• 作成日 : 2024年6月21日

退職金に税金がかからないのはいくらまで?計算方法や税金支払いタイミング

退職金を受け取る際に気になるのが税金の問題です。多くの人が受け取った退職金に税金がいくらかかるのか、またどうすれば税金を減らすことができるのか、具体的な計算方法はどうなっているのかを気にしている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、所得税、復興特別所得税、住民税といった退職金にかかる税金の種類から、具体的な計算方法、税金がかからない退職金の条件、そして税金を払うタイミングまで詳しく解説します。また、退職金を受け取った後に確定申告が必要かどうかについても触れ、退職金を賢く受け取るためのポイントもまとめました。

退職金にかかる税金とは

所得税

退職金には、所得税が課税されます。この税金は、退職金の総額に応じて計算され、退職金額が高いほど所得税率も高くなる傾向にあります。例えば、退職金が600万円であった場合と、1,200万円であった場合では、後者の方が高い税率となり、結果的に支払う所得税も多くなります。

復興特別所得税

2011年の東日本大震災の復興を支援するために設けられた、所得税に上乗せされる税金です。退職金に対してもこの復興特別所得税がかかり、具体的には所得税額の2.1%が復興特別所得税として加算されます。

住民税

退職金に対しては住民税も課税され、所得税と同様に退職金額に応じて計算されます。なお、税率は居住地によって異なり、退職金が所得として計上された年の翌年6月から1年間支払うことになります。

退職金にかかる税金の計算方法

退職金にかかる税金は、退職金の受け取り方によって異なります。

一括で受け取る場合

退職金にかかる税金は、退職金の総額と勤続年数によって大きく異なります。退職金を一括で受け取る場合、まとまった金額に対して税金が課税されるため、税の負担が大きくなる傾向があります。

退職所得の計算方法は以下の通りです。

(退職金の総額-退職所得控除額)×1/2=退職所得金額

 

退職所得控除額は、勤続年数によって異なります。

  • 勤続年数が20年以下の場合:40万円×勤続年数
  • 勤続年数が20年を超える場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

例えば、勤続年数が25年で、退職金の総額が2,500万円の場合、退職所得控除額は1,150万円(800万円+70万円×5年)となります。

退職所得金額は、(2,500万円-1,150万円)×1/2=675万円です。

この退職所得金額に対して、以下の税率で所得税が課税されます。

195万円以下5%
195万円超~330万円未満10%
330万円超~695万円未満20%
695万円超~900万円未満23%
900万円超~1,800万円未満33%
1,800万円超~4,000万円未満40%
4,000万円以上45%

出典:国税局 「令和6年分 源泉徴収税額表」「退職所得の源泉徴収税額の速算表(令和6年分)」を参考に表を作成

上記の例では、退職所得金額が675万円なので、20%の税率が適用されます。したがって、所得税は135万円(675万円×20%)です。

さらに、住民税は所得税の10%程度が課税されます。この例では、住民税は13.5万円(135万円×10%)です。

加えて、2013年から2037年までの25年間、復興特別所得税が課されています。これは、所得税額の2.1%が追加課税されるものです。上記の例では、復興特別所得税は2.8万円(135万円×2.1%)となります。

したがって、退職金2,500万円を受け取った場合、税金の合計は約151万円(135万円+13.5万円+2.8万円)となり、手取り額は2,348万円(2,500万円-151万円)となります。

ただし、退職所得控除の適用を受けるためには、勤務先へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出する必要がありますので、忘れないようにしてください。

また、税負担を軽減するためには、分割で退職金を受け取ることを検討するのも一つの方法です。

分割で受け取る場合

退職金を年金形式として分割で受け取るケースもあります。会社によって受取方法が一括のみなのか、分割で受け取れるのか、また一括と分割を併用できるのかが異なるので、事前に確認しておきましょう。

退職金を年金形式で受け取る場合、その退職金は退職所得ではなく、他の公的年金と合算した雑所得として扱われます。

そして、公的年金などにかかる雑所得については、以下の速算表に当てはめて計算します。

公的年金などにかかる雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合

年齢公的年金などの収入金額の合計雑所得の金額
65歳未満60万円以下0円
60万円超130万円未満収入金額の合計-60万円
130万円以上410万円未満収入金額の合計×0.75-27万5,000円
410万円以上770万円未満収入金額の合計×0.85-68万5,000円
770万円以上1,000万円未満収入金額の合計×0.95-145万5,000円
1,000万円以上収入金額の合計-195万5,000円
65歳以上110万円以下0円
110万円超330万円未満収入金額の合計-110万円
330万円以上410万円未満収入金額の合計×0.75-27万5,000円
410万円以上770万円未満収入金額の合計×0.85-68万5,000円
770万円以上1,000万円未満収入金額の合計×0.95-145万5,000円
1,000万円以上収入金額の合計-195万5,000円

例えば、公的年金と退職金以外の収入はなく、65歳から退職金を年金形式で受け取り、公的年金との合計年収が600万円だった場合、雑所得の金額は441万5,000円(600万円×0.85-68万5,000円)です。

配偶者の年齢が60歳~64歳で収入がない場合の世帯全体の社会保険料は約73万円なので、最終的な課税所得金額は雑所得の金額から社会保険料および基礎控除配偶者控除を差し引いた282万5,000円(441万5,000円-73万円-48万円-38万円)となります。

