オプション取引とは?リスクや投資戦略をわかりやすく解説

オプションとはあらかじめ定めた期日・価格で売買する権利のことで、この権利を取引することをオプション取引といいます。買い手の場合、権利の行使を選べたり、損失がプレミアムに限定されたりするメリットがあります。一方、売り手は買い手から権利を行使されたら応じなければならず、損失が無限大になる可能性があります。この記事では、オプション取引の種類やメリット・デメリット、投資戦略や先物取引との違いやポイントについて解説します。

オプション取引とは

オプションとは、原資産をあらかじめ定めた期日・価格で売買する権利のことで、この権利を取引することをオプション取引といいます。また、このときにあらかじめ定めた期日のことを「満期日」、定めた金額を「権利行使価格」といいます。

例えば、干ばつや台風があったとき、小麦やトウモロコシといった穀物は不作となり、価格が大きく高騰するかもしれません。これでは小麦やトウモロコシを原料として仕入れて販売しているメーカーは、利益の見通しが立てられないでしょう。

仮に、このとき小麦を半年後に1トン5万円で購入できるオプション(権利)を購入していたとします。オプションを購入していれば、半年後、小麦の価格が1トン10万円になっていたとしてもオプションを行使すれば、1トン5万円で購入できます。一方、半年後、小麦価格が1トン4万円になっていた場合は、オプションを行使せず、4万円で購入した方がよいでしょう。結果的にオプション購入費用が無駄になってしまいますが、オプションを行使して5万円で購入するよりも損失を抑えられます。

このようにオプションを購入することで、小麦の価格の変動による損失を限定させることができるのです。

オプション取引の種類

オプション取引はコールオプションとプットオプションの2種類があります。2つのオプション取引について詳しく紹介します。

コールオプション

コールオプションとは、原資産を買う権利のことです。コールオプションには、買い手と売り手という2つの立場があり、買い手は、権利を行使するか放棄するかを選べます。仮に行使をする場合、売り手は応じなければなりません。

プットオプション

プットオプションとは、原資産を売る権利です。プットオプションは売る権利の買い手と、売り手という立場に分かれます。プットオプションの買い手は、権利を行使するか放棄するかを選べますが、仮に行使をする場合、売り手は応じなければなりません。

オプション価格の要素

オプションを売買する価格のことをプレミアムといいます。プレミアムは内在価値と時間価値を合計して計算します。内在価値と時間価値の考え方について詳しく見ていきましょう。

内在価値

内在価値とは、市場価格と行使価格の差のことをいいます。仮に、原資産の価格が1万円、行使価格が1万1,000円のときコールオプションを購入して、すぐにオプションを行使すると、売買差益は1,000円です。つまり、1,000円の内在価値があることになります。

時間価値

時間価値とは、オプションの満期日までに期待できる利益の価値のことをいいます。原資産価格が1万円、行使価格が1万1,000円、オプション満期日の市場価格が1万5,000円になることが期待できる場合、満期日までの間に利益が4,000円(1万5,000円-1万1,000円)増えることになります。つまり、4,000円の時間価値があることを示しています。

よって、上の事例の場合は、内在価値1,000円+時間価値4,000円=プレミアム価格5,000円となります。また、プレミアムの価格は満期日までの期間が長いほど、そして原資産の価格変動が大きいほど満期日の市場価格の予測がしにくいため、高くなる傾向があります。

オプション取引のリスクとリターン

オプション取引のリスクとリターンは、買い手と売り手で異なります。それぞれのオプションにおけるリスクとリターンについて説明します。

リターン・メリット

買い手のメリットは、権利行使をするかどうかを選べる点です。また、自分の予想と反対方向に動いた場合でも、プレミアム以上の損失を負うことがありません。

一方、売り手のメリットは、確実にプレミアムを受け取れる点です。さらに、オプションを転売すると、タイミングによっては、原資産の上昇率よりもオプション価格の上昇率が上回ることがあり、レバレッジ効果が期待できます。

また、オプション取引は、資産価格が大きく上昇しそうなときはコールの買い、下落しそうなときはプットの買い、価格が動きそうにないときはショート・ストラングルなど、市場動向にあわせて、どのようなケースでも利益を出せる可能性があります。主なオプション取引の戦略については後述します。

リスク・デメリット

買い手のデメリットは、取引で利益が出ても先物取引で同様の取引をした場合に比べてプレミアム分だけ、利益が減少する点です。オプション満期日までに自分が予想した値動きにならなければ、損失が発生します。

一方、売り手のデメリットは利益がプレミアムに限定され、買う権利を行使された場合、損失が無限大になる可能性がある点です。売り手は買い手が権利を行使した場合、応じなければなりません。

