• 更新日 : 2023年7月14日

グロース株とバリュー株の違いとは?代表的な銘柄や見分け方

グロース株は将来的に成長が期待できる銘柄、バリュー株は企業価値に対して株価が追いついていない銘柄のことです。グロース株とバリュー株の違いや、メリット・デメリット、見分け方を解説しています。代表的なグロース株、バリュー株も紹介しているので参考にしてください。

グロース株とは

グロース株とは、今後大きな成長が期待できる株式銘柄のことを指し、グロース株に投資することをグロース株投資といいます。グロース株のメリット・デメリット、代表的なグロース株やグロース株の探し方を紹介します。

グロース株の特徴

グロース株は今後の成長が見込める業種あるいは業績のため、投資家から人気が集まりやすく、株価が高い傾向にあります。

また、新規参入企業など急成長を遂げているため、設備や事業への投資に特化するために配当金を出さない企業が多いようです。

グロース株に投資するメリット

グロース株は大きな成長が期待できる業種あるいは業績であることから、株価の上昇が期待できるため、長期投資、短期投資どちらにも利用できる可能性があります。以下グロース株に投資するメリットを3つ紹介します。

大きな値上がり益が期待できる

グロース株にはIT(情報技術)やハイテク企業などの成長が見込まれる業種や、企業の良好な業務内容などの背景から、長期的な上昇トレンドに向かう可能性があります。企業を分析する中で、グロース株が成長トレンドに入っていることを早い段階で確認できれば、大きなキャピタルゲイン(値上がり益)が期待できます。

長期投資に向いている

グロース株は企業の業績が好調で長期的な成長トレンドに入っている場合、保有しているだけで株価が上昇することから、その間に何度も売ったり、買ったりする必要がありません。企業の業績や経済情勢を見極めることができれば、長期的に大きなリターンが得られる可能性があります。また状況に応じて、買い増しを検討するのも良いでしょう。

短期投資でも利益を狙える

グロース株は短期投資で利益を狙うことも可能です。重要な経済指標の発表や、企業の業績発表など、株価に影響を与える重要な情報が発表されると、株価が一時的に大きく上昇することがあります。そうした情報をチェックしておき、適切なタイミングで売買をすることで短期的なキャピタルゲインが狙えるでしょう。

グロース株に投資するデメリットや注意点

グロース株は配当金がない、あるいは少なく、すでに株価が割高になっている可能性があるといったデメリットがあります。以下、グロース株に投資するデメリット・注意点を紹介します。

配当金がない、あるいは少ない銘柄が多い

グロース株は企業の今後の成長を重視するため、設備投資・事業投資に特化をして配当金を出さない、あるいは配当利回り(※1)が低い傾向があります。

投資家の中には、配当金狙いの方もいるかもしれません。こうした配当金を重視する投資家にとっては、グロース株における配当利回りの低さはデメリットに感じる可能性があります。

(※1)配当利回り 株価に対する年間配当金の割合。株価1,000円、配当金50円なら配当利回りは5.0%となります。

すでに株価が割高になっている

グロース株は人気があるだけに、株価がかなり割高になっていることがあります。グロース株に投資をしようと思っても、株価が高くて買えないこともあるでしょう。

不調になったときの反動が大きい

グロース株は、景気や、業種のトレンドなどさまざまな背景から企業の成長が鈍化すると、株価が大きく下落する傾向があります。上昇率が大きいとその分、下落したときの反動も大きくなるため、普段から企業動向や、企業を取り巻く経済環境には常に注意を払っていくことが大切です。

代表的なグロース株

代表的なグロース株を紹介します。

東京エレクトロン【8035】

日本の最大手半導体製造装置メーカー。商品の品ぞろえは世界トップクラスを誇り、液晶を中心としたフラットパネルディスプレイの製造装置も手掛けています。

出典:【8035】東京エレクトロン 株価チャート-Trading View-

決算期売上高営業利益純利益
2023.32,209,025617,723471,584
2022.32,003,805599,271437,076
2021.31,399,102320,685242,941

単位:百万円

ファーストリテイリング【9983】

アパレルブランド「ユニクロ」を展開。商品企画・開発から販売までを手掛け、高品質かつリーズナブルな商品を提供しています。

出典:【9983】ファーストリテイリング 株価チャート-Trading View-

決算期売上高営業利益純利益
2022.82,301,122297,325273,335
2021.82,132,992249,011169,847
2020.82,008,846149,34790,357

単位:百万円

ラクス【3923】

交通費・経費精算ソフト「楽楽精算」や、請求書といった帳票発行ソフト「楽楽明細」などを展開。主に中小企業向けの業務効率化を支援するクラウドソフトを提供している企業です。

出典:【3923】ラクス 株価チャート-Trading View-

決算期売上高営業利益純利益
2023.327,3991,6561,274
2022.320,6291,5781,078
2021.315,3873,8982,936

単位:百万円

レーザーテック【6920】

半導体関連装置を中心に、フラットパネルディスプレイ関連装置やレーザー顕微鏡の設計、製造、販売を行っています。半導体用マスクブランクス欠陥検査装置は世界シェア100%を誇ります。

