- 更新日 : 2023年6月30日
ストップ安とは?原因や値幅の動き、投資戦略の解説
株価の値動きは投資家を一喜一憂させますが、中でも制限値幅の下限まで株価が下落する「ストップ安」は大きな注目を集めます。本記事では、ストップ安の原因や値幅、連続した場合の値幅についてわかりやすく解説します。実際にストップ安を記録した事例を見ながら、ストップ安を活用した投資戦略や注意すべきポイントをご紹介します。
目次
ストップ安とは
「ストップ安(すとっぷやす)」は、相場の急落によって生じる市場の混乱や投資家たちの過熱化を避けるために設けられた制度で、制限値幅の下限まで株価が下がった状態を意味します。値幅は前日の終値もしくは最終気配値段を基準として算出され、1日の値幅制限を超えた株価での取引は行われません。つまり、基準値段が10,000円の銘柄が翌日100円になるといった大幅な値下がりは生じ得ないのです。
この反対の意味を持つのが「ストップ高(すとっぷだか)」です。ストップ安と同様、急激な株価上昇による市場の混乱などを避けるために設けられた制度で、ストップ高に達すると制限値幅を上回る株価での取引は停止されます。ストップ高の制限値幅や事例に関しては、こちらをご覧ください。
ストップ安の発生原因
値幅制限の下限まで株価が下がった状態を指す「ストップ安」。言葉だけ見るとややこしく感じますが、一般的に株価が下落するシーンを思い浮かべるとイメージしやすいはずです。ストップ安の発生について、想定される原因を見ていきましょう。
- 決算発表(業績悪化)
- 業績予想の下方修正
- 会社や経営陣、社員などのスキャンダル
- 世界情勢などの外部的要因
- ストップ高の翌日
上記はあくまで一例ですが、主に会社のイメージを落とす「ネガティブな理由」が影響します。特に決算や業績予想の下方修正が発表された直後(翌営業日)には、多くの投資家から売りが殺到し、株価がストップ安まで落ちるケースが見られます。
また、株価がストップ高まで上昇した翌日もストップ安になりやすいタイミングの一つです。「株価が上がっているタイミングで売って利益を最大化したい」という投資家が増え、前日に買い集められた株式の多くが売りに出されるためです。
ストップ安の値幅
では、株価がどこまで急落するとストップ安が適用されるのでしょうか。ストップ安の値幅は前日の終値から算出される基準値段によって異なり、以下の表の通り、決まっています。なお、ストップ高の場合も同じ値幅が適用されます。
基準値段 | 制限値幅 |
---|---|
100円未満 | 30円 |
100円以上、200円未満 | 50円 |
200円以上、500円未満 | 80円 |
500円以上、700円未満 | 100円 |
700円以上、1,000円未満 | 150円 |
1,000円以上、1,500円未満 | 300円 |
1,500円以上、2,000円未満 | 400円 |
2,000円以上、3,000円未満 | 500円 |
3,000円以上、5,000円未満 | 700円 |
5,000円以上、7,000円未満 | 1,000円 |
7,000円以上、10,000円未満 | 1,500円 |
10,000円以上、15,000円未満 | 3,000円 |
15,000円以上、20,000円未満 | 4,000円 |
20,000円以上、30,000円未満 | 5,000円 |
30,000円以上、50,000円未満 | 7,000円 |
50,000円以上、70,000円未満 | 10,000円 |
70,000円以上、100,000円未満 | 15,000円 |
※100,000円以上省略
上の表をもとに、例で考えてみましょう。
例1)基準値段となる前日の終値が1,000円の銘柄では、制限値幅はマイナス300円(上表の6段目に該当)となります。翌日の株価は最大でも700円までしか下がりません。
例2)基準値段となる前日の終値が7,000円の銘柄では、制限値幅はマイナス1,500円(上表の11段目に該当)となります。翌日の株価は最大でも5,500円までしか下がりません。
