- 更新日 : 2023年10月20日
PBRとPERはどちらが重要?違い、目安、計算式の解説
株式投資において、投資判断をする際に用いられる代表的な指標が「PBR」と「PER」です。PBRとPERにはどのような違いがあるのでしょうか。この記事では、PBRとPERの意味や目安、計算式や重要性について解説します。
目次
PBRとは
PBRは、株式投資において企業の価値を測る指標として利用されます。
PBRとは何か
PBR(Price Book-value Ratio)とは、株価純資産倍率のことで、企業の会計上の解散価値(企業が解散した場合に株主に還元される資産価値)に対して、現在の株価が「何倍」であるかを示す指標です。
PBRでわかること
PBRでは、企業の解散価値に対して、株価が割高(解散価値に対して高く評価されていること)か、または株価が割安(解散価値に対して低く評価されていること)かがわかります。
仮にPBRが「1倍」であれば、企業の解散価値と現在の株価が等しい状態であり、このPBRが1倍より「低い」状態である場合、一般的に株価が「割安」と判断できます。
PBRの目安
PBRの目安となる値は、1倍です。PBRが1倍であるということは、企業の解散価値に対して株が買われ過ぎてもいなければ、売られ過ぎてもいないと判断できます。しかし、必ずしも1倍が目安にならないという点に注意が必要です。
東京証券取引所が2023年3月末に公開した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」によると、東証再編後のプライム市場は約半数、スタンダード市場では、約6割の上場企業が「PBR1倍未満」でした。
経済産業省が2022年3月31日にまとめた「事務局説明資料~グローバル競争で勝ちきる企業群の創出について~」によると、PBR1倍未満は米国(S&P500)が3%、欧州(STOXX600)で約20%であるため、日本企業の評価は低い傾向にあることがわかるでしょう。
なお、同資料によると2022年3月7日時点での当時の東証一部上場企業のPBRの最頻値は、0.5~0.6倍です。必ずしもPBR1倍が目安にならないことがわかります。
また、業界によってもPBRの平均値が大きく異なってくる点に注意が必要です。近年の傾向として、銀行や保険、エネルギー関連の平均値はPBR1倍を下回る傾向にありますが、投資家の期待値が高い技術系やヘルスケア系などはPBRの平均値が高い傾向にあります。
参考:資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について(2023年3月31日)|JPX
参考:事務局説明資料~グローバル競争で勝ちきる企業群の創出について~(令和4年3月31日)|経済産業省
PBRの計算式
PBRは、以下の計算式により求められます。
株価は、評価時点での株価です。証券取引所に上場された株式は流動性が高く株価が常に変動しているため、評価するタイミングによってはPBRが大きく異なることがあります。
1株当たりの純資産額とは、評価する企業の純資産額(総資産から負債を控除した金額)を発行済み株式数(その企業が保有する自己株式を除く)で除した値です。
企業の純資産額を厳密に計算する場合は、純資産に含まれる金額のうち、新株予約権や資本剰余金など一部を控除して計算します。
PERとは
PERもPBRと同様に企業の価値を測る指標として利用されます。
PERとは何か
PER(Price Earnings Ratio)とは、株価収益率のことで、企業の純利益に対して現在の株価が何倍であるかを示す指標です。
PERでわかること
PERも、株価が「割高」か「割安」なのかを判断する一つの材料となり、投資資金の回収となる目安がわかります。
PERは、投資資金を回収するのにかかる期間を理論値として示したものです。一般的には、PERの値が高ければ投資資金の回収にかかる期間が長くなるため「割高」、PERの値が低ければ投資資金の回収にかかる期間が短くなるため「割安」と判断できます。
PERの目安
PERは、「15倍程度」が目安とされます。これは、日本の上場企業のPERの平均値がおおむね15倍であるためです。
株式会社日本取引所グループ(JPX)が公表している「規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧」によると、2022年12月時点でのPERの平均は、プライム市場で14.4倍、スタンダード市場で12.9倍、グロース市場で61.5倍でした。
グロース市場は、高い成長性のあるベンチャー企業などで構成されることから、株主の期待値も高くPERが高くなる傾向にあります。この点を考慮すると、「PER15倍」は、ある程度現実に即した目安といえるのではないでしょうか。
なお、業界によってもPERの平均値は異なるため、比較する際は業界別の平均値と比較するのが基本です。規模や業界別のPER・PBRは、JPXで月別に公開されていますので、そちらを参考にするとよいでしょう。
業界別の特徴としては、コンピューターや小売関連などはPERの平均値が高く、保険・銀行、エネルギー、製造業関連などはPERの平均値が低い傾向にあります。
参考:規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧|JPX
PERの計算式
PERは、以下の計算式により求めた値です。
1株当たりの当期純利益は、EPS(Earnings Per Share)と表現されることもあります。企業の当期純利益を発行済み株式数(その企業が保有する自己株式を除く)で除した値です。
1株当たりの当期純利益を求めるのに必要な当期純利益は、企業の一会計期間おける最終的な利益を表します。企業が主な事業活動で得た収益や費用だけでなく、本業以外で生じた利益や損失も計算に含まれます。
PBRとPERの違い
PBRもPERも、株価が「割高」か「割安」なのかを判断する投資尺度として使われます。
いずれも株式の価値を測る指標ではあるものの、判断の基準が異なります。
PBRは株価を純資産との比較で評価した値で、PERは株価を当期純利益との比較で評価した値であるためです。
PBRは資産価値の観点から、PERは収益性の観点から株式を評価しているため、似ているようで実際には異なります。
PBRとPERはどちらが重要?
PBRとPERの重要度合いについては、投資家が重視したい部分で変わってくるでしょう。
PERは、投資家の企業への期待値を示します。企業に対して将来性や成長性を期待する投資家が多いほど、株式は買われやすく株価が上昇しやすい傾向にあるため、期待値の高い企業ほどPERは高くなる傾向にあります。PERは割安かどうかの判断にも用いられますが、低いほど良いというものでもありません。その企業の成長可能性への期待を判断するのにも有効な指標です。
一方、PBRは企業資産価値を基準とした指標であることから、PERのように大きく変動しにくい値といえます。PBRは価値が大きく変動しにくい純資産を基準としているためです。PERは経済状況の影響も受けやすいことから不況時などは異常な値を示すことがありますが、PBRはそうした傾向が少なく、PBRは期間別の比較がしやすいだけでなく、企業の安定性を把握するのにも役立ちます。
なお、PBRとPERどちらも万能な指標ではありませんが、株式投資に欠かせない代表的な指標です。どちらかを重視するのではなく、どちらも投資判断に活用することが望ましいでしょう。
PBRとPERの違いを明確に把握しよう
PBRとPERは株式投資の際に、株価が「割高」か「割安」なのかを判断する尺度としてよく使われます。どちらも株式の価値を測る指標ですが、計算で用いる値が異なることから意味も異なります。株式投資の代表的な指標ですので、それぞれどのような特徴があるのか違いを明確に把握して、投資判断に活用しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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