プライベートエクイティとは?投資を受けるメリット・デメリットを解説

低金利時代が続く昨今、機関投資家や個人投資家の間で「プライベートエクイティ(PE)投資」に注目が集まっています。とはいえ、プライベートエクイティ投資とはそもそもどういった投資なのか、企業がPE投資を受けることで得られるメリットとはどのようなものなのか気になる方も多いかもしれません。そこで、今回の記事ではPE投資の概要をはじめ、メリットやデメリットについてご紹介します。

プライベートエクイティとは

プライベートエクイティ(PE)とは、証券取引所で売買できない未公開株(非上場の株式)のことです。非上場の株式は創業者やその親族、また取引先などが所有していることから証券取引所で売買できず、当事者間の合意によって取引が成立するといった特徴があります。

プライベートエクイティ投資とは

プライベートエクイティ(PE)投資とは、非上場企業に対して投資することを指し、PE投資する投資会社や機関投資家のことを「PEファンド」と呼びます。

PEファンドは投資した非上場企業の価値を高め、株価が上昇した際に保有する株式を売却して利益を得ることを目的としているのが特徴です。

■PE投資の仕組み

プライベートエクイティ投資とは

なお、PEファンドが非上場企業の企業価値を高めるためには経営をある程度コントロールすることが必要不可欠です。そのため、一般的にPEファンドは100%に近い株式を取得します。

かつてはPE投資によって従業員の一斉解雇や契約の一方的な打ち切りが目立ち、「ハゲタカファンド」などと揶揄(やゆ)されることもありました。しかし、現在はマイナスなイメージが払拭されつつあり、ファンド側もネガティブなイメージから脱却しようとさまざまな改革を打ち出しています。

企業がプライベートエクイティ投資を受ける理由

企業がPE投資を受けようと考える理由の一つに、「事業改善や成長ノウハウの獲得」が挙げられます。なぜなら投資先企業に選ばれれば事業が成長するためのサポートやノウハウを得られるほか、上場の際にも助けてもらえることが多いからです。

また、創業間もない企業は実績や信用がないことから、金融機関による融資がほとんど期待できません。しかし、PE投資であれば融資を受けられる可能性があるといえるでしょう。

プライベートエクイティ投資の種類

ここではプライベートエクイティ投資の種類について解説します。PE投資は投資先に応じて、以下4つの種類に分けられます。

プライベートエクイティ投資の種類

ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタルは、ベンチャー企業やスタートアップ企業を主な投資対象としているのが特徴です。そのため、創業して日が浅く、少しでも早く事業を拡大したいと考えている場合に適しています。ベンチャーキャピタルでは取得する株式を半分以下に抑えるケースも多く、ほかのPE投資よりも柔軟性が高いのも特徴の一つです。

一般的にベンチャー企業やスタートアップ企業は独自の技術や独創的なアイデアをもとに、これまでにないサービスや製品で事業を進めていく傾向にあります。しかし、そうした可能性を秘めている一方で、事業実績や社歴がないことにより、銀行をはじめとした金融機関からの融資を得にくいのも事実です。

こうした企業に対し、サポートするのがベンチャーキャピタルであり、出資を得られれば早期の事業拡大はもちろん、市場シェアの獲得が期待できるでしょう。

バイアウト投資

バイアウト投資とは、企業買収のことです。優れたサービスや製品を有しているものの、経営力の不足や後継者不足などによって事業の継続が難しい場合に行われるケースが多く見受けられます。PE投資を通じ経営に参画し、大胆にメスを入れながら企業価値を向上させる傾向が強いのも特徴です。また、すでに成長している企業が対象となり、回収までの期間が短い一方で成果を出すのが難しいといった側面もあります。

企業再生投資

企業再生投資は、経営危機もしくは経営破綻の状態にある企業を投資対象としています。先述したバイアウト投資と異なり、業績不振の企業も対象となることから株式は割安になるケースがほとんどです。ただし、再生に失敗した場合は損失が生じるため、リスクも大きい点に注意が必要でしょう。

なお、企業再生の方法は大きく以下2つの方法に分けられます。

  • ターンアラウンド:企業の根幹に対して改革し、中長期的な企業価値向上を目指す
  • ワークアウト:企業のキャッシュフローの見直しなどを通じ、短期的な効果を目指す

ディストレス投資

ディストレス投資は、破綻寸前あるいはすでに経営が破綻した企業が投資対象です。具体的には株式や債券を買い取った上で、経営を再建し売却することで利益を得ることを目的としています。経営の再建に失敗したときのリスクは企業再生投資よりも大きく、ハイリスク・ハイリターンな投資手法といえるでしょう。

とはいえ、ディストレス投資は専門のヘッジファンドが担うことが多く、難易度の高さから一般投資家が参入しづらい(競合が少ない)といった特徴があります。

プライベートエクイティ投資を受けるメリット

ここではプライベートエクイティ投資を受けるメリットについてご紹介します。

豊富な資金提供を受けられる

PE投資では企業価値に見合う額の資金提供を受けられます。銀行などの金融機関から受ける融資とは異なり、利子や返済期限を気にしない点も大きな特徴です。

経営に対して手厚いサポートが受けられる

PE投資を受けるにあたり、さまざまな経営サポートを受けられます。サポートを受ける中で得た経営ノウハウはPEファンドが株式を売却した後も残ることから、長期的な利益になる点もメリットです。

事業承継問題の解決につながる

PEファンドの活用によって人材紹介やM&A(Merger and Acquisitions;合併と買収)といったサポートを受けられるため、事業承継問題の解決が見込めるでしょう。中小企業の中には後継者不足に悩むところも多く、事業が順調でもその代で廃業を検討するケースは少なくありません。

IPOやM&Aのサポートを受けられる

PEファンドはIPO(Initial Public Offering;新規公開株)やM&Aのイグジット(※)による資金回収を目的としているため、それらに関するサポートを受けられるでしょう。特にM&Aはプロセスが複雑であることから。サポートを得られるのは大きなメリットといえます。

(※)高い利益率が見込める内に株式を売却し、利益を確定させること。

プライベートエクイティ投資を受けるデメリット

プライベートエクイティ投資にはメリットがある一方で、注意しなければならない点もあります。

経営の自由度が下がる

PE投資を受けると経営の自由度が下がる恐れがある点に注意が必要です。その理由として、PE投資ではPEファンドが株主となるほか、株式の大半が所有されてしまうケースが多いことが挙げられます。実質的に経営の舵取りをPEファンドに握られてしまうことになり、意思決定などが自由にできなくなる恐れがあるでしょう。

そのため、経営者が自分の意思をもとに事業経営をしたいと考えている場合、PEファンドの利用は避けた方が無難といえます。

いつかはイグジットしなければならない

PE投資を受けた場合、いずれはイグジットしなければならないときがやってきます。PEファンドはIPOやM&Aによる資金回収を目的としており、目的を果たした際は経営から離れることになるでしょう。そのため、日頃からPEファンド任せの経営にならないように気をつける必要があります。

プライベートエクイティ投資の理解を深め、判断しよう

今回の記事ではプライベートエクイティ投資を受けるメリットおよびデメリットについて、解説しました。PE投資を活用することで豊富な資金提供を受けられるほか、経営に関して手厚いサポートを受けられます。ただし、経営の自由度が下がる恐れがあることに加え、いつかはイグジットしなければならない点に注意しなければならないでしょう。

今回の記事を参考にPE投資の理解を深め、利用すべきかどうかしっかり検討した上で判断を下すことをおすすめします。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。