VDCとは?株価推移や配当利回り、おすすめの証券会社を解説

コロナパンデミック下でも安定した値動きを見せた、生活必需品セクターのETF。アメリカの金利引き上げによる影響が出ているいま、“不況に強い株”として再び注目を集めています。本記事では、バンガード社の米国ETF「VDC」の保有銘柄や株価チャート、メリット・デメリット、注意点、他のETFとの違いなどを詳しく解説します。おすすめの証券会社もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

VDCとは?配当利回りは?

「VDC(Vanguard Consumer Staples ETF)」は、世界最大規模の資産運用会社バンガード社が提供する上場投資信託(ETF)です。食品や飲料、たばこ、流通、家庭用品といったアメリカの生活必需品セクター銘柄で構成されており、MSCI USインベスタブル・マーケット・生活必需品25/50インデックスのパフォーマンスにおおむね連動した値動きを目指して運用されています。

VDC
正式名称Vanguard Consumer Staples ETF
運用会社Vanguard(バンガード)
市場NYSE ARCA
ベンチマーク指数MSCI USインベスタブル・マーケット・生活必需品25/50インデックス
経費率0.10%
純資産価額78億米ドル
直近分配金利回り2.36%

VDCの構成銘柄

2023年6️月末現在、VDCは105の銘柄で構成されています。組入上位10銘柄と組入比率を見ていきましょう。

組入上位10銘柄(2023年5月31日時点)
銘柄名保有比率(%)数量
Procter & Gamble Co.12.126,676,094
PepsiCo Inc.8.863,814,271
Coca-Cola Co.8.6411,360,454
Costco Wholesale Corp.7.871,208,225
Walmart Inc.7.574,042,856
Philip Morris International Inc.4.523,942,757
Mondelez International Inc. Class A3.894,160,227
Altria Group Inc.3.105,482,006
Colgate-Palmolive Co.2.312,442,610
General Mills Inc.1.961,827,577
組入比率
業種保有比率
飲料21.10
商品小売19.60
家庭用品18.80
加工食品16.60
たばこ8.00
パーソナルケア製品3.30
農産物・サービス3.10
食品ディストリビューター2.70
食品小売2.60
蒸留所、ワイン醸造所2.60
医療品小売0.90
ビール醸造所0.70

大手消費財メーカーの「P&G」や清涼飲料メーカーの「コカ・コーラ」、会員制卸業で人気を誇る「コストコホールセール」など、消費者の生活に根付いたメーカーが並んでいます。セクター別に見ると飲料分野と商品小売、家庭用品はそれぞれ約20%、次いで加工食品やたばこの保有率が高くなっています。

VDCの株価推移チャート

VDCの株価推移チャートを見ていきましょう。

TradingViewより引用

ここ10年の推移を見ると、数回急落が見られるものの右肩上がりに成長していることがわかります。急落からの回復も早いのが特徴です。ほかの米国株と同様、2020年2〜4月ごろにはコロナパンデミックの影響を受けて下落していますが、同年8月にはすでにコロナ前の数字に戻り、そこからは緩やかに上昇を続けています。

直近1年の動きを見てみましょう。2022年8〜10月にかけての大幅に値下がりが目立ちますが、これは同年3月にFRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利の引き上げを決定したためです。しかし、景気に左右されづらいディフェンシブセクターで構成されていること、業績が安定している企業の銘柄が多いこともあり、長期的に見るとそれほど大きな影響は受けていない状況です。総合すると安定した値動きで順調に推移しているといえるでしょう。

VDCのメリット

VDCに投資するとどのようなメリットがあるのでしょうか。

  • 景気に左右されづらい
  • 経費率が低く、安定したリターンを獲得できる
  • 手軽に分散投資できる

上記3つのメリットについて、詳しく解説します。

景気に左右されづらいディフェンシブ銘柄

VDCの特徴であり、最大のメリットといえるのが「手堅さ」です。食品・飲料や小売などの生活必需品セクターで構成されているため、コロナパンデミックや今回の米国金利上げのように株価に直結する景気や社会情勢の変化にも強いとされています。業界をリードする大手企業の銘柄が多いことも強みです。金利変動の影響が長期化した場合を考えると、安定的に運用できるVDCは手堅いといえるでしょう。

経費率が低く、リターンも安定している

VDCの経費率は0.1%で、米国セクターETFの中で比較しても低水準です。直近分配金利回りは2.36%でけっして高いとはいえませんが、景気変動が起こっても安定したリターンを上げています。前述した下落耐性を考慮すると十分な数字でしょう。

手軽に分散投資ができる

生活必需品セクターの中でも食品・飲料、たばこ、医療品小売と業種が分散されているため、個別株と比較してリスク分散性が高くなっています。米国株に初めて投資する方、リスクを最小限に抑えたい方にはおすすめです。

VDCのデメリットや注意点

景気に左右されづらいディフェンシブ銘柄であり、安定したリターンも望めるVDCですが、一方で、投資前に知っておきたいデメリットや注意点もあります。

  • 同一セクターであるため、分散投資の効果が薄い
  • たばこ産業が衰退する可能性がある

購入を検討している方は、上記の注意点をしっかりチェックしておきましょう。

分散投資の効果が薄い

100を超える銘柄で構成され、手軽に分散投資を行えるVDCですが、同一セクター内での投資になるためリスク分散の効果は薄くなります。また、食品・飲料、商品小売、包装食品セクターが半数を占めているので、該当する企業やセクターの値動きの影響も大きく出やすくなります。リスク分散は投資家を守るための重要なポイントです。「ETFだから安心」と考えず、業種やタイミング、投資スタイルを変えながらリスク分散していきましょう。

