- 作成日 : 2024年6月21日
資格手当とは?わかりやすく解説
企業や組織で従業員に向けて資格手当を設けている場合、どのようなメリットあるのでしょか。本記事では、資格手当の基本的な意味や各資格の手当の相場、導入するメリット、注意点について解説します。
目次
資格手当とは
資格手当とは、従業員が特定の資格を保有している場合や取得した場合に、その努力や能力を認めたうえで、企業が該当する従業員に支給する手当のことです。ちなみに資格手当は、資格を取得している従業員のモチベーション向上や、専門性やスキルの向上を促進する目的で設けられている場合があります。
資格手当の支給には、法律上の規定はなく、企業によってさまざまな条件が設けられています。一般的には、資格が業務に直結していたり、継続的なスキルアップが望まれたりする際に支給される場合があるのです。
資格手当が支給される代表的な資格と手当の相場
以下に、資格手当が支給される代表的な資格とその手当の相場の例を紹介します。
国家資格の資格手当の相場
資格 | 手当の相場 | 業界 |
---|---|---|
中小企業診断士 | 1万~3万円 | 経営コンサルタント業界 |
宅地建物取引士 | 5,000~3万円 | 不動産業界 |
社会保険労務士 | 5,000~5万円 | 労働法務業界 |
ファイナンシャルプランニング(FP)技能士 | 10,000~20,000円 | 金融業界 |
危険物取扱者 | 3,000~1万円 | 化学・医薬系の企業 |
中小企業診断士
中小企業診断士とは、中小企業の経営をコンサルティングに携わる国家資格です。経営分析、事業計画の策定、財務管理など、中小企業の経営支援に必要な知識とスキルが求められます。
宅地建物取引士
宅地建物取引士(以下、宅建)とは、不動産取引における重要事項の説明や契約締結を行うための国家資格です。不動産の売買、賃貸、仲介などの際に、顧客に対して適切な情報提供と法的な手続きを行います。
社会保険労務士
社会保険労務士(以下、社労士)とは、労働ならびに社会保険に関する手続きや相談を行うための国家資格です。労務管理、社会保険の事務手続き、従業員の就業規則の作成など、企業の人事労務管理をサポートする専門家という位置づけとなります。
ファイナンシャルプランニング(FP)技能士
ファイナンシャルプランニング(以下、FP)技能士には、1級、2級、3級の等級があり、個人の資産設計や家計管理を行うための国家資格です。資産運用、保険、税金、年金などといった、お金にまつわる幅広い知識を持ち、顧客のライフプランニングをサポートしています。
危険物取扱者
危険物取扱者とは、危険性のある物質を安全に取り扱うための国家資格です。ガソリンスタンドや化学工場など、火災や爆発の危険性がある施設で、危険物の保安監督や法令遵守を行います。
民間資格の資格手当の相場
資格 | 手当の相場 | 業界 |
---|---|---|
TOEIC(700点以上) | 3,000~2万円 | 多くの企業 |
日商簿記 | 3,000~2万円 | 会計や財務に関連する業務 |
TOEIC(700点以上)
英語コミュニケーション能力を証明する資格です。L&R(リスニングとリーディング)のスコアが合計で700点以上あると、外資系で必要とされるレベルの英語力があると見なされます。
日商簿記
日商簿記とは、簿記と会計の知識を証明する資格です。級別に分かれており3級は簿記の基礎、2級は中級、1級は上級の知識を有していると認められます。
IT業界で使える資格と資格手当の相場
国家資格
資格 | 手当の相場 |
---|---|
基本情報技術者 | 5,000~1万円 |
応用情報技術者 | 5,000~2万円 |
ITストラテジスト | 2万~3万円 |
ITサービスマネージャ | 1万~2万円 |
プロジェクトマネージャー | 1万~2万円 |
システム監査技術者 | 1万~2万円 |
エンベデッドシステムスペシャリスト | 1万~2万 |
ネットワークスペシャリスト | 1万~2万円 |
基本情報技術者
基本情報技術者とは、ITエンジニアとしての基礎知識を証明する国家資格です。ソフトウェア開発、ネットワーク、データベースなどの知識が求められます。
応用情報技術者
基本情報技術者の内容をさらに深く掘り下げた国家資格であり、IT技術の他にも管理や経営といった広範な知識と応用力を習得できます。
ITストラテジスト
企業や組織の最適なIT戦略を考え、実行できるようサポートする人材を育成する国家資格です。
ITサービスマネージャ
情報システムにおいて信頼性の高いサービスを提供できるレベルまで習得できる国家資格です。
プロジェクトマネージャ
システム開発の責任者の立場としてプロジェクトを企画立案し、それを管理・運営できる知識とノウハウを習得する国家資格です。
システム監査技術者
