• 更新日 : 2024年3月22日

医療費控除をさかのぼって申告できるのは5年以内!期限や申請方法を解説

医療費控除とは、1年間で一定額以上の医療費を支払った場合に、所得控除を受けられる制度です。医療費控除の申告により、多く支払った医療費が所得金額から控除され、納付した所得税などが還付される可能性があります。

医療費控除は、5年までさかのぼって申告できます。本記事ではさかのぼって医療費控除を申告する方法について解説します。

医療費控除はさかのぼって申告できる?

医療費控除とは、1年間で一定額以上の医療費を支払った場合に、医療費をもとに計算された金額分の所得控除を受けられる制度です。5万円分の医療費控除がある場合は、所得金額から5万円が控除されます。所得金額から医療費控除をした結果、本来の納付額より多く納付した所得税などが還付されます。

医療費控除を受けるには、確定申告が必要です。会社員で年末調整が済んでいても申告できます。また、副業をしている場合や個人事業主などで確定申告済みであっても、さかのぼって申告することが可能です。

医療費控除は5年間さかのぼって申告可能

医療費控除の対象は、その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費となります。期限は翌年の1月1日から5年間です。期限内であれば、さかのぼって申告できます。令和4年の医療費控除をさかのぼって申告する場合は、令和5年1月1日から起算して令和9年12月31日までが期限です。

確定申告済みの場合は、申告額を修正する「更正の請求」により医療費控除の申告が可能です。更正の請求をする場合、期限は本来申告すべき期限(法定申告期限)から5年間となります。更正の請求により令和3年分の医療費控除を行う場合は、本来の申告期限である令和4年3月15日から令和9年3月15日までに行わなければなりません。

申告をする本人はもちろん、誰の医療費が控除対象の範囲となるかについては、以下のとおりです。

  • 自分の医療費
  • 自己と生計を一にする配偶者の医療費
  • 自己と生計を一にする6親等内の血族やその配偶者、3親等内の姻族のために支払った医療費

医療費控除の対象となるもの・ならないもの

医療費はすべてが控除対象になるわけではありません。ここからは、医療費控除の対象となるケースとならないケースを紹介します。

医療費控除の対象となるケース

医療費控除の対象は、医療を受けるにあたって必要とされる出費です。具体的には以下のケースが挙げられます。

  • 医師や歯科医師の診療費
  • 治療や療養に必要な医薬品の費用
  • 病院や診療所などに運ばれる際にかかった費用
  • あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師の施術費
  • 介護保険制度等で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
  • 診療等のために通常必要とされる、通院費や送迎費、入院時の部屋代や食事代など
  • 傷病により必要な場合のおむつ代(要証明書)
  • 妊娠後の定期健診や検査などの費用、通院費用
  • 出産で入院する際、公共交通機関が使えないために利用したタクシー代
  • 年齢や目的からみて、歯列矯正が必要と認められる場合の費用

歯科治療は、一般的な水準を著しく超えないものは対象となります。ローン契約を締結するほどの治療であっても、一般的な費用の水準であれば対象です。

一方、ホワイトニングや歯並びを良くしたいといった美容目的の治療は対象外となります。

医療費控除の対象とならないケース

医療費控除の対象とならないのは、次のような出費です。

  • 美容整形手術や健康診断の費用
  • 医療機関までのタクシー代(電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除く)
  • 自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車料金
  • 眼鏡や補聴器等の購入費用
  • 疾病の予防や健康増進のための費用
  • 実家で出産するために帰省した際の交通費
  • 一般的に支出される水準を著しく超えると認められる特殊なもの

医療費控除の計算方法

医療費控除額は次の式で計算されます。

申告対象年度に支払った医療費-保険金などで補てんされる金額(※1)-AもしくはBのうち、どちらか少ない方(※2)

※1:生命保険だけでなく、健康保険で支給される高額医療費、家族療養費、出産育児一時金なども含む

※2:A=10万円、B=所得金額×5%(年収200万円未満の場合)

なお、保険金などで補てんされる金額は、給付の目的となった医療費額が上限です。入院費が6万円かかって給付金が10万円だった場合、補てん額は6万円となります。引き切れなかった4万円を別の医療費から差し引くことはしません。

参考として、仮に年間15万円の医療費を支払い、保険金などで補てんされる金額がゼロだった場合、年間所得金額別(一例)の医療費控除額を記載します。

年間15万円の医療費を支払った場合の医療費控除額

年間の所得金額計算式医療費控除額
160万円15万円-0-8万円(所得金額×5%)=7万円7万円
200万円以上15万円-0-10万円=5万円5万円

過去の医療費控除の申請方法

医療費控除は、医療費を使った年度の確定申告であれば、通常の申告手続きに沿って問題なく申告できます。では、過去の医療費控除を行いたい場合はどのように申告するのでしょうか。