ストップ安が連続した場合
「売り注文が続く限りどんどん株価が下がっていくのか」という疑問が浮かびますが、ストップ安の連続を避けるために、証券取引所では一定条件下において制限値幅を拡大する臨時措置を設けています。ストップ安が2日連続し、かつ次のいずれかに当てはまる場合は本来の4倍にまで制限値幅が広げられます。
<値幅制限拡大の条件 ※以下のいずれか>
- 連続してストップ安を記録し、かつストップ配分が行われずに売買高が0株
- 売買高が0株のまま午後立会終了を迎え、午後立会終了時に限りストップ安で売買が成立している。加えて、ストップ安に売呼値の残数がある
臨時措置が適用された場合、制限値幅3,000円であればマイナス1万2,000円まで、制限値幅が7,000円であればマイナス2万8,000円まで値下がりするわけです。ただし上下幅が一定に拡大されるわけではなく、下限幅のみが4倍となります。
ここで注意すべきなのが、ストップ安が連続したあとに値幅下限に満たない株価で売買が成立すると、翌営業日以降は通常の制限値幅に戻ることです。値幅上限の4倍→ストップ高になるケースも考えられます。
ストップ安の値幅拡大事例
2022年2月8日、東京証券取引所は海外旅行などを取り扱う旅行代理店「旅工房」の制限値幅拡大を発表しました。「Go To トラベル」事業の補助金に関する不適切な申請と、それに関する調査委員会設置の報道が大きく影響したと考えられます。当時の基準値段は650円で、上限の値幅は100円(通常)、下限は4倍となるマイナス400円にまで拡大されました。本事例のように、臨時措置が適用される場合は、証券取引所のマーケットニュースにて通知されます。
ストップ安の事例
実際に、株価が急落してストップ安を記録した事例をご紹介します。出前館、UUUM、ispaceの3事例の値幅と株価下落の理由を見ていきましょう。
事例①株式会社出前館:5期連続の赤字見込みによる失望
2022年10月17日、出前サイトなどを運営する出前館の株価が急落し、ストップ安(前営業日比:-100円、555円)を記録。前週に発表した、23年8月期連結営業損益の赤字予想が大きく影響したもので、5期連続赤字による失望と宅配事業の需要減予想から売り注文が殺到しました。
事例②UUUM株式会社:広告収益減少による業績予想の下方修正
2023年4月17日、YouTuberのマネジメント事業を行うUUUM(ウーム)の株価が急落し、ストップ安(前営業日比:-150円、613円)となりました。前週に発表された23年5月期業績予想の下方修正が影響したと考えられ、上場以来の最安値を記録(※2023年6月1日時点)。売り注文が集まった背景には、YouTubeの再生回数低下による広告収入の減少、ゲーム事業における発売延期などがあります。
事例③株式会社ispace:月面着陸の失敗による失望
2023年4月26日、宇宙ベンチャー事業を展開するispace(アイスペース)の株価が急落し、ストップ安(前営業日比:-400円、1,590円)を記録しました。民間では世界初となる月面着陸を目指していましたが、前日に失敗が報じられたことで失望売りが殺到。期待感が高かった分、翌日も連続のストップ安となりました。
ストップ安を利用した投資戦略
投資家にとってはマイナスに働くことの多いストップ安ですが、うまく戦略を立てることで利益を出せる可能性もあります。ストップ安を利用した投資戦略を見ていきましょう。
ストップ安による割安買いを狙う
将来性のある企業の株価が一時的に下がっている場合、ストップ安まで下落した株式を「割安」と捉えてあえて買い注文するのも一手です。ストップ安で株価が下落した翌日にストップ高になるケースも見られるため、短期間で利益を得られる可能性があります。もちろん継続して下落するリスクも伴うため、情報を整理しながら冷静に分析しなければなりません。
ストップ安になりそうな株を空売り(信用売り)する
