株の寄り付きとは?寄り前注文の注意点は?
株式投資における「寄り付き(よりつき)」とは、証券取引所の開場後、最初の取引が成立して値段がつくこと、およびその値段を指します。とはいえ、寄り付きについて何となく理解しているものの、寄り付き後の値動きや寄り付かない原因について、いまひとつわからないといった方も多いかもしれません。
そこで、今回の記事では寄り付きの概要をはじめ、値動きや寄り付かない場合の理由についてわかりやすく解説します。
目次
株の寄り付きとは
まず、株の寄り付きの時間について詳しく見ておきましょう。日本の株式市場の取引開始時間は午前9時です。よって、多くの銘柄はこの時間帯に寄り付く、つまりその日最初の値段がつくと認識しておいてください。
上の図のように、前場(ぜんば・午前中の取引)が終わり、午後に始まる後場(ごば・午後の取引)の前にも寄り付きがありますが、こちらは寄り付きと区別するために「後場寄り」などと呼ばれます。
寄り付きと寄り付き後の値動き
寄り付き時や寄り付きから少し後の時間に見られる傾向として、「出来高」が1日のうちで最も多くなることが挙げられます。「出来高」とは、取引が成立した株式の数を指します。ちなみに、寄り付きで最も出来高が多くなる理由ですが、市場が開く前に出されていた注文が「板寄せ」(※)で一度に成立するためです。
※板寄せ:券取引所が開く前に出された成行注文(値段を指定せずに出す注文)の数量、および売り・買いそれぞれの指値注文(値段を指定して出す注文)の値段・数量などから寄り付き時の値段を決める方法
また、寄り付き直後は値幅が大きくなる傾向です。寄り付き前の気配値(売り・買いの指値注文の値段)を見て注文を出すデイトレーダーの動きが激しくなるためです。寄り付き直後には急激な値動きが見られることを理解したうえで、慎重なトレードを行うことが大切です。
寄り付かない場合の理由
寄り付かない場合に考えられる理由として、以下の2つが挙げられます。
- 売り注文に比べ買い注文が多く出されている
- 買い注文に比べ売り注文が多く出されている
それぞれの理由について、見ていきましょう。
売り注文に比べ買い注文が多く出されている
まず、前日と比較して買い注文が大幅に増加し、売り注文が足りないケースが挙げられます。好決算や新商品の開発・発売など該当銘柄にとってプラスとなるようなニュースが報じられた後に起きやすいでしょう。
買い注文と同じ数の売り注文が出ない限り、寄り付かなくなってしまう一方で、その銘柄を保有している投資家にとっては利益を得られるチャンスといえます。
買い注文に比べ売り注文が多く出されている
次に、売り注文が多く出され、買い注文が足りず、寄り付きで値段がつかないケースが挙げられます。買い注文の場合とは対照的に、業績悪化や不祥事などマイナスとなるニュースが報じられた後に起こりやすいでしょう。売り注文が殺到している場合、当日中に寄り付いても、その後は売買が成立しないケースも珍しくありません。
銘柄によっては連日、売り注文ばかりになることがあるので、保有銘柄に対して売り注文が集中した場合、早めに企業情報を確認することを心がけましょう。
また、株価の極端な値動きを防ぐために証券取引所が特別気配を提示することがあります。これは、売り注文と買い注文に大きな差が出ているサインであり、投資家にとってわかりやすく示されるものです。そのため、「特別」といった表現が使われています。
とはいえ、日本の証券取引所には値幅制限があるため、特別気配のまま立会時間が終了しても株価の変動は一定の範囲内に留まります。ただし、翌日には新たな値幅制限が設定されるため、保有している銘柄が取引開始時に制限内に収まらない場合は注意が必要です。
寄り付き前に注文する場合の注意点
ここでは寄り付き前に注文する場合の方法やそれぞれの注意点について、解説します。
成行注文
成行注文(なりゆきちゅうもん)とは、株の売買時に値段を指定せずに注文する方法のことです。買値や売値を問わず、すぐに売買したい方にとっておすすめの注文方法といえるでしょう。
成行注文ではその性質上、それほど待つことなく寄り付きで売買を成立させることができます。ただし、値段を指定しないことから、場合によっては想定していたより高値(もしくは安値)で寄り付く可能性がある点には注意しなければなりません。
また、良いニュースや悪いニュースが報じられた後の市場は特に注文が殺到しやすく、成行注文での成立価格が普段の状況よりも不安定になります。このような場合、寄り付き前に焦って注文を入れず、値動きがある程度落ち着いてから成行注文を入れた方が高値づかみのリスクを回避できるでしょう。
指値注文
指値注文(さしねちゅうもん)とは、株の売買時に値段を指定して注文する方法のことを指します。買い注文の場合は指値以下の株価、売り注文の場合は指値以上の株価にならない限り、注文が成立しません。よって、想像以上の値段で寄り付いてしまう事態を防げるでしょう。
一方、寄り付き前に買いの指値注文を低い値段で出した場合、思ったよりも高く寄り付いてしまい、結果として、欲しかった銘柄を購入できないケースも見受けられます。この場合、購入できないまま株価が徐々に上昇し、買い時を逃してしまうリスクが高まります。
また、損切りしようと指値で売り注文を出しても成立せず含み損が膨らむケースも考えられるため、指値注文を出す際はその銘柄の情報収集と分析に努めることが大切です。指定した値段が本当に妥当なのかどうか、しっかりと判断するようにしましょう。
寄り付きで株を買う際に焦りは禁物
今回の記事では株の「寄り付き」や寄り付き後の値動き、また寄り付かない場合の原因や注文を出す際の注意点について解説しました。長期保有を想定しているのであれば1日の寄り付きに一喜一憂する必要はありませんが、短期間でトレードを繰り返したいと考えている方は冷静に市場を判断することが大切です。
寄り付き時は株の値動きが激しくなる傾向があります。すぐに購入したい場合も焦って注文を出すのではなく、まずは各銘柄の情報や気配値をチェックするようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。