出典:【6920】レーザーテック 株価チャート-Trading View-

決算期売上高営業利益純利益
2022.690,37832,49224,850
2021.670,24826,07419,250
2020.642,57215,06210,823

単位:百万円

グロース株の探し方

グロース株を探す方法はいくつかありますが、ここではROE、売上高成長率、PERを使った方法を紹介します。いずれも同業と比較して、業界全体のトレンドなのか、その企業固有の要因で成長しているのかを確認することもできます。

ROE(株主資本利益率)から探す

ROEとは「株主資本利益率」あるいは「自己資本利益率」のことであり、自己資本に対してどれだけ利益を生み出すかを示す指標です。

【ROEの計算式】

ROE(%)=当期純利益÷自己資本✕100

ROEが高いほど、自己資本を効率的に利用していることを表しています。目安としてROEが10%以上の企業は、成長性が高いと考えられます。

売上高成長率から探す

売上高成長率とは、1年間でどれだけ売上を伸ばしているかを見る指標で、以下の計算式を使って計算します。

売上高成長率=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高

ただし一時的な要因で売上が伸びているだけという可能性もあるため、売上高成長率は3年分程度を確認しておくと良いでしょう。

PER(株価収益率)から探す

企業の1株あたりの利益に対して、株価が何倍になっているかを表し、PERが高いほど、株価が割高と判断します。

PERは以下の計算式で計算します。

PER(倍)=株価÷1株あたり利益(EPS:Earnings Per Share)

EPS=当期純利益÷発行済株式総数

PERが15倍以上の場合、その銘柄はグロース株の可能性があります。

バリュー株とは

バリュー株とは、将来利益や純資産から評価した企業価値に比べて、割安に評価されている株式銘柄のことで、割安株といわれることもあります。またバリュー株に注目した投資手法をバリュー株投資といいます。

バリュー株の特徴

バリュー株は知名度が低い、あるいは市場からの評価が低く企業業績に対して株価が下がりすぎている傾向にあります。そのため割安なタイミングで購入しておくことで、将来、企業が評価されて株価が上昇したときに値上がり益が期待できます。

バリュー株に投資するメリット

バリュー株はそもそも市場から評価されていないため株価が低く、そこからさらに下落するリスクは低い傾向にあります。またバリュー株は、配当金を出している銘柄が多く、安定した運用益が期待できます。ここではバリュー株に投資するメリットを紹介します。

株価の下落率が低い傾向がある

バリュー株はもともと企業価値が評価されておらず、投資家から放置されている銘柄です。そのため企業が本来の企業価値の水準に戻るまで、株価が大きく下落する可能性は低いと考えられます。

またバリュー株はグロース株に比べてボラティリティ(価格の変動率)が低い傾向があり、低リスクで運用できる点もメリットといえるでしょう。

高い配当利回りが期待できる

バリュー株は大企業が多く、配当金や株主優待を充実させている傾向にあります。株式を頻繁に売買することなく、保有し続けることで定期的に配当金や株主優待が受け取れるため、リスクを抑えた運用ができるでしょう。

また配当金に対して割安な銘柄を購入できれば、高い配当利回りが期待できます。

バリュー株に投資するデメリットや注意点

バリュー株はグロース株ほど大きな値上がり益が期待できない、必ずしも配当金や株主優待が定期的に受け取れるとは限らないなどのデメリットもあります。以下、バリュー株に投資するデメリットや注意点を見ていきましょう。

大きな値上がり益は期待できない

バリュー株は企業の評価が低く、投資家からの企業価値が見直されて適正な水準に戻ることを期待する投資方法です。株価の変動率が大きくないことから、グロース株ほどの大きな値上がり益を得られるケースは少ないでしょう。

そのためバリュー株は、大きな値上がり益を期待している投資家には向いていない可能性があります。

配当金や株主優待が必ずもらえるとは限らない

配当金や株主優待は、必ず受け取れるわけではありません。企業の業績や、方針によって配当金が減ったり、株主優待がなくなったりする場合があります。

配当金や株主優待を期待して投資している投資家は、投資先が配当金や株主優待を今後も出せるか、企業業績などの情報をもとに定期的に確認しておきましょう。

株価が回復しない可能性がある

保有している銘柄の株価が、将来、必ず適正な水準に戻るとは限りません。中には倒産の危機にあるために株価が割安になっているケースもあるため、さまざまな分析手法を通じて慎重に銘柄選定することが重要です。

代表的なバリュー株

代表的なバリュー株を紹介します。

三菱商事【8058】

日本を代表する大手総合商社です。石炭や銅、天然ガスといった資源関連事業に強く、機械、生活産業、化学品といった非資源分野において強い収益基盤を有しています。

出典:【8058】三菱商事 株価チャート-Trading View-

決算期売上高営業利益純利益
2023.321,571,9731,092,1861,180,694
2022.317,264,828759,463937,529
2021.312,884,52184,915172,550