やや難易度が上がりますが、「空売り(信用売り)」と呼ばれる信用取引を活用して利益を狙う投資戦略もあります。空売りとは証券会社から株式を借りて売却し、信用期日までに株券を返す取引のことです。信用売りしたときの株価よりも買い戻したタイミングの株価が下落していると、差額が投資家の利益となります。ストップ安になりそうな銘柄を下がっている途中で信用売りし、ストップ安のタイミングで売却することで利益が見込めるというわけです。
ストップ安に関する注意点
ストップ安に関する主な注意点は次の2つです。
ストップ安株を買い付けるリスクを理解する
前述したようにストップ安になった割安株を買い付けて、株価が上がったタイミングで売る投資戦略もありますが、ストップ安のあとに必ずしも株価が戻るわけではない点を理解しておきましょう。2019年に株価が大暴落したサンバイオ株式会社(再生細胞医薬品の開発・製造、販売など)の株式のように、数年にわたって復活の兆しが見えないケースもあります。安く買い付けたからといって、必ず利益が出ると安易に考えないことが大切です。
保有銘柄がストップ安になっても慌てて売却しない
保有銘柄がストップ安に近づいた場合、「急いで売らなければ」と慌ててしまう投資家も多いものです。しかし、混乱を招いているタイミングだからこそ冷静な判断を心がけましょう。ネガティブな情報によって一時的に株価が急落するのはよく起こり得る話です。すぐさま売却に走るのではなく、企業価値や将来性、これまでの動きを十分に分析しながら考えましょう。
ストップ安のときこそ冷静に企業価値を見極めよう
制限値幅まで株価が下がる「ストップ安」は、投資家たちの混乱を招く大きな出来事です。だからといって感情的に売り買いしてしまうと思わぬ損失につながります。株価が急騰、急落しているときこそ冷静さを忘れずに、企業の価値を見極めていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
お金の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
保険証券とは?記載内容の見方や保管方法などを解説
こちらの記事では保険証券の概要から具体的な見方、保存方法、必要になった際の対応方法まで解説します。保険証券の重要性や正しい扱い方が理解し、いざというときに慌てることなく対応しましょう。 保険証券とは 保険証券とは、保険契約が成立した際に保険…
詳しくみるVTIとは?株価推移や配当利回り、おすすめの証券会社を解説
「日本株だけでなく、外国の株式にも投資してみたい」と考えたことはありませんか?しかし、他国の株式といっても、どの国がいいのか、そしてどの銘柄がいいのか全く分からないという方も多いのではないでしょうか。そこで、今回は外国ETFの一つ「VTI」…
詳しくみるQQQとは?株価推移や配当利回り、おすすめの証券会社を解説
QQQはETFの一種で、NASDAQ100指数に連動した運用成果を目指すETFです。この記事ではQQQのチャートをもとにしたこれまでの値動き、セクター別組入比率や組入銘柄、メリット・デメリットや注意点などについて解説しています。 また、最後…
詳しくみる配当金とは?利回り計算方法や受け取り方の解説
株式投資で得られる利益の一つに「配当金」が挙げられます。配当金は保有株式数に応じて分配される現金のことを指しますが、配当金のもらい方や受け取れる時期について今ひとつよくわからない方も多いのではないでしょうか。 この記事では配当金のもらい方や…
詳しくみるS&P500とは?株価推移やおすすめの証券会社を解説
S&P500は、アメリカ経済の動向を探る上で重要な株価指数です。アメリカ市場に投資する際に重宝される指標ですが、その中身に詳しくない方も多いでしょう。 今回は、S&P500の構成銘柄や株価チャートの動向、メリット・デメリット…
詳しくみるPTS取引とは?メリットデメリットやおすすめの証券会社の解説
PTS取引は、日中株取引ができない、時間外も株取引を楽しみたいという方におすすめ取引です。今回は夜間でも取引ができるPTS取引について詳しくご紹介します。取引のメリットやデメリット、PTS取引ができる証券会社、および特徴をしっかり確認してお…
詳しくみる