- 更新日 : 2023年9月21日
株の信用取引とは?メリット・デメリットやコストを解説
現金や保有する有価証券を担保に、証券会社に現金や株券を借りて行う取引のことを信用取引といいます。担保にした金額以上の取引ができるのが特徴です。この記事では、株式の信用取引の仕組みやメリット・デメリット、信用取引にかかるコストについて解説していきます。
目次
信用取引とは
株式の信用取引は、現金や保有する有価証券(株式など)を委託保証金として証券会社に差し入れることで、証券会社から現金や株券を借りて株式の売買ができる取引を指します。証券会社で信用取引口座を開設して取引を行うのが一般的です。
なお、信用取引には、制度信用取引と一般信用取引の2種類があります。一般信用取引は、原則として全ての上場銘柄を対象にしたもので、返済期限などは証券会社との取り決めで決まります。
制度信用取引は、証券取引所の介入がある信用取引です。対象銘柄は取引所が選定し、品貸料(貸株超過にかかるコスト)や権利処理(株主の権利にかかわる取り決め)なども取引所が定めます。返済期限が最長6カ月と固定されているのも特徴です。
信用取引の仕組み
信用取引は、買建(信用買い)と売建(信用売り)の2つの仕組みで成り立っています。それぞれの仕組みを解説します。
買建
買建は、保証金を担保に、証券会社から現金を借りて株を買うことであり、買い建てた株券のことを買建玉といいます。
自己資金だけで株取引をする現物取引は買いから始まるので、現物取引の買い注文と基本的な仕組みは同じです。なお、信用買いは、証券会社から保証金を超える現金を借りて取引ができるので、自己資金以上の取引ができる点が現物取引と異なります。
また、信用買いでは現金を借りて取引するので、返済期日までに現金の返済が必要です。返済方法には、信用買いした株式を売却して返済資金に充て返済する方法(転売)、借り入れた資金を自身で用意して返済する方法(現引き)の2つの方法があります。
売建
売建は、保証金を担保に証券会社から売却のための株式を借りてその株を売ることです。売り建てた株券のことを売建玉といいます。株式が手元になくても、売り注文から取引を始められるのが信用取引の特徴です。
証券会社から借りた株式の返済方法には、信用売りで売却した同銘柄の株式を買い付けて返済に充てる方法(買い戻し)と、借り入れた株と同銘柄の株式を自分で用意して返済する方法(現渡し)の2つの方法があります。
信用取引のメリット
株取引を現物取引ではなく信用取引でする主なメリットを紹介します。
レバレッジを効かして取引ができる
新規に信用取引をする場合、証券会社に担保として差し入れる保証金は約定金額の30%以上です。最大で保証金の約3.3倍の取引が行えることになります。
現物取引では等倍での取引しかできませんが、信用取引はレバレッジ(少額資金で多額の投資をすること)を効かせながら取引ができるのが大きな特徴です。例えば、30万円の保証金を差し入れれば、最大で100万円の取引ができます。
レバレッジを効かして取引をすれば、利益が出たときに、その利益額も大きくなります。値嵩(ねがさ)株といって、手持ち資金では買えないような株価の高い株式に手を出しやすくなるのも信用取引のメリットです。
下落時にも投資機会を得られる
株価下落の局面で投資のチャンスがある点も信用取引のメリットといえるでしょう。現物取引では、持っていない株式を売ることはできず、買い注文からしかできません。
その点、信用取引は信用売りといって売り注文から取引を始めることができます。信用売りは、自分で株式を持っていない状態で売り注文を出すことから空売りともいわれます。空売りができる理由は、信用取引の仕組みでも説明した通り、証券会社から、証券会社の保有する銘柄の株券を借りられるためです。
信用取引では売りからでも取引を始められるため、株価の下落局面でも空売りで投資機会を得ることができます。
また、信用売りができることを利用して、現物で保有する株式の株価が下がりそうであるものの売却したくない場合、同じ銘柄を信用売りすることにより、リスクヘッジを図り、株価下落のショックを和らげる効果も期待できます。
株を担保に取引ができる
信用取引では担保として保証金を証券会社に差し入れる必要がありますが、差し入れる保証金は現金以外にも認められています。現物取引において自身が保有する有価証券も委託保証金の対象にでき、保有する株式だけでなく投資信託も担保にできるのが特徴です。
例えば、株主優待や配当金を目的に現物取引で保有している株式も、信用取引で委託保証金として差し入れることで有効活用できます。なお、委託保証金として差し入れる保有株式などは、代用有価証券ともいわれます。ただし、代用有価証券を差し入れる場合、有価証券の種類や銘柄によって各証券会社が決めた一定の率(掛目)を時価にかけて評価額を算出します。時価がそのまま評価額となるわけではないことを理解しておきましょう。