たばこ産業衰退の可能性

喫煙関連死が増加しているアメリカでは、厳しいニコチン削減政策の導入が予定されています。たばこメーカーの反対もあって実現には至ってないものの、各国で喫煙削減目標が掲げられていることを考えるとたばこ産業が衰退していく可能性は高いでしょう。VDCにはたばこ関連銘柄が8%含まれているため、今後の動向を注視する必要があります。

VDCにおすすめの証券会社

VDCへの投資を検討している方にとっては、証券会社選びも重要なポイントです。おすすめの証券会社を3つご紹介するので、取引手数料やサポート内容、利用できる機能などを見比べながら選んでみてください。

SBI証券

1944年設立の「SBI証券」は、ネット証券最大手ともいわれる老舗証券会社です。取り扱い銘柄が豊富で、米国ETFも360銘柄以上取り扱っています。取引手数料は0ドル(約定2.02ドル以下)から、為替手数料は1ドル0.25円(2023年6月時点)です。発注や管理、チャート比較などを手軽に行える米国株専用アプリも展開されており、初心者からベテランまで幅広い層に支持されています。決算速報や注目テーマの深掘りなど、分析材料になるコンテンツも配信されているので、米国株投資ビギナーの方にもおすすめです。

楽天証券

ここ数年の新たな取り組みによって、投資家たちから“米国株取引に強くなった”と評価される「楽天証券」です。板情報や決算情報が配信されるようになったほか、楽天ポイントでの支払いやポイント還元率の引き上げ(条件あり)などによって、楽天経済圏をフル活用しながらの投資が可能です。取引手数料は0ドルから(2023年6️月時点、約定2.22ドル以下)、為替手数料は1ドル0.25円からとなっています(2023年6️月時点)。パソコン向けの高機能トレーディングツール、スマホ、タブレットアプリ、各種分析機能などツールも充実しています。

DMM株

「DMM株」は、取引手数料だけで考えると主要証券会社でトップレベルでしょう。前述したSBI証券と楽天証券は約定金額によって差があり、2.2ドルを超えると手数料が発生しますが、DMM株は約定金額にかかわらず一律0円です。ただし、外貨決済不可で為替手数料がかかってしまう点には注意が必要です。2006年設立と比較的新しい会社ですが、米国ETFも280銘柄以上取り扱っています。

他のETFとの比較

VDCの他にも、生活必需品セクターのETFがいくつかあります。最後に、主要銘柄「XLP」「FSTA」「RHS」の3つの特徴やVDCとの違いを見ていきましょう。

正式名称特徴ベンチマーク指数経費率
XLPConsumer Staples Select Sector SPDR Fund大手企業の株を保有。化粧品や衣料品、清涼飲料、たばこなどに関連する銘柄で構成されている。コンシューマーステープルズ ・セレクト・セクター指数0.10%
VHTVanguard Health Care ETFヘルスケア製品を中心に、400を超える銘柄を保有している。MSCI USインベスタブル・マーケット・ヘルスケア・インデックス0.10%
KXIiShares Global Consumer Staples ETF米国株は約57%で、世界各国の株をバランスよく保有。食品・飲料、たばこ、小売などの銘柄を中心に構成される。S&Pグローバル1200生活必需品セクター・キャップト・インデックス0.40%

XLPとの比較

「XLP」は、ステートストリート社が提供する生活必需品セクターの米国ETFです。上位銘柄にはP&G、ペプシコ、コカ・コーラ、コストコホールセールなどが並び、VDCとの重複率が高くなっています。経費率は同水準、直近分配金利回りは2.48%です。パフォーマンスに大きな差は見られませんが、基準価額はVDCの方が2倍ほど高くなっています(2023年6月時点)。

VHTとの比較

「VHT」は、VDCと同じバンガード社によって提供されるヘルスケア関連のETFです。上位銘柄には管理医療システムを提供するユナイテッド・ヘルス・グループやJ&J、医薬品メーカーのファイザーなどが並びます。コロナパンデミックで一時的に暴落しましたが、その後は2021年にかけて急上昇しています。多様性に富んだ構成で、順調に伸びている銘柄です。経費率は同水準ですが、分配金利回りは1.45%とVDCと大きな差があります。重複率が低いため、VDCとVHTでリスク分散効果も期待できるでしょう。

KXIとの比較

「KXI」は、アメリカのブラックロック社によって提供されるグローバル生活必需品ETFです。上位銘柄にはP&Gやネスレ、ペプシコなどが並びます。アメリカ株だけでなく、イギリスやスイス、日本などさまざまな国籍な銘柄がバランスよく組み入れられています。利回りは1.98%、経費率はVDCの4倍となる0.4%です。購入時は経費率の高さも考慮しましょう。

不況に強いVDCは初心者にもおすすめ

景気変動の影響を受けづらい「VDC」は、不況にも強いディフェンシブ銘柄です。爆発力は低くとも、安定的な運用が望めます。メリットとデメリットを比較しながら、投資を検討してみてください。

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