- 作成日 : 2024年5月17日
年金とは?基礎からわかる年金制度の全て
この記事では年金がどのようなものか、その種類や仕組み、支払い方法から受給資格、受給額の計算方法に至るまで、基礎からわかりやすく解説します。自分の年金を正しく理解し、将来に備えるための知識を身につけましょう。
目次
年金とは
年金とは、個人が老後や障害、死亡時に生じる経済的不安を避けるための保障制度のことです。具体的には、労働者やその家族が、リタイア、障害、死亡などによって収入が途絶えた場合に備え、国や私的機関から定期的に給付されます。この制度は、将来にわたって安定した生活を送れるように設計されており、受給資格や支払額は、個人が納付した保険料や加入期間に基づいて決まります。
日本での年金制度は、主に「公的年金」と「私的年金」の2つに大別されています。公的年金は、国民の老後生活を保障することを目的とし、全員が加入する必要がある制度です。
これに対して「私的年金」は、公的年金だけでは不十分と感じる個人が、自分の意思で加入する任意の制度です。これらの年金は、個人の将来にわたる安定した収入源として重要な役割を担っています。
年金の種類
日本における年金制度は、将来の生活を支える重要な役割を担っており、国民の老後の安定した生活を支援する目的があります。ここでは、それぞれの年金の種類について詳しく見ていきましょう。
公的年金
公的年金とは、国や地方公共団体が管理している年金制度です。国民の老後の生活を保障する基盤となります。主に国民年金と厚生年金の2つに大別されます。
国民年金
国民年金(基礎年金)は、全ての国民が加入対象となる公的年金制度です。自営業者、フリーランス、パートタイマーなど雇用形態に関わらず、日本在住の20歳以上60歳未満の全ての方が制度に加入することが義務づけられています。将来、老齢基礎年金として受給することができるほか、一定の障害の状態になったときや、死亡した際には遺族が給付を受けられる仕組みがあります。
厚生年金
厚生年金(雇用保険年金)は、主に企業に勤めるサラリーマンや公務員などが加入する公的年金制度です。国民年金に加えて厚生年金に加入することで、老齢時に受け取れる年金額が増加し、より充実した老後の生活をサポートします。厚生年金の保険料は、働いている企業や組織が半分負担する仕組みとなっています。
私的年金
私的年金とは、公的年金とは別に個人や企業が加入する任意の年金制度のことで、公的年金だけでは不十分な老後の生活をサポートするための補完的役割を果たします。
確定拠出年金
確定拠出年金は、加入者が自ら投資する商品を選び、その運用成績によって将来受け取れる年金額が決まる制度です。企業や団体が用意するプランの中から選ぶことができ、将来に向けた資産形成を目的とした年金制度となっています。加入者の自由な選択による運用が特徴です。
確定給付企業年金
確定給付企業年金は、企業が従業員のために設ける年金制度で、退職時に受け取れる年金額はあらかじめ定められています。勤続年数や給与額に基づいて計算され、安定した収入を確保できる仕組みです。
国民年金基金
国民年金基金は、国民年金だけでは足りないと感じる方が、老齢年金を増やすために加入する任意加入の年金制度です。将来の年金生活をより安心させるための選択肢の一つとなっています。
個人年金保険
個人年金保険は、保険会社が提供する年金商品で、長期的な資金計画のために個人が加入する保険です。老後の生活資金を目的として利用されています。
年金の仕組み
年金制度は、加入者が将来にわたって経済的な安定を得られるように設計された社会保障の一つです。この制度は、加入者の年齢、収入、就労形態などに応じて異なる公的年金と私的年金の2つの主要なカテゴリーに分けられます。
公的年金では、国民全員が加入義務を持つ国民年金や、雇用者とその会社が共同で加入する厚生年金があり、これらの基礎の上に私的年金が加わることで、より充実した保障を目指しています。
年金の支給は、一定の年齢に達した後、一定の条件を満たした人々に対して行われます。基本的に加入期間が一定期間以上あること、そして加入者が65歳に到達したことが支給の基本条件となり、厚生年金では加入期間や収入に基づく計算式で受給額が決定されます。
なお、国民年金は満額受給できる金額が毎年見直されますが、私的年金は加入者が自ら選んだプランによって運用するため、運用実績によって将来的に受け取ることができる受給額が変化します。