同日に同銘柄を何度も売買できる
信用取引には決済後の受け渡し日まで証券会社に差し入れた保証金を再利用できないというルールがありました。しかし、2013年1月から保証金の範囲内なら上限なく取引ができるように規制緩和されたことで、同じ保証金内で回転売買できるようになりました。
回転売買とは、同一の委託保証金を利用して、短い保有期間で同じ銘柄の売買を繰り返すことです。信用取引は同一銘柄であっても売買に制限がかからないため、1日に同じ委託保証金を利用して、何度も同じ銘柄の売買ができます。
なお、現物株の場合は、金融商品取引法および「金融商品取引法第百六十一条の二に規定する取引及びその保証金に関する内閣府令」で差金決済が禁じられていることもあり、同じ資金を利用して1日にできる取引は、1往復に制限されます。現物取引では、基本的に信用取引のように1日に同銘柄の売買を繰り返す回転売買はできません。
信用取引のデメリットやリスク
信用取引で注意したいデメリットやリスクを4つ取り上げます。
現物取引よりもコストがかかる
信用取引のコストの部分で詳しく説明していますが、信用取引では現物取引にないコストがかかります。
現物取引でかかるコストは、基本的に売買手数料のみです。証券会社によって異なりますが、1約定ごとに手数料が発生するプランのほかに、1日定額制のプランを設けているプランもあります。
信用取引は、証券会社から現金や株券を借りて取引を行うので、売買手数料のほかに、現金を借りることで発生する金利や、株券を借りることで発生する貸株料などのコストがかかります。
損失が膨らみやすい
信用取引のメリットで、レバレッジを効かせて取引できることを説明しました。相場に対してプラスに働いたときは、現物取引以上の大きな利益を得られる可能性がありますが、相場に対してマイナスに働いたときは逆もあり得ます。したがって、大きな損失を抱える可能性も生じます。
現物取引の場合は、株取引で損失が出ても、保有する銘柄の企業が倒産などしない限り、0円になることはありません。その一方、信用取引は最大約3.3倍の取引ができるので、損失が大きいと委託保証金がゼロになるどころか、マイナスになってしまうこともあります。
相場が大きく変動した場合、損失が大きく膨らむので、損切りでリスクコントロールするなどの対策が必要です。
追証のリスクがある
信用取引には、追証(おいしょう)のリスクがあります。追証とは、証券会社の決める追証ライン(最低保証金維持率)を割り込んだ場合、追加で委託保証金の差し入れが必要になることです。
例えば、追証ラインが25%だった場合、信用取引で保有する銘柄に対しての委託保証金が25%を下回った場合に追証が発生します。追証が起こるのは、建玉の含み損が膨らんだ場合や、現物取引で保有する株式を委託保証金に差し入れており、その保有銘柄の価値が下がった場合などです。
強制決済のリスクがある
追証が発生しているにもかかわらず追加の委託保証金の入金がない場合や、返済期日までに決済が行われなかった場合などに、証券会社の判断により強制決済が行われることがあります。
強制決済となると、投資者の意図しないタイミングで決済が行われます。思わぬ損失が生じるので、注意が必要です。
信用取引のコスト
信用取引では、売買手数料(信用取引手数料)のほかに、金利や貸株料などのコストが発生します。それぞれどのようなケースで発生するのか詳しくみていきましょう。
売買手数料
売買手数料は、信用買いと信用売りのどちらにもかかる手数料です。証券会社で異なりますが、1注文あたりの約定代金で売買手数料を定めていたり、1日定額で売買手数料を定めていたりすることが多く、大口取引は手数料無料などの優遇を受けられることもあります。
金利
証券会社から借りたお金に対して発生するコストです。信用取引で証券会社からお金を借りて株式を買った場合に発生します。一般信用取引と制度信用取引では金利が異なり、一般信用取引の方が金利は高いことが多いでしょう。
貸株料
信用取引で証券会社から株券を借りた場合に発生するコストです。信用売りをするときに必要になります。
なお、信用売りでは、貸株料のほかに品貸料(逆日歩)の支払いが発生することもあります。品貸料は、制度信用取引において、証券会社が信用売りで貸せる株券が不足する場合、機関投資家などから株を借りて調達するときに発生するコストのことです。
信用取引を正しく理解して始めよう
レバレッジを効かせて取引ができるため信用取引にはリスクもありますが、売り注文から始められて多くの投資機会を得られるたり、回転売買ができるたりするなどの魅力もあります。信用取引でできるだけリスクを抑えて投資をするには、信用取引について正しく理解することが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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