過去の医療費控除は、確定申告をしていない場合としている場合で申告方法が変わります。ケース別に解説します。

確定申告をしていない年度の場合

確定申告をしていない年度の場合、スマホでもパソコンでも申告可能です。

本章では、パソコンでのやり方を解説します。スマホでのやり方は、のちほど「スマホでの過去の医療費控除の申請方法」の章で解説します。

パソコンで確定申告を行う場合は、以下の手順で行います。

  1. 国税庁 確定申告書等作成コーナーにて「作成開始」を選択
  2. マイナンバーカードもしくは開始届出書によりe-Taxのアカウントを作成
  3. 作成したアカウントでログインし、「過去の年分の申告書等の作成」をクリックし年度を選択
  4. 所得税をクリックする
  5. マイナポータルアプリとマイナンバーカードを使いマイナポータルにログイン、必要事項を確認する
  6. 画面の指示に従って入力

過去の医療費控除の申請方法

出典:令和5年分 確定申告書等作成コーナー|国税庁

すでに確定申告をしている年度の場合

すでに確定申告をしている場合は、提出済みの申告書を修正する形で過去の医療費控除の申告を行います。確定申告では、修正の手続きを「更正の請求」と呼びます。

更正の請求を行う期限は、申告した年度の確定申告期限から5年間です。令和3年度分の更正の請求をする場合は、令和4年3月15日から令和9年3月15日までとなります。

更正の請求は、以下の流れで行います。

  1. 確定申告書作成コーナーの中ほどにある「新規に更正の請求書修正申告書を作成する」のリンクをクリック
  2. 作成する更正の請求書・修正申告書の年度を選択
  3. 所得税の更正の請求書・修正申告書の「作成開始」をクリック
  4. マイナポータルの連携可否を確認する
  5. 必要事項を確認し、次へ進む
  6. マイナポータルのデータを確認後、画面に従って入力する

4で「マイナポータル連携を利用する」を選択すると、マイナポータル経由で医療費控除に使用できる医療費通知情報を取得し、自動的に該当項目に入力されます。マイナンバーと紐付いていない医療費データを直接入力したい場合は「連携しないで入力を行う」を選択しましょう。

6の入力画面に移ったら、画面の指示に従って必要事項を入力しましょう。e-Taxで作成した際のデータも活用可能です。

スマホでの過去の医療費控除の申請方法

スマホで過去の医療費控除を申告する場合、新規申告のみ可能です。過去に確定申告をしている場合の更正の請求はスマホではできません。前章で解説した「すでに確定申告をしている年度の場合」を参考に、パソコンから手続きを行いましょう。

医療費控除を新規に申告する場合、スマホ版e-Taxで行います。申告方法は下記のとおりです。

  1. マイナポータルで利用者登録をする
  2. 国税庁 確定申告書等作成センターのサイトに行き「作成開始」をタップ
  3. 作成する申告書等の選択で「所得税」をタップし、作成年度を選択する
  4. e-Taxのマイナンバーカード方式かID・パスワード方式を選択、「次へ」をタップ
  5. マイナポータルアプリをインストールしていれば「同意して次へ」
  6. 確認画面は下にスクロールして「次へ」
  7. マイナンバーカードを読み込み、e-Taxへログインする
  8. 必要事項を確認する
  9. 作成開始をタップし、画面の指示に従い「医療費控除」を入力する

医療費控除を入力する際は、以下のデータが必要となります。

  • 医療を受けた方の氏名
  • 病院・薬局などの支払先の名称
  • 医療費の区分(診療・治療、医薬品購入など)
  • 支払った医療費額
  • 生命保険や社会保険で控除される額

上記がわかる領収証を準備しておきましょう。

なお、領収証は5年間保管することになっています。保管期間である5年間は、支払いをした年の翌年1月1日から起算します。令和3年分の医療費控除を申告した場合は、令和8年12月31日まで捨てずに保存しておかなければなりません。

医療費控除を2年分まとめて手続きするには?

確定申告は、その年ごとの控除額や納税額を計算する手続きです。そのため、過去の分を合算しての申告はできません。

医療費控除についても同様です。2年分をまとめて手続きすることはできず、1年分ずつ申告する必要があります。2年分の医療費を合算すると10万円以上になるからといって、まとめて控除額を計算することはできません。

更正の請求も新規の申告も、1年分ずつ2回に分けて申告することは可能です。令和2年度と3年度の申告を行いたい場合、片方の新規申告もしくは更正の請求を一度終わらせたあと、他年度の新規申告もしくは更正の請求を行う形になります。

医療費控除の申請期限が過ぎた場合

医療費控除の申告期限は、所得税法にて5年間と定められています。5年の起算日は、申告したい年度の翌年1月1日からになります。令和3年の医療費控除を申告したい場合は、令和4年1月1日から5年後の令和8年12月31日までに申告しなければなりません。

5年の期限が過ぎたら、さかのぼっての申告はできません。必ず期限内に申告するよう気を付けましょう。

医療費控除は期限内であればさかのぼっての申告が可能

医療費控除は、一定額以上の医療費を支払った際に、所得金額から医療費が控除される制度です。10万円もしくは年収の5%分(年収200万円未満の場合)のどちらか少ない方が所得金額から控除されます。

医療費控除の期間は5年間です。さかのぼっての申告もできます。すでに確定申告をしている場合の期限は、その年の申告期限から数えて5年間です。

新規に医療費控除の申告をする場合は、スマホのe-Taxから申告ができます。確定申告済みである場合はスマホからはできず、パソコンから行わなければならない点に注意しましょう。


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