年金制度の主要な目的は、高齢者の経済的な自立と安定した生活を確保することです。この仕組みを通じて、加入者は高齢になっても安定した収入源を持つことができ、生活保護の最終手段ではなく、予測可能な将来設計を立てることが可能です。また、年金制度は高齢者のみならず、障害者や遺族に対しても経済的な支援を提供することで、社会全体の保護を目的としています。
年金の支払い方法
ここでは、公的年金と私的年金の支払方法について詳しく説明していきます。
公的年金の支払い方法
公的年金の支払い方法には、主に国民年金(第一号被保険者)、厚生年金保険(第二号被保険者)、共済組合(公務員など)があります。これら公的年金の支払いは基本的には給与などからの天引き(源泉徴収)で行われますが、自営業者やフリーランスなど第一号被保険者の場合は、自ら納付する必要があります。
私的年金の支払い方法
私的年金には、確定拠出年金や個人年金保険といった種類があります。これらの私的年金では、加入者が自ら設定したプランに基づく月々の保険料を支払うことで将来の年金を受給する条件をクリアにします。支払いは、銀行口座からの自動引き落としやクレジットカード払いなど、複数の支払い方法で展開されています。
年金保険料の納付期間
基本的には20歳から60歳までの40年間にわたり、国民年金保険料を納付しますが、納付を完了することで、老後に満額の老齢基礎年金を受給できます。厚生年金や共済組合などに加入している場合には、厚生年金保険料に国民年金保険料も組み込まれているため、国民年金を自ら納付する必要はありません。
年金の未納と納付猶予
国民年金の保険料を納付することが難しい場合、免除や納付猶予制度を利用することができます。この制度を利用することで、将来的に受け取る年金額が減少する可能性があるものの、経済的な負担を軽減することが可能です。利用する制度によっては、将来受け取る年金額に影響が出るため、注意しましょう。
年金の受給資格
年金を受給するためには、特定の条件を満たす必要があります。受給資格は、制度ごとに異なりますが、一般的に年齢、加入期間、居住歴などが主な基準となります。ここでは、日本国内で一般的な公的年金制度における受給資格について詳しく解説します。
国民年金の受給資格
国民年金では、基本的に20歳以上60歳未満の日本に住む農業者や自営業者、学生、無職の人(※外国人も含む)が加入対象となります。受給資格は、主に次の3つに分けられます。
- 老齢基礎年金:加入期間が10年以上あり、65歳に達した人
- 障害基礎年金:加入期間に関係なく、障害状態にある人
- 遺族基礎年金:被保険者が亡くなった場合に一定の条件を満たす遺族に支給
厚生年金の受給資格
厚生年金保険は、主に会社員や公務員などの被保険者が対象です。こちらも受給資格は年金の種類によって異なります。
- 老齢厚生年金:加入期間が10年以上で、65歳から受給が開始
- 障害厚生年金:加入中に特定の障害状態と認められた場合に支給
- 遺族厚生年金:被保険者が亡くなった場合、一定の条件を満たす遺族に支給
私的年金の受給資格
私的年金の受給資格は、加入している年金商品によって大きく異なります。一般的には、契約時もしくは加入時に設定された年齢に達すると年金の支払いが開始されます。ただし、確定拠出年金や個人年金保険など、選択したプランによって細かな条件が設けられています。
受給資格の確認方法
自分がどの年金制度に加入しているのか、そして受給資格を満たしているのかを知っておくことは非常に重要です。公的年金については、日本年金機構のウェブサイトや、最寄りの年金事務所で確認することが可能です。私的年金については、加入している保険会社や金融機関に問い合わせることで確認できます。
年金受給額の計算方法
年金受給額の計算は、国民が将来受け取れる年金金額を理解するうえで非常に重要です。この章では、公的年金である国民年金と厚生年金の受給額の算出方法について説明します。
国民年金(老齢基礎年金)の受給額計算
老齢基礎年金の受給額は、加入期間(保険料納付月数)によって決まります。具体的な計算方法は以下の通りです。
基本的な計算式: 老齢基礎年金の受給額は、以下の計算式で求められます。
受給年額 = 保険料納付月数 ÷ 480 ×816,000円(2024年度)
ここで、保険料納付月数は、20歳から60歳までの40年間(480カ月)保険料をちゃんと納付していた場合、満額の約82万円を受け取れますが、納付している期間が短くなるとそれだけ年金額が減る仕組みです。
保険料の免除期間がある場合、計算式は少し複雑になります。具体的には、保険料免除期間がある場合の計算式は以下の通りです。