単位:百万円

オリックス【8591】

生命保険、融資、銀行、自動車、不動産など多角的に事業展開する金融サービス会社です。主力のリース業では、情報関連機器や産業・工作機械など多くの商品を取り扱っており、中堅、中小企業を中心に幅広い顧客基盤を築いています。

出典:【8591】オリックス 株価チャート-Trading View-

決算期売上高営業利益純利益
2023.32,666,373313,988273,075
2022.32,520,365302,083312,135
2021.32,292,708258,814192,384

単位:百万円

三菱UFJフィナンシャルグループ【8306】

メガバンクである三菱UFJ銀行を傘下に持ち、三菱UFJ信託銀行、アコム、三菱UFJニコスなども有する国内最大の総合金融グループです。

出典:【8306】三菱UFJフィナンシャルグループ 株価チャート-Trading View-

決算期売上高営業利益純利益
2023.39,281,0271,557,6911,116,496
2022.36,075,8871,282,2601,130,840
2021.36,025,3361,044,555777,018

単位:百万円

日本電信電話(NTT)【9432】

携帯電話のNTTドコモや、NTT東日本・西日本、情報サービス事業のNTTデータなどを子会社に持つ、国内最大の通信会社です。情報サービス分野を中心に、海外事業の買収も積極的に行っています。

出典:【9432】日本電信電話 株価チャート-Trading View-

決算期売上高営業利益純利益
2023.313,136,1941,828,9861,213,116
2022.312,156,4471,768,5931,181,083
2021.311,943,9661,671,391916,181

単位:百万円

バリュー株の探し方

企業価値に対して株価が割安なバリュー株を探すためには、主にPERやPBR、配当利回りといった指標を使って分析をします。

PERから探す

以下の計算式でPERを計算し、PERが10~15倍未満であれば、バリュー株の可能性が高いでしょう。

PER(倍)=株価÷1株あたり利益(EPS)

EPS=当期純利益÷発行済株式総数

PBRから探す

PBRとは株価を1株あたりの純資産価格で除して計算をします。1倍の場合、株価と純資産が等しい状態です。1倍割れをしていると、株価が純資産価格を下回っている状態と判断できます。

PBR(倍)=株価÷1株あたりの純資産額

BPS(Book-value Per Share)=純資産÷発行済株式総数

国内の上場企業は、PBR1倍割れ企業が多いと言われており、東京証券取引所はPBRとは1倍割れ企業に対して改善の具体策を講じようと要請している状況です。そのため今後、日本の上場企業のPBR改善が進む可能性があります。

配当利回りから探す

バリュー株は配当金を出す企業が多いため、バリュー株を保有する投資家は配当金を重視する傾向にあります。目安として、配当金3.0~4.0%以上が高配当銘柄と言われているため、銘柄はこれ以上の配当利回りを出す銘柄を選ぶと良いでしょう。

またどれくらい連続して配当を出しているかもポイントです。長期間配当を継続する銘柄を持っていれば、安定した収益が期待できます。中には「花王」33期、三菱HCキャピタルが24年のように、連続して増配を継続している企業もあります(2023年6月時点)。

さらに、長期的に配当金を維持することを約束する「累進配当」を掲げる企業も現れており、注目を集めています。

グロース株とバリュー株の違い

ここまでグロース株とバリュー株の違いについて紹介してきましたが、改めて整理をしてみましょう。

グロース株とは、業種や業績から、今後大きな値上がりが期待できる銘柄のことです。大きな値上がり益が期待できますが、配当金を出す企業が少ないという特徴があります。

一方、バリュー株は企業価値に対して、投資家からの評価が低い銘柄のことを指します。株価の変動はグロース株に比べて小さく、配当金や株主優待を出す企業が多い特徴があります。

グロース株とバリュー株の見分け方

グロース株とバリュー株の主な見分け方は、以下の3つです。

業種で見分ける

一概にはいえませんが、ITや半導体、電気自動車、AI関連企業は需要が多く急成長が続いている傾向があるためグロース株の可能性が高くなっています。金融や公共事業といった昔からあり業績が安定した企業はバリュー株の可能性が高いでしょう。

PERで見分ける

企業のPERを計算して、15倍以上であればグロース株、10~15倍未満の場合はバリュー株の可能性があります。

売上・利益の伸び率で見分ける

売上・利益を過去数年程度さかのぼって分析し、成長率が10%以上継続的に上昇しているようであれば、グロース株の可能性が高いでしょう。

自身の投資スタイルに合った投資手法を選びましょう

グロース株とは、将来的に大きな成長が期待できる銘柄のことで、大きな値上がり益が期待できる反面、配当金を出さない企業が多い傾向にあります。一方、バリュー株は値動きがグロース株に比べて大きな値上がり益は期待できませんが、配当金や株主優待を受け取れる可能性があります。

グロース株とバリュー株のどちらに投資をするかは本人の投資の目的や、投資に対する考え方次第です。メリットやデメリット、特徴を理解して自分に合った銘柄を選びましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事