情報システムの運用状況や管理において内部の有効性を踏まえて評価し、問題点を洗い出し、それを改善案として提示できる役割を担っています。IT系の国家資格の一つです。
エンベデッドシステムスペシャリスト
システムエンジニアの中でも幅広い専門知識とプロジェクトチームの管理能力を身につけられる国家資格です。
ネットワークスペシャリスト
ニーズに合ったネットワークを構築・運用することができる能力を認めている国家資格です。
民間資格
資格 | 手当の相場 |
---|---|
Linux技術者認定試験 | 2万~3万円 |
シスコ技術者認定試験 | 5,000円~2万円 |
Linux技術者認定試験(LinuC)
Linux技術者認定(LinuC;リナック)とは、Linuxの基本操作・システム管理が行えることを証明できる民間資格です。レベル1、レベル2、レベル3、システムアーキテクトの4つのレベルを設けています。
シスコ認定試験
シスコ認定試験は、シスコシステムズ社が主催している、ネットワークエンジニアのスキルを認定する試験です。技術スキルを磨き、さらにネットワークの知識を築くという意味合いとして3年間の有効期限を設けています。継続して資格を保持するには、再認定用の試験を受ける流れとなります。
資格手当は、従業員のモチベーション向上とスキル向上につながるため、会社にとってもメリットのある制度だと言えます。ただし、資格取得のための費用を会社が負担するかどうかは、会社によって方針が異なるので注意が必要です。
資格手当を導入するメリット
従業員のモチベーション向上
資格取得によって知識や技能が認められることで、仕事に対する自信とやりがいを、結果として職務へのモチベーションが向上します。さらに、各々の従業員がキャリアパスを明確に見据えながら働ける環境が整うため、職場全体の離職率の低下にも寄与することが期待されます。
人材のスキル向上
資格を取得する過程で得る学習や経験は、従業員のスキルアップに直結します。さらに、高い技術力や専門知識を持った人材を育成することが可能です。これにより、企業としての競争力が向上し、市場でのポジショニングの強化を図れます。
社内の競争促進
資格手当の導入によって、社内で積極的に資格を取得しようとする動きが生まれます。従業員同士の意欲を高め、チーム全体のパフォーマンス向上を促す効果があります。
採用の強化
資格手当を設けることで、スキルやキャリア向上を重視する優秀な人材が集まりやすくなります。特に専門性を要する分野においては、採用制度が人材確保の重要な要素となるでしょう。
社外への良いイメージ
資格を支援する企業としてのブランドが確立し、他社や業界内で高い評価を受ける可能性が高まります。具体的には、業界内での表彰や評価を獲得する機会が増え、企業の信頼性や専門性をアピールする催事への参加が増えることが期待されます。
資格手当を導入する際の注意点
合法的な資格の選定
資格手当を導入する際には、対象となる資格が法律や業界の基準にのっとっているかを確認することが重要です。国家資格や公認資格など、明確な認証を受けている資格に限定することが推奨されます。例えば、看護師や電気工事士などの国家資格は、国が認定することで専門性が保証されるでしょう。
資格取得支援の範囲
従業員が資格を取得するための具体的な支援範囲を明確に設定する必要があります。試験費用の全額支給、学習材料の提供、勉強会の開催など、支援する内容を決めておきましょう。会社によってはオンライン講座の受講料も支給する場合があります。
社内基準の設定
資格の種類、業務への適用度、習得難易度の観点から、どの資格が手当の対象になるかを明確にし、その基準を従業員に周知することが必要です。社内基準の例として挙げられるのが、TOEICのスコアが高いほど手当を増やすなどの社内基準を設けることが挙げられます。
資格手当の額の決定
資格に応じた手当の金額を決定する際には、その資格が業務に与える影響と習得の難易度を考える必要があります。習得難易度に応じてバランスを取ることが重要です。一般的に資格の難易度が高く、業務上での必要性が高い資格ほど、資格手当が高めに設定されています。
継続的な評価
資格手当の制度は、業務内容や市場の需要に合わせて見直す必要があります。定期的に制度の有効性を評価し、必要に応じて更新することで、制度の適切性が保たれます。年に一度の見直しを意識してみましょう。
内部コミュニケーションの強化
資格手当の導入と継続的な管理として、従業員からの質問時間を設けたり、専用の相談窓口を開設したりといった社内コミュニケーションの場を設ける必要があります。従業員からのフィードバックを受け入れ、疑問に対して明確かつ迅速に回答を行うシステムを整えると、相互のコミュニケーションのさらなる強化につながるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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