受給年額=779,300円 ×(保険料を納付した月数 + 保険料全額免除された月数× 4/8 +保険料を1/4納付した月数× 5/8 +保険料を半額免除された月数 × 6/8 +保険料を3/4納付した月数 × 7/8)÷ 480
この計算式により、保険料の免除期間がある場合でも、その期間に応じて年金額が計算されます。
国民年金の受給額の具体例
例1: 自営業者の場合
保険料納付済期間: 27年間(324カ月)
保険料半額免除期間: 10年間(120カ月)
保険料全額免除期間: 3年間(36カ月)
60歳以後の任意加入被保険者期間: 5年間(60カ月)
この場合、保険料納付済期間は324カ月 + 60カ月 = 384カ月となります。また、保険料半額免除期間は120カ月、残りの保険料全額免除期間は、36カ月となります。
例2:保険料を納付していない期間がある場合
20歳から60歳までの間に保険料を納付していない期間がある場合、60歳から65歳までの間に任意加入することによって未払いの保険料を払うことができます。
例3:学生納付特例の適用を受けた場合
20歳から現在までの国民年金の被保険者期間から、学生納付特例期間(例:15カ月)を引いた期間を計算します。学生納付特例期間は受給資格期間の計算には算入されますが、年金額の計算には算入されないため、この期間は除いて計算します。
ただし、追納すれば年金額の計算に参入されます。追納には10年までという期間が設けられているため、できるだけ早く追納するようにしましょう。
例4: 保険料を納付していない期間が長い場合
9年間保険料を納付した後、31年間保険料を納付していない場合、加入期間が10年に満たないため老齢基礎年金は支給されません。ただし、60歳以後に任意加入して、受給資格期間(原則10年)を満たすこともできます。
老齢厚生年金の受給額計算
老齢厚生年金の受給額は、加入期間と平均標準報酬月額によって決まります。具体的な計算方法は以下の通りです。
基本的な計算式:厚生年金の受給額は、以下の計算式で求められます。
受給年額 = 平均標準報酬月額×5,769÷1,000 × 被保険者期間の月数×スライド調整率
ここで、平均標準報酬月額は、加入期間中の標準報酬月額と標準賞与額の総額を加入期間の月数で割ったものです。また、スライド調整率は、受給開始年齢によって変わります。
老齢厚生年金の受給額の具体例
平均標準報酬月額:30万円
被保険者期間:40年(480カ月)
スライド調整率:1.0(65歳で受給開始する場合)
この場合、老齢厚生年金の受給額は以下のように計算できます。
受給年額=300,000円×5.769÷1,000×480×1.0=約83万円
自分の年金を確認する方法
年金を受給する時期が近づいてきたり、将来的な資金計画を立てたりする際には、自分がどの程度の年金を受け取れるのかを知りたいものです。自分の年金を確認する方法にはいくつかの手段があります。
マイナンバーカードを利用した方法
マイナンバーカードを持っている場合、公的個人認証サービスを利用してオンラインで年金情報を確認できます。この方法では、年金積立金額や見込み年金額、これまでの納付記録などを詳しく知ることができます。
ねんきん定期便
ねんきん定期便は、日本年金機構が年に一度、誕生月に年金加入者に対して送付する書類です。ここには、これまでの年金納付状況や将来受け取れる見込み年金額などが記載されています。また、不足している保険料の納付や、将来受け取れる年金額の詳細な計算方法なども確認できます。
年金相談窓口
全国にある年金事務所や、市区町村の役所に設けられている年金相談窓口でも、自分の年金情報を確認できます。直接対面での相談だからこそ、個別の疑問にも丁寧に答えてもらえる利点があります。ただし、相談に行く際には、身分証明書やマイナンバーカードなど、身元を証明できる書類のほか、基礎年金番号がわかるような書類が必要になります。
インターネットサービス
ねんきんネットなどを利用すると、インターネットを通じていつでも自分の年金情報を確認することが可能です。ただし、このサービスを利用するためには、事前に公的個人認証サービスの登録が必要になるため、準備が必要です。
これらの方法を適宜利用することで、自分の年金情報を確認し、将来に向けた計画を立てやすくなります。自分の年金を知ることは、安心して老後を過ごすための第一歩と言えるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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