間が増える
FIREの実現によって得られるメリットの1つが「時間」です。
多くの人は1日の大半を仕事に費やしており、趣味や家族との時間、学びや運動などの自分磨きをする時間が限られています。FIREを達成すると、それまで仕事に費やしていた時間を自由に使えるようになります。
毎日が週末のような自由な時間が増え、望むことをする時間が手に入るでしょう。自由な時間が増えれば、生活の質を大きく向上させる要因となり、自分らしい生き方の追求が可能です。
仕事のストレスがなくなる
仕事のストレスがなくなることもFIREのメリットです。仕事は多くの人にとってストレスの原因になります。
厚生労働省によると2020年の「仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合」は54.2%で、半数以上の人が仕事にストレスを感じているのが実状です。
業務内容や人間関係など、ストレスの原因は人それぞれですが、FIREを達成することで日常的なストレスから解放されます。
ストレスが少ない生活は、身体的、精神的な健康につながるだけでなく、人生をより楽しく、有意義にする手助けとなるでしょう。
生活する場所を選ばない
FIREを達成すれば、生活する場所の制限はなくなります。
多くの人が会社までの通勤によって生活の場を制限されますが、FIREを達成すれば会社を考慮する必要はなくなります。
また、都市部の高い生活費や雑踏から離れ、自然豊かな場所や低い生活費の地域への移住も可能です。日本を離れて、海外での生活を選ぶこともできます。
生活する場に縛られない生き方は、自分らしさを追求するチャンスになるでしょう。
お金の知識が身につく
FIREを達成する過程で、資産管理や投資、節約術など、お金に関する深い知識やスキルが身につきます。
節約や資産運用の知識なしにFIREを達成するのは難しく、おのずと深い知識や経験が積み重なるためです。
お金の知識を得ることは人生を豊かにします。FIREを目指す過程で身につけたお金の知識は、日常生活や将来の計画に活かせるだけでなく、自由な生き方を求める友人へのアドバイスなどにも役立つでしょう。
新たな挑戦がしやすい
FIREの達成は、新たなチャレンジにもプラスに働きます。「仕事が忙しくてやりたいことができない」「余裕がなくて挑戦どころではない」と考える人は多いもの。
FIREによって経済的な安定を手に入れることで、新しい趣味やビジネス、ボランティア活動など、さまざまなことに挑戦しやすくなるでしょう。
新たな挑戦は、自分自身の成長や新しい価値観の発見、さらなる人生の豊かさにつながります。
FIREのリスクや注意点
FIREは多くのメリットを持つ一方で、リスクや注意点も無視できません。資産の管理や早期退職は、計画的に行わないと意図しない結果を招くことがあるため、注意すべきポイントの理解が重要です。以下にFIREのリスクや注意点について3つの内容を解説します。
思い通りに運用できない可能性がある
FIREの実現には、生計を立てるための資産運用が不可欠です。
しかし、金融市場の予測は難しく、どれほど入念に計画を立てても、市場の変動や経済状況の変化により思い通りに運用できないリスクがあります。
例えば、株価の大幅な下落や金利の変動は、資産の評価額を大きく減少させる可能性があります。そのため、適切なリスク管理や、時間や投資先を分散させてポートフォリオの充実を図ることが必要です。
ときにはファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談したり、リスクを抑える方法を常に学んだりする姿勢が重要となります。
やりがいを失うことがある
仕事はストレスになる一方で、やりがいを感じる人もいます。
FIREによって仕事の時間がなくなるとやりがいがなくなり、喪失感を味わう人もいるでしょう。
特に仕事を通じて自己実現を果たしたり、社会的な役割やアイデンティティを実感できていたりする人は注意が必要です。
自由な時間が増えても、何をすればよいのかわからず、孤独感や精神的な不安にかられる場合もあります。
FIRE達成後のライフプランを考え、趣味や新しい学びに触れておくことが重要です。
予想外の出費への対応が困難
FIREを達成する際の計画は、将来の生活費や必要な資金を予測し、それに基づいて資産を築くものです。
しかし、突然の病気や事故、家族の支援が必要となる状況など、予想外の出費が発生することも考えられます。急な出費に対応するための十分な資金の確保や保険の加入など、事前の準備が必要です。
予想以上のインフレ率上昇や、長寿による医療費の増加など、将来の経済状況の変化も考慮したうえで余裕のある計画を立てておきましょう。
FIRE達成にはいくら必要?
FIRE達成に必要な資産は、年間支出の25倍が目安です。25倍の数字は、資産を目減りさせずに生活できる目安である「4%ルール」に基づいています。
4%ルールとはトリニティ大学(米国テキサス州)の博士が発表した金融調査で、年間の支出を投資元本の4%以内にすれば、資産を減らさず生活できるとしたものです。
資産の4%で生活するということは、必要な元本は支出の25倍となります。
総務省「2022年家計調査」では2人以上世帯の月の消費支出は平均290,865円でした。年間支出は約350万円となるため、FIREに必要な資産は25倍の8,750万円となります。
ただし、年間支出額はそれぞれの世帯で異なるため、あくまで目安です。物価上昇率が急激に高くなったり、思い描いた資産運用ができなかったりする可能性もあります。
支出を減らし、可能な限り多くの資産を作ることが必要でしょう。
参考:家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)|総務省統計局
FIRE達成のためのステップ
FIRE達成のためには必要なステップがあります。以下の3ステップを理解して、実践してみましょう。
【ステップ1】月々の支出を把握する
FIRE達成の第一歩は月々の支出を把握することです。自身のお金の流れを正確に把握して、無駄な出費を削減し、投資可能な資金を増やす必要があります。
支出の把握には、エクセルで記録したり家計簿アプリを活用したりする方法が有効です。保険料や通信費などの固定費の見直し、日常の余分な支出を明確にすることは、節約するきっかけになるでしょう。
【ステップ2】必要な資金を計算する
FIREを達成するためには、リタイア時に必要な資金を計算するステップも欠かせません。
ステップ1で把握した月々の支出をもとに、年間支出の25倍を目安として将来必要な生活費を算出します。
年間支出が300万円なら7,500万円、200万円なら5,000万円が必要な資金となりますが、実際は世帯人数・年齢、生活する地域によって異なり、将来的に変動する可能性があります。
予期せぬ出費や物価上昇に備えて、目標額よりも余裕を持った計画が望ましいでしょう。
【ステップ3】資産形成を始める
必要な資金額を計算した後は、具体的な資産形成のステップです。資産形成は複利効果を発揮するために、早めに始めて長期的な視点で運用することが重要となります。
資産形成には株式投資や、不動産投資などさまざまな方法がありますが、特徴やリスクは異なります。
これから投資を始める場合は、NISAなどの税制優遇を活用し少額から積み立て投資をしながら経験と知識を身につけていくとよいでしょう。
余剰資金すべてを株式投資などに回すのではなく、損失が出ても生活できるだけの防衛資金を預貯金で確保しておくことも重要です。
FIREを意識しながら資産形成をしてみよう
本記事では、FIREの概要やメリットと注意点、達成までのステップを解説しました。
FIRE達成には支出を把握し、目標資金を計算したうえで、資金を作るための資産形成をする必要があります。
FIRE達成は簡単ではありませんが、その過程でお金の知識が身についたり、節約術を実践したりする副次効果も得られます。
仕事を完全に辞めずにサイドFIREを目指す方法もあるため、自身に合ったやり方を考えながら資産形成を始めるとよいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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