• 更新日 : 2023年8月4日

財形貯蓄とは?利用のメリットや注意点、賢い使い方を解説

財形貯蓄とは、国と会社が従業員の財産形成を支援するための制度です。財形貯蓄のメリットとして、給与から天引きされ自動で積み立てられる点や非課税措置がある点が挙げられます。一方、デメリットは定められた目的以外で引き出しを行うと非課税措置から外れる点です。この記事では、財形貯蓄制度のメリットや注意点について詳しく解説します。

財形貯蓄とは

財形貯蓄とは、教育、住宅資金といった従業員が将来必要となる資金作りや財産形成を国と事業主でサポートする制度です。正式名称は「勤労者財産形成貯蓄制度」といいます。

財形貯蓄では、会社が給与から一定額を天引きし、社員が契約した財形貯蓄取扱機関の口座にて積み立てを行います。定期的な預金の他、投資信託や有価証券の運用、生命保険や共済保険を扱う場合もあります。

勤労者財産形成促進制度に含まれる財形貯蓄

財形貯蓄は、厚生労働省が定めた「勤労者財産形成促進制度(財形制度)」の1つです。財形制度とは、労働者の財産形成を国と事業主が支援する制度です。財形貯蓄は、給与天引きによる貯蓄により、従業員が将来必要な財産形成を支援する制度です。

財形貯蓄以外の財形制度として、事務代行制度、財形持家融資制度、財形給付金制度、財形基金制度があります。事務代行制度とは、財形貯蓄制度に係る事務作業を厚生労働大臣が認定する事務代行団体が代行する制度です。

財形持家融資制度、財形給付金制度、財形基金制度については、後ほど詳しく解説します。

財形貯蓄の種類

財形貯蓄は3種類あります。それぞれの内容については、以下の表をご覧ください。

勤労者財産形成貯蓄
(一般財形貯蓄)
勤労者財産形成年金貯蓄
(財形年金貯蓄)
勤労者財産形成住宅貯蓄
(財形住宅貯蓄)
対象者パート、アルバイトを含む従業員
年齢制限なし満55歳未満満55歳未満
資金の用途自由・満60歳以降に5年~20年の年金受取・住宅の建設、購入
・工事費用が75万円以上のリフォームなど
契約数制限なし1人1契約1人1契約
積立期間原則3年以上5年以上5年以上
積立要件貯蓄開始から1年経過後は払い出し自由・積立終了から年金受取開始まで5年以内の据え置き期間を設定可能
・年金以外で払い出す際は、特例を除き非課税枠の対象外
・払い出した際に残額がある場合は解約となる
・住宅資金以外で払い出す際は、特例を除き非課税措置の対象外
非課税枠なし・預貯金:財形年金貯蓄と合わせて、預入額と利息の合計が550万円となるまでの利息が非課税
・保険など:払込累計385万円まで利子等非課税
・預貯金:財形住宅貯蓄と合わせて、預入額と利息の合計が550万円となるまでの利息が非課税
・保険など:払込累計550万円まで利子等非課税

財形貯蓄制度を利用するメリット

財形貯蓄制度を利用する主なメリットを5点紹介します。

給与から天引きして自動的に資産形成できる

財形貯蓄制度を利用する最大のメリットは、給与から天引きして貯蓄することで、自動的に資産や財産の形成ができることです。

給与から天引きした積立金は、手元に渡る前に財形貯蓄に回されます。口座にお金が入っていると使ってしまう方にとっては、とてもいい資産形成方法といえるでしょう。

非課税措置がある

財形貯蓄の中で財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄に非課税措置があることも、メリットのひとつです。

一般財形貯蓄の場合は、利息に所得税や住民税など合計20.315%の税金がかかります。例えば、利息が100円の場合、所得税や住民税として20.315円引かれるため、手取り利息は79.685円です。

しかし、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は、合算して550万円分まで利息が非課税となります。投資信託や保険商品を扱っている場合、財形年金貯蓄は払込額385万円まで、財形住宅貯蓄は払込額550万円までが非課税です。とくに、財形貯蓄で投資信託商品を購入している場合は、利息額が増えるほど非課税措置の恩恵を受けられるでしょう。

給付金が支給される

財形貯蓄をしている場合、会社によっては財形給付金や財形基金が支給される場合があります。

会社が厚生労働大臣の承認を受けて契約取扱機関「勤労者財産形成給付金契約」もしくは「勤労者財産形成基金契約」を締結している場合は、会社は、労働者1名につき毎年最高10万円までを拠出します。拠出された金額とその利息は、7年ごとに勤労者財産形成給付金(財形給付金)、または勤労者財産形成基金(財形基金)として労働者に支給されます。

財形給付金、財形基金とも一時所得の扱いとなり、50万円まで非課税です。50万円を超えた場合は、50万円を超えた部分の2分の1のみ課税対象となります。

一定期間休止もできる

一般財形貯蓄の場合、一定期間休止することができる点もメリットといえます。

一般財形貯蓄は、損害保険商品以外であれば期間や回数の定めなく中断することが可能です。しかし、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は、中断期間が2年以上になると非課税措置の対象外となり利息に税金がかかります。

しかし、3歳未満の子に対して育児休業を取得する場合は例外で、中断期間が2年以上でも非課税対象となります。非課税を継続する条件は、育児休業開始前に所定の手続きを取り、育児休業後最初の給与で天引きを行い、積み立ての再開をすることです。育児休業で2年以上財形貯蓄を中断したい場合は、育児休業取得前に忘れずに所定の手続きを行いましょう。