所得税額は18万5,000円(282万5,000円×10%-9万7,500円)、復興特別所得税額は3,885円(18万5,000円×2.1%)です。

そして、住民税は28万7,500円(282万5,000円×10%+5,000)となり、最終的な手取りの額は約479万円になります。

分割して受け取る場合の所得税や住民税は原則として年金から差し引かれますので。自分で納付する必要はありません。

退職金にかかる税金を払うタイミング

退職金にかかる税金の支払いタイミングは受け取り方によって異なります。一括で受け取る場合と分割で受け取る場合があり、一般的には退職時に源泉徴収の形で支払われるのが一般的です。

一括で受け取る場合

退職金を一括で受け取る際には、退職金の総額から計算された税金が即座に源泉徴収されます。この時の税金は、企業が退職金支給時に計算し、退職者に代わって税務局へ支払いを行います。

分割で受け取る場合

退職金を分割して年金形式で受け取る場合は、雑所得として扱われ所得金額の計算方法が一括で受け取る場合と異なります。また、所得税や住民税の課税対象となる場合は、年金から差し引く形で徴収されますので、自分で納付する必要はありません。

最終的な税負担を軽減するためのポイント

確定申告時には、一年間の総収入や控除を正しく申告し、適用できる控除項目を見落とさないようにしましょう。これには、基礎控除、社会保険料控除住宅ローン控除などが含まれます。正確な情報を提供することで、最終的な税の負担を適正に保つことができます。

退職金に税金がかからないのはいくらまで?

退職金にかかる税金は、受け取る退職金の総額によって異なります。しかしながら、勤続年数に応じて設定される一定の金額までは税金が非課税となる非課税枠が設けられています。この非課税枠を上手く活用すれば、退職金を受け取る際の税金負担を軽減できる可能性があります。

退職所得控除とは

退職金に対する所得控除は、勤続年数に応じて設定され、受け取り方によっても変わることがありますが、大まかな計算方法は下記の通りです。勤続年数が長いほど、所得控除の金額は大きくなります。

退職所得控除額の計算方法

勤続年数退職所得控除額(円)
20年未満400万円×勤務年数
20年以上800万円+(70万円×金属年数※)

※ここでの勤続年数は勤続年数から20年を引いたもの

この計算方法は、一般的なケースを示したものであり、退職金の受け取り方によって控除の適用が変わることがあります。

控除枠を超える部分にかかる税金

控除枠を超える退職金には、通常の税金が適用されます。このため、控除枠の範囲内で退職金を受け取ることが、税金負担を軽減する上で重要になってきます。

分割で受け取る場合の注意点

分割で年金形式として受け取る場合は、控除枠の適用はありません。なぜなら、公的年金と合算し、雑所得として扱われるからです。ただし、雑所得の計算においても、公的年金などの雑所得以外の年収が1,000万円以下、1,000万円超2,000万円以下、2,000万円以上および年齢が65歳未満か65歳以上かで計算方法が異なり、雑所得以外の合計所得金額が少ないほど、最終的な雑所得金額は少なくなり、その分、税負担も軽減されます。

定年後も退職金を分割して受け取りながら、趣味を活かした収入などを考えている場合は、最終的な雑所得金額がいくらになるか事前に確認しておきましょう。

退職前の計画が重要

税金負担を最小限に抑えるためには、退職前に退職金の受け取り方を含めて詳細な計画を立てることが非常に重要です。勤続年数を意識しながら、退職所得控除枠を最大限利用するように計画を立て、税金対策を行うことが推奨されます。

退職金を受け取ったら確定申告は必要?

一般的に退職金を受け取った際の確定申告の必要性はありません。なぜなら、退職金にかかる所得税や復興特別所得税、住民税は、源泉徴収および特別徴収にて徴収されるからです。

しかし、以下のような特定のケースでは確定申告が必要となります。

退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合

退職金を受け取る際には、「退職所得の受給に関する申告書」を提出することが一般的です。この申告書は、退職金の支払いを行う者(雇用主)に対して提出します。申告書を提出することで、退職金にかかる税金が源泉徴収され、確定申告の手間が省けます。

したがって、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合、退職金に課せられる税金が源泉徴収および特別徴収されないので、確定申告が必要になります。また、申告書を提出しないと、控除を受けられないため、納めるべき税額が高くなってしまう可能性が高いでしょう。

所得控除を利用したい場合

退職所得の年に特定の所得控除を受けようとする場合、確定申告が必要になります。医療費控除・寄付金控除・生命保険料控除などの所得控除を利用したい場合は、確定申告を行わなければなりません。

公的年金などにかかる雑所得以外の所得金額が一定額以上の場合

以下に該当する場合も確定申告を行う必要があります。

  • 国民年金や厚生年金などの公的年金の収入が400万円を超えている
  • 公的年金などにかかる雑所得以外の所得金額が20万円を超えている

退職金については、原則確定申告が不要ですが、上記に該当する場合は必ず手続きを行いましょう。

まとめ

退職金に対する税金のかかり方には、所得税・復興特別所得税・住民税があります。税金がかかる額は退職金の受け取り方(一括または分割)や金額により異なります。重要なのは、一括で受け取る場合は全額が税金の対象になるわけではなく、退職所得控除枠があることです。分割で受け取る場合は、退職所得ではなく、雑所得になる点にも注意しておきましょう。

また、退職金を受け取った年は、それが所得とみなされるため確定申告が必要になる場合がありますが、適切な手続きによって税の負担を軽減することが可能です。退職金を受け取る際には、税金の計算方法や退職所得控除枠を十分理解したうえで、無駄な税金を払わないように意識することが大切です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事