- 更新日 : 2023年10月20日
政策保有株式とは?なぜ縮減されているのか?
政策保有株式とは企業が他社との関係を構築または維持するため、互いに株式を保有することを指します。従来、外資企業からの買収を防止するために日本企業特有の慣習として金融業界を中心に利用されていたものの、昨今では縮減傾向にあるのも事実です。
そこで、今回の記事では政策保有株式のメリットやデメリット、縮減傾向にある理由などについて解説します。
目次
政策保有株式とは
政策保有株式とは企業間でお互いに株式を保有し合うことを指し、「株式持ち合い」とも呼ばれます。政策保有株式は他企業への投資ではなく、取引先との関係構築や維持を目的としているのが特徴です。従来、外資企業からの買収を防止するために日本企業特有の慣習として金融業界を中心に利用されており、1990年頃には上場株式の時価総額のうち3割を政策保有株式が占めていました。
また、政策保有株式の中には互いに株式を保有するのではなく、どちらか一方の企業だけが他社の株式を保有するケースも見受けられます。
政策保有株式のメリット
ここでは政策保有株式のメリットについて、解説します。
取引先との関係を維持できる
政策保有株式は、取引関係のある会社同士が株式を持ち合うことにより、取引関係を長期的に維持しやすくなるといったメリットがあります。取引関係が強化されることで新たな取引につなげやすいほか、お互いにメリットの大きい経営戦略が実行しやすくなるでしょう。
経営の安定が図れる
信頼のおける企業に株式を保有してもらうことによって、経営陣の合意を得ずに買収されることがなくなり、敵対的買収の防衛につながるでしょう。政策保有株式によって「安定株式」が形成され、企業経営の安定を図れます。
一方で、株式をお互いに保有している場合には、相手企業の意向を尊重しなくてはならないケースもあるため注意が必要です。
政策保有株式のデメリット
政策保有株式にはいくつかのメリットがある一方で、デメリットも存在します。それぞれのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
資本の効率性が悪くなる
政策保有株式を利用し、互いに株式を保有している場合、資本の空洞化が生じる恐れがあるでしょう。ここでいう「資本の空洞化」とは、自社の成長に投資すべき資金が持ち合い株式に使われることで、経営の妨げとなってしまう状況のことを指します。
政策保有株式は企業経営の安定化が期待できる一方で、お互いの会社の成長に直接的な利益をもたらすわけではない点に注意が必要です。特に企業同士で政策保有株式に頼っている場合、円滑な取引を妨げる恐れがあるだけでなく、外部に対して閉鎖的になることから株主離れを引き起こすこともあるでしょう。
株主の議決権が機能しなくなる
政策保有株式では企業間で議決権の多くを持ち合うことにより、株主に与えられた議決権の機能がしなくなる傾向にあります。そのため、株主の意見が通りにくくなり、経営者の意向通りの経営になってしまう恐れが高まるでしょう。
企業間で上下関係が生まれる
株式を互いに持ち合っている状況で、かつ、どちらかが優位な立場となれば経営の主導権を握れる状態にもなりかねません。他企業に主導権を握られると、自社の経営権が脅かされるほか、企業活動にも多大な影響が生じてしまいます。
政策保有株式はなぜ縮減されている?
政策保有株式は、かつては多くの日本企業で利用されていましたが、バブル崩壊後からは利用数が減少傾向にあります。その理由として考えられる理由は以下の3つです。
- 企業の競争力が高まっているのか疑問視されていたため
- 自社の決算に悪影響を及ぼすようになったため
- 国外の投資家を中心に「日本企業は利益を株式に還元せず、企業内にため込んでいる」と批判の声が上がっていた
また、上記の背景を踏まえ、2015年6月には東京証券取引所が「コーポレートガバナンス・コード」を公表しました。これは上場企業に向け、政策保有株式の保有に関する方針の開示を求めたものです。この頃から、経営の安定化よりも成長に向けた投資に目を向けることを優先させるべきという風潮が強まり、自己資本だけで効率的に利益を得ることが重視されるようになりました。
現在では政策保有株式を利用する企業が減少していると考えられます。とはいえ、金融機関において政策保有株式を縮減する動きが見られる一方で、事業法人の間ではそれほど進んでおらず、いまだ利用する法人が多いのが現状です。
政策保有株式の動向を注視しよう
今回の記事では政策保有株式の概要やメリット・デメリット、そして近年縮減傾向にある理由について解説しました。依然として政策保有株式を保有し続ける会社も存在する一方で、全体としては政策保有株式を解消する方向にあるほか、今後もその動きは加速することが予想されます。
この先、政策保有株式がどう解消され、保有比率がどのように移り回っていくのか、その動向に注視してみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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