住宅ローン融資が受けられる

財形貯蓄を1年以上利用し残高が50万円以上ある場合、財形持家融資制度の適用対象となり、一般的な住宅ローンよりも低金利での融資が受けられます。住宅金融支援機構や共済組合の場合は「財形住宅融資制度」、勤労者退職金共済組合の場合は「財形持家転貸融資制度」と名称が変わりますが、同じ制度となります。

両制度に共通する融資条件は、次の3点です。

  • 財形貯蓄残高の10倍以内
  • 上限4,000万円
  • 原則として、住宅の建設、購入、リフォームに要する費用の90%以内

財形住宅融資制度、財形持家転貸融資制度では、細かい融資条件が異なります。詳しい条件は融資を受ける際に確認しましょう。

財形貯蓄制度を利用する際の注意点

財形貯蓄制度を利用する際は、いくつかの注意点があります。財形貯蓄の注意点を知っておくことで、損失やリスクを未然に回避できるでしょう。

勤務先によっては制度を利用できない場合がある

財形貯蓄は、制度を導入している会社の従業員を対象とした制度です。未導入の会社に就職した場合、財形貯蓄はできなくなります。会社に勤めていない個人事業主・フリーランスや、個人事業主のもとで給与を受け取っている配偶者や子ども(青色専従者給与の対象者)も、財形貯蓄制度の利用はできません。

退職から2年経過後に就職した場合や財形貯蓄制度未導入の会社に就職した場合は、前会社の財形貯蓄は利用できなくなり、解約されます。解約された場合、財形年金貯蓄や財形住宅貯蓄は目的と違う不適格な払い出しとみなされ、さかのぼって5年分の利息が課税対象となる点に注意が必要です。

財形貯蓄制度を利用中に転職する場合、転職先に財形貯蓄制度があるかどうか、事前に確認しておくことをおすすめします。

所得控除がない

財形貯蓄は、積み立てた金額を控除対象とできない点にも注意が必要です。財形貯蓄のように毎月一定額を積み立てて資産形成を行う制度として、iDeCo(個人型確定拠出年金)が挙げられます。iDeCoは、掛金が全額所得控除小規模企業共済等掛金控除)の対象となります。しかし、財形貯蓄は所得控除の対象外です。

財形貯蓄では、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄の利息だけが非課税となります。iDeCoのように支払った金額が控除されない点にも注意しましょう。

貯蓄目的の変更が面倒

財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は、目的があらかじめ決まった財形貯蓄です。定められた年金受取、住宅関連資金以外への目的変更はできません。一般財形貯蓄への変更も不可です。財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は1名につき1契約しかできないため、目的を変更したい場合は、一度解約してから目的にあった財形貯蓄を再契約する必要があります。

財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は、後から目的の変更ができません。その分、慎重に契約する必要があります。まずは一般財形貯蓄だけ開始し、結婚した、子どもができたなど将来の予定が見えてきた段階で契約してもいいでしょう。

低金利のため利息が少ない

2023年6月現在、日本の預金金利はとても低い水準となっています。3大メガバンクと呼ばれる三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の定期預金金利は、いずれも年利率0.002%です。財形貯蓄も同様の低金利のため、利息の受け取りがあまり期待できない現状となっています。

年利率0.002%で100万円預けた場合、利息は20円です。利息の受け取りによる利益を期待する場合は、投資信託や株式など別の金融商品への投資をおすすめします。

元本割れする場合もある

財形貯蓄で保険や投資信託を運用する場合、元本割れする可能性がある点にも注意が必要です。

会社が提携する金融機関によっては、財形貯蓄で保険や投資信託を契約できる場合もあります。保険や投資信託は、必ずしも利益が出るとは限りません。損失が出てしまい、元本割れする可能性もあります。

財形貯蓄で保険や投資信託を購入する場合は、通常の預貯金と異なり、損失が発生することにより元本割れのリスクがあることも覚えておきましょう。

財形貯蓄制度はどんな人におすすめ?

財形貯蓄は、給与から毎月一定額を自動的に天引きすることで財産形成を行う制度です。自動的に天引きされることから、次のような方におすすめといえます。

  • 銀行口座にお金があるとすぐ使ってしまう
  • 自力での貯蓄が苦手
  • 強制的にお金を貯められる仕組みを作りたい

財形年金貯蓄は、国民年金や厚生年金に上乗せして年金を受け取ることができる制度です。財形住宅貯蓄は、住宅の購入やリフォーム資金を貯めるための制度となっています。将来自分の住宅を購入することを考えている、年金を多く受け取るために貯蓄をしておきたいなど、年金の準備や住宅資金の準備を考えている方にも向いている制度といえるでしょう。

財形貯蓄はメリット・注意点を理解して活用しよう

財形貯蓄は、給与から自動的に天引きすることで貯蓄をする制度です。財形貯蓄制度には利息の非課税措置や住宅ローンの金利優遇もあるため、財産形成と節約を同時に考えている方にはメリットの多い制度といえます。

財形貯蓄制度はメリットが多い一方、未導入の会社に就職すると継続できない、会社に勤めていない個人事業主やフリーランスは利用不可、目的以外の払い出しをすると非課税措置の対象外となるといった注意点も存在します。

財形貯蓄制度の注意点を十分に理解した上で、財形貯蓄制度を積極的に活用していきましょう。


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