オプション取引の戦略

オプション取引にはコールオプションの買い・売り、プットオプションの買い・売り以外にもさまざまな戦略があります。ここでは代表的なオプション取引の戦略を紹介します。

スプレッド

スプレッド戦略には、レシオ・コール・スプレッドと、レシオ・プット・スプレッド、バーティカル・ブル・スプレッド、バーティカル・ベア・スプレッドの4種類があります。

レシオ・コール・スプレッドとは権利行使価格が安い「コールの買い」と、権利行使価格が高い「コールの売り」を1:2になるように保有します。相場が一定まで上昇し、それ以上にならないと考えられる場合に有効な戦略です。

レシオ・プット・スプレッドとは権利行使価格が高い「プットの買い」と権利行使価格が安い「プットの売り」を1:2になるように保有する戦略です。相場が一定まで下落し、それ以下にならないと考えられる場合に有効です。

バーティカル・ブル・スプレッドは権利行使価格が高い「プットの買い」と権利行使価格が安い「プットの売り」を組み合わせて保有します。先行きは上昇する可能性があるものの、大きく上昇する確証が持てないときに有効です。

バーティカル・ベア・スプレッドは権利行使価格が安い「コールの買い」と権利行使価格が高い「コールの売り」を組み合わせて保有します。先行きは下落する可能性があるものの、大きく下落する確証が持てないときに有効です。

ストラドル

ロング・ストラドルと、ショート・ストラドルの2種類があります。ロング・ストラドルとは、権利行使価格が等しい「コールの買い」と「プットの買い」を組み合わせた戦略で、相場が短期的に上昇あるいは下落すると考えられるときに有効です。

ショート・ストラドルは、権利行使価格が等しい「コールの売り」と「プットの売り」を組み合わせた戦略で、相場が動かないと予想するときに有効です。

ストラングル

ロング・ストラングルと、ショート・ストラングルの2種類があります。ロング・ストラングルとは、権利行使価格が高い「コールの買い」と、権利行使価格が安い「プットの買い」を組み合わせた戦略で、相場が大きく上昇・あるいは大きく下落すると考えられるときに有効です。

ショート・ストラングルとは、権利行使価格が異なる「コールの売り」と「プットの売り」を組み合わせた戦略で、相場がもみ合っていて、あまり動かないと考えられるときに有効です。

オプション取引のポイント

オプション取引のポイントは、大きく3つ挙げられます。

買い手は行使するかどうかを選べる

オプション取引の買い手は、買う権利あるいは売る権利を行使するか、放棄するかを選ぶことが可能です。権利を行使した方が利益になるのであれば、権利を行使して、あらかじめ定めた金額で売買します。

権利を行使して損失になるのであれば、権利を放棄して、そのときの市場価格で売買をします。この場合でも買い手の損失は、プレミアム分に限定されます。

売り手の損失は無限大になる可能性がある

売り手は権利が行使されると、必ず応じなければなりません。売る権利を行使されると対象資産の価値がゼロになるまで、買う権利を行使されると無限に損失が拡大する可能性があります。

どのような相場環境でも利益が狙える可能性がある

オプション取引は、さまざまな投資戦略を活用すれば、原資産相場が下落または上昇といった、どのような状況でも利益を出すことができます。ただし、相応のプレミアムがかかること、価格変動が大きく、損失が大きくなる可能性がある点には注意が必要です。

オプション取引と先物取引との違い

オプション取引は原資産をあらかじめ定めた日に、取引時点で売買する「権利」の取引のことをいいます。一方、先物取引は、原資産をあらかじめ定めた日に、取引時点で決めた価格で売買することを約束する取引のことです。つまり、先物取引は売買の契約であり、オプション取引は権利の取引といえます。

また、オプション取引は買い手の場合、損失はプレミアムに限定されますが、先物取引は一つの取引では損失を限定できません。そのため、先物取引は、売り手、買い手いずれも証拠金が必要になり、証拠金以上の損失が発生することがありません。

ただし、定められた証拠金水準を下回ると、追加で証拠金を求められることがあります。これを追証(おいしょう)といいますが、追証を支払った結果、当初の証拠金以上の損失が発生する可能性があります。

オプション取引は相場がどのような状況でも利益が狙える

オプション取引とは、あらかじめ定めた期日・価格で売買する権利の取引を指します。オプション取引は先物取引とよく比較されますが、オプション取引は売買する権利を取引するのに対し、先物取引が売買の契約であるという違いがあります。

また、オプションの買い手は、権利を行使するかどうかを選べるうえ、損失が発生したとしても損失額はプレミアムの価格に限定されます。一方、売り手は買い手から権利を行使された場合、応じなければならず、仮に損失が発生した場合、無限に損失が拡大する可能性があります。

さまざまな投資戦略があり、相場がどのような状況でも利益を狙える可能性がある点もオプション取引の特徴です。

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