退職金がない企業は普通?受け取れない場合の備え方とは?

退職金の支給が普通のことなのか、そうでないかをよくわからない方もいることでしょう。この記事では、退職金制度のない企業に就職するメリット、退職金制度があっても受け取れることができなかったり、最終的に退職金をもらえなかったりする場合、やっておきたい対策について解説します。

退職金がない企業は違法?

日本の労働法では、退職金の支払いを義務付けていません。しかし、退職金制度を設けている場合、その支給ルールや条件を企業の就業規則に明記されていなければならず、基本的に一度設けられた退職金制度は、労働者の同意なく一方的に不利な内容に変更することはできません。

退職金制度の法的背景

退職金は、従業員が一定以上の期間にわたって勤務した結果として得られる権利であり、その存在と支給条件は通常、企業と従業員間の就業契約または労働協約で定められています。そのため、退職金の支給が企業の方針によって決定されることが一般的です。

退職金未設置の企業の対応

退職金制度を設けていない企業の場合、従業員が入社時に退職金が支給されないことについて説明(※書類には必ず記載)し、合意したうえで就業を開始する必要があります。明示的な合意がない場合、トラブルの原因になることもありますので、注意しましょう。以下の表に該当をまとめましたので、参考にしてみてください。

退職金がない企業における従業員の影響と懸念点

  • 長期勤続のモチベーション低下
  • 退職後の経済的不安の増大
  • 退職条件の交渉材料としての利用ができない

企業における退職金制度の代替措置

退職金制度を設けていない企業の中には、従業員の将来を支援するための別の制度を提供している場合があります。例えば、資産形成支援やキャリア支援プログラムなど、従業員が自己投資を行いやすい環境を整備している企業も存在します。

退職金がない企業に入るメリットとは

フレキシブルな給与体系

退職金がない企業では、その代わりとして給与体系をフレキシブルに設計している場合があります。これにより、成果や実績に応じて賞与や報酬が支給され、自分の努力次第で収入を増やすチャンスが豊富です。例えば、年に数回の業績評価を通じて、個人の貢献度や成果を明確に評価し、それに応じた報酬を設定しています。

キャリアアップのチャンス

退職金制度がない企業は、社員の成長やキャリアアップを重視する傾向があります。そのため、研修制度が充実していたり、昇進の機会が比較的多かったりすることが特徴です。外部の研修やセミナーへの参加支援も充実しているので、従業員は専門的な知識やスキルを身につけることで、キャリアアップに直結するチャンスを得やすくなります。

就職・転職の判断基準として

退職金の有無は就転職を検討する際の重要な判断材料の一つです。退職金がないことがデメリットと感じられるかもしれませんが、他の条件や企業のビジョンに魅力を感じる場合、「退職金がなくても働きたい」という思いになる場合があります。勤務先が自分の価値観やキャリアプランに合致するかどうかを見極めながら、就転職を考えましょう。

退職金制度があっても受け取れないケース

勤続年数が基準に達していない

退職金を受け取るためには、一定の勤続年数があるかどうかが条件となります。例えば、勤続5年以上といった条件を設けている企業の場合、5年を超えないと退職金が支払われません。

退職理由が企業の基準に合致しない

自己都合退職と会社都合退職では受け取れる退職金の有無や額が異なり、規程で退職理由が厳格に定められている場合、基準を満たさない退職では退職金が支給されないことがあります。

倒産や事業停止

企業が倒産したり、事業を停止したりする場合、退職金制度を設けていても退職金の支給が難しくなる場合があります。事前に退職金保証制度の詳細を確認しておくと良いでしょう。

退職金制度の改定

在籍中に退職金制度が改定され、受け取り資格を満たす条件や退職金の計算方法が変更されることがあります。退職金制度の変更には注意を払い、最新の規程を確認することが必要です。

退職金をもらえない場合にやっておきたい対策

退職金をもらえない場合の備え方として、以下の対策が挙げられます。

個人貯蓄の強化

定期預金や貯金による資産形成

  • 月々の給料から一定額を自動振替で貯蓄口座へ
  • ボーナスや臨時収入は極力貯蓄に回す

インデックス投資など低リスクの投資

  • 長期的な視野で資産を増やす目的でインデックスファンドに投資
  • 分散投資でリスクを抑えつつコツコツと資産を形成

老後資金計算ツールを活用した計画的な貯蓄

  • 必要となる老後資金の目安を計算し目標設定をする
  • 計画的な貯蓄と投資で目標達成を目指す

民間の退職金制度への加入

個人年金保険への加入

  • 死亡保障と老後の資金準備を兼ねる
  • 税制優遇措置を活用して賢く資産形成

確定拠出年金(iDeCo)の活用

  • 節税効果を考えながら自分で資産運用
  • 老後の資金として長期的に資産を形成

スキルアップによる収入源の多様化

資格取得や習い事でのキャリアアップ

  • 将来性のある分野で資格を取得しキャリアアップを目指す
  • 自分のスキルを活かした副業で収入を増やす

副業やフリーランスでの収入確保

  • 本業以外に時間を使って収入の柱を増やす
  • フリーランスとしての活動も視野に入れる

生活費の見直しと節約

毎月の固定費の見直し

  • 家賃、光熱費、通信費など定期的な出費を見直す
  • 不必要なサブスクリプションの解約

節約術を実践し日々の出費を減らす

退職金制度がある企業の割合

厚生労働省が実施した「令和5年就労条件総合調査の概況」によると、常用労働者30人以上の企業のうち、退職給付制度がある企業の割合は74.9%となっています。

企業規模別に見ると、以下のような割合になります。

企業規模制度の導入率
1,000人以上90.1%
300~999人88.8%
100~299人84.7%
30~99人70.1%

厚生労働省|令和5年就労条件総合調査の概況「第16表 退職給付(一時金・年金)制度の有無、退職給付制度の形態別企業割合」をもとに表を作成

この調査結果から、企業規模が大きいほど退職給付制度の導入率が高く、特に1,000人以上の大企業では、約9割の企業が退職給付制度を導入しています。一方で、中小企業では退職給付制度の導入率が低めという結果となりました。

また、業種別に見ると、以下のような特徴があります。

業種制度の導入率
電気・ガス・熱供給・水道業96.4%
金融業・保険業92.8%
製造業85.6%
卸売業・小売業77.4%
宿泊業・飲食サービス業42.2%

厚生労働省|令和5年就労条件総合調査の概況「第16表 退職給付(一時金・年金)制度の有無、退職給付制度の形態別企業割合」をもとに表を作成

この結果から、電気・ガス・熱供給・水道業や金融業・保険業といった業種では、退職給付制度を導入率が平均値を大いに上回っていることがわかります。一方で、宿泊業・飲食サービス業では退職給付制度の導入率が極めて低く、半数にも満たない状況です。

上記より、退職金制度を導入している企業の割合は7割から9割が多いですが、一方で退職金制度がない企業も一定数存在します。就職活動を行う際には、各企業の退職金制度を確認